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帝国の終章は異世界で  作者: リュウジン
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第四話 1に準備、2に神様

今回は少々長めです

第四話 1に準備、2に神様


もしあなたがリアルティーを追求した昭和期の大日本帝国の国家運営を行う歴史シュミレーションゲームをするとしよう、あなたはせっかくゲームなのだから史実とは違う国家の運命を決める選択してみたとする。


例えばもしアメリカとの戦争を回避するために中国の利権を放棄したり、海軍を強くするために陸軍の予算を全カットするなんてとんでも選択もあなたがプレイヤーの選択なのだから、なんの支障もなくその選択は実行されるだろう。


しかし史実以外の選択したら「陸軍のクーデターが起きてあなたは捕まりました」とか「陸軍の将校に暗殺されました」「民衆の暴動が発生しあなたは罷免されました」でゲームオーバーばかりになったらどうなるか。


そんなことしたらプレイヤーの選択肢の自由度は減り恐らく楽しくないだろう、しかし史実では例え“正式な命令”だとしてもそれが気に入らなかったら暴力に訴えたり、無視したり、天皇を盾にしたりする集団が残念ながら昭和期の大日本帝国にいた。


その集団の名前を大日本帝国陸軍と言う。



1944年7月某日の夜、都内にある某料理亭である密会が行われていた。


「中佐、例の物は?」


料理亭の個室には2人の陸軍軍人が座り、肩章はそれぞれ大佐、中佐の階級を示していた。


「はい、これが偽造の命令書です」


中佐は、傍らに置いてあった封筒を持つと封を開けて中から紙束を出すと大佐に差し出す。


紙束を受け取った大佐は精巧に偽造された皇居と総理官邸の占拠を指示する命令書を確認し満足げに頷く。


「うむ、これで神州を汚す売国奴共に天誅を下せる」


「はい、米帝に先人達の犠牲によって獲得した国土を売り渡す腰抜けの鈴木貫太郎に騙された陛下をお救いしましょう」


6月末に新たに組閣された鈴木貫太郎内閣は、すぐさま終戦工作を開始、同じく6月に起きた謎の交通網の大規模破壊により疲弊したアメリカとの交渉仲介をソ連に要請する。


史実では1945年2月に行われたヤルタ会談で対日参戦を密約していたソ連はこれを無視したが、事実より半年以上が早かったこの要請をソ連の指導者スターリンは了承の旨を日本に送った。


実は1943年11月のカイロ会談で連合国は日本の無条件降伏を目指すと対日方針はすでに決まっていため、よほどの事が起こらない限りソ連はこの方針に従い日本の要請を断っていたが、しかし6月によほどの事がアメリカに起こってしまっていた。


アメリカで起きた後に同時多発地盤隆起災害と名付けられた災害は、連合国の指導者達が危惧した通りにアメリカ国内で強い厭戦感情が蔓延してしまい、戦争継続の世論は崩壊した。


しかもアメリカの軍需産業にも深刻なダメージが与えられたため連合国に行っていた膨大な武器弾薬を援助するのが世論的だけではなく難しくなりアメリカ側からいくつかの援助の打ち切りないし延期が宣言される。


援助に大きく頼っていたイギリスとフランスは大いに慌てた。


多大な犠牲を払いつつようやくノルマンディー上陸戦を成功させ、まだまだ強力な戦車と航空機を温存させているドイツ軍に物量戦で押していけるのはひとえにアメリカ軍と援助のお陰であり、イギリスとフランスだけで戦線を維持できるとは大戦初期にドイツ軍にボコボコにされたトラウマがある英仏上層部にはとても思えなかっためである。


ソ連もアメリカからそれなりの援助を受けており止められば困ると言えば困るが英仏ほど頼ってはいなかったため援助なしでも十分に戦える自信はスターリンにはあったが、西側戦線が弱体化しすぎてドイツ軍がソ連に戦力を集中させてくれば面倒なことになると考えたスターリンは日本から来た仲介要請を受けることによって日本に恩を売りつつ報酬をもらい対日参戦用の兵力を対ドイツ戦に転用して、アメリカにも日本と停戦させて余裕を生ませようと計画した。


密かにこの案を連絡された英仏もすぐに了承、遠くの敵より目の前の強敵を優先させた。


ソ連を仲介した、日米の講和交渉は紛糾した場面が有ったものの全体的には日本が譲歩する形で講和の条件は纏めてられていく。


1. 中国大陸からの即時撤兵ただし日本も疲弊しているので、撤兵に関する各種支援をアメリカは行う

2. 朝鮮半島の独立を認める

3. 台湾における主権を放棄し、アメリカによる暫定統治を認める

4. 樺太をソ連に譲渡する

5. 日本は戦後処理が完了するまでのアメリカ軍進駐のために基地を提供する

6. お互いに賠償金請求は放棄する

7. 自国兵の戦犯は自国にて裁く


開国後に日本が手に入れてきた権益をほとんど放棄する、この講話案に陸海軍両方からの批判が殺到したが陸軍は鈴木貫太郎内閣の阿南陸軍大臣が「不服な者は、まずこの阿南を斬れ」と一喝したため表向きは沈静化に向かった。


日米間での講和案がまとまったため後は8月に講和締結をするだけで終わり・・・

で済むわけもなく、ひっそりと戦争継続を望む陸軍内勢力はクーデターの計画を進めていた訳である。


「しかし、他の者たちは遅いな・・・」


「そうですね約束の時間を20分過ぎています」


大佐は料亭の壁掛け時計を確認しながら他のクーデター首謀者達が来るのを待っていた。


「少し外に確認してきます」


そう言うと中佐は立ち上がり部屋の廊下へと出ていったが、今度は10分たっても中佐が帰ってこないのを不審に思った大佐は立ち上がり中佐を探しに行こうと襖を開けたら、目の前に銃剣が着剣済みの小銃を無言で構えた憲兵隊がズラリと並んでいた。


「なっなんだ貴様ら!!」


憲兵隊は大佐の叫びには一切無視し大佐を取り押さえる。


「なにをする貴様ら俺が誰かわかっているのか!馬鹿な、これが俺の最後と言うか!認めんぞ、認められるか、こんなこ」


大佐のうるさい喚きを猿轡をかませ黙らすと憲兵隊は粛々と証拠品の偽命令書を回収し外で捕まえていた他のクーデター首謀者達を連行していく。


あまりにあっけなく終戦時に計画されていた最大規模のクーデターは事前に阻止され、この後も他のクーデターを計画していた者は何故か会合場所を知っていた憲兵隊によって次々と摘発されていき陸軍内部の戦争継続派は壊滅した。


しかし会合場所の情報源は後の世まで謎とされており、内閣から指示を受けていた当時の憲兵司令官は後の取材で情報源については「神様からのお告げがあったらしい」としか語っておらず、歴史家たちは大いに悩まされることになる。


しかしどこかの世界で。


「ねっ、全部合ってたでしょスズキ」


「本当に君の未来予知は当たるのだな、疑ってしまってすまない」


「時の神としてこの程度は当然です(ドヤァ・・・)」


内閣総理と自称神様の会話があったのは、どの歴史家たちも知らない。


このあと講和の邪魔者がいなくなった大日本帝国は、8月15日に米国との講和を結び長くも辛かった戦争は事実上の日本の敗戦という結果で終わりを告げたが多くの国民、政治家は終戦にショックを受けつつも時間とともに受け入れ始めていた。


だが平和が次の戦争への準備期間に過ぎないように、未来を知っている者たちは一年後に訪れる大日本帝国建国以来で最大の国難への備えを密かに始めた。



終戦時には数万規模の兵員撤収作業で地獄のような忙しさに包まれていた陸軍省庁舎も4ヶ月がたった12月にもなると一段落をつけたのか元の静けさを取り戻しつつあった。


昨夜に陸軍省からの招集紙を受けていた有沢(ありさわ) 雅澄(まさずみ)中尉は、指定の時間になるまで閑散としたロビーで時間を潰していたがよく見知った戦友が歩いてきたのに気づき話しかける。


「後藤曹長」


後藤と呼ばれた30代後半に見えるやや濃い顔をした男は有沢に近づくとお互いに敬礼をする


「中隊長殿、四ヶ月ぶりですね」


「曹長、中隊はもう四ヶ月前に解散したぞ、そっちも招集を?」


「はい、となると中尉とまた同じ隊ですかね」


そう言うと後藤はポケットから召集状を取り出す、紙には有沢が貰ったのと同じく故郷に帰っている現役帰休兵招集の旨が書いてある。


「もしかしたら予備役行きかもな」


今まで中国大陸の領土に合わせた兵力を調達していたために現在、本州にいる常備兵の数は膨大となっており人件費削減も兼ねてかなりの人数が予備役に回されていた。


「勘弁してください私には養う妻子がいるんですよ」


「冗談だ、二人同時に呼んでいるんだから多分それはないと思うが詳しい事は俺も聞いていない」


本来なら招集理由を前もって通告されるものだが今回は軍事機密という事で二人には知らされていない。


「中尉もですか?どちらにしろきな臭いですな」


そうだなと相槌を打ちながら有沢はロビーの鳩時計を確認するとそろそろ指定の時間に近づいていた。


「とにかく詳しい話は大隊長殿が話してくれる、そろそろ時間だから行こう」


「そういえば少佐が人事局に飛ばされたのは・・・」


二人は4ヶ月で積もった話をしながら階段を上り陸軍省の二人を呼び出した人事局へと向かう。


こちらも今が昼時を過ぎたあたりのせいか人通りは少ない。


「娘さんは元気に?」


「もちろんですよ妻によく似て、もう天使です、あっ写真見ますか?」


「後でみるからここで写真を出さんでもいい」


「そうですか、そちらもご両親は?」


「一応な・・・」


「どうしたんです?」


有沢は微妙に後藤からの目線を逸らしながら答える。


「お袋が俺が帰ってきたら結婚させようとしたらしく、家に帰ったら部屋に見合い写真の山があった」


「・・・まあその中尉はもう24歳ですから、そろそろ身を固めないと」


「ちょっと前まで二度と内地の土を踏むことがないと覚悟して中国で戦っていたのに、帰ったらほぼ毎日早く初孫の顔を見せて欲しいな(チラッ)と言われる俺の立場にもなってくれ」


「確かにお互い中国の土になるつもりでしたね、まさかあんな終わり方をするとは」


そんな他愛もない話を進める内に目的の部屋の前まで到着すると自然に二人は口を閉じて顔つきは引き締まり身なりを整えた。


有沢は静かに息を吐くと元上官がいる部屋をノックする。


「有沢雅澄中尉、後藤信幸曹長、以上二名招集により出頭いたしました」


「入ってくれ」


「失礼します」


部屋の中から入室の許可が下ると二人はドアを開けて部屋に入る。


6畳ほどの部屋で机を資料に囲まれていた二階堂 武少佐は二人が部屋に入ってくると持っていた資料を端に寄せると二人の敬礼を返す。


「また会えて嬉しいよ有沢中隊長、まあ座ってくれ」


二階堂は笑みを浮かべながら二人に着席を勧めてまた席についた。


「もう私はただの中尉ですよ二階堂大隊長殿、私もまたお会い出来て光栄です」


「そうだったな中尉、私も今はただの事務員だったな、この三人が集まるとどうしても大隊の事を思い出してしまう」


この部屋に集まった3人は支那(中国)派遣軍の1つである第23軍所属の第104師団に編成された歩兵大隊に所属しており二階堂は大隊長、有沢は中隊長、後藤は有沢の補佐を担当していた。


終戦後は第104師団はなくなり有沢と後藤は帰郷して、二階堂は人事局に左遷された。


「曹長も久しぶりだな子供は元気にしてるかね」


「もちろんですとも少佐、写真を・・・いえなんでもありません」


後藤は胸ポケットから写真を取り出そうとしたが横から強い視線を感じたので、ポケットに写真を入れ直す


「相変わらずだな君たちは、お互い積もった話があるが先に本題を済ませてしまおう」


「私達の招集理由ですか?」


「そうだ、事の始まりは1ヶ月前ぐらいに上から若くて将来が有望な士官を一人選出せよと命令が下ってな、それで私はてっきり終戦時のゴタゴタでごっそり空いた将校の補充かと思って中尉を推したんだが」


終戦時のゴタゴタとはクーデターのことで、天皇陛下の怒りもあったせいかクーデターの関係者は関与の大小問わず処罰されたため将校の数は大きく減っていた。


「私ですか、お言葉ですが私には中隊長以上の責務をこなす・・・」


「謙遜するな中尉、地元民の協力を交渉で取り付けて孤立した中隊で大隊規模の敵を撃退してみせた君の手腕がなければ我々は今頃中国に埋まっていた」


「…ありがとうございます」


「それでしばらくたったら君達がその・・・特殊任務部隊に配属する事になってな」


「特殊任務部隊ですか?」


若干嫌な予感がしてきながら有沢は首を傾げて聞きなおす。


「そうだ特殊任務部隊だ、まあアレを見せた方がわかり易いか」


そう言うと二階堂は机の中から二冊の国語辞書並の厚さを持った本を取り出し二人に手渡した。


かなり凝った赤い表紙の本の題名には「神様と楽しく学べちゃうロシャナ語テキスト 軍事版」と書かれていた。


「なんですかこれ・・・」


有沢は先程まであった真面目な雰囲気を壊すにもほどがある本に上官の前で思わず呆れてしまう。


二階堂は自分が渡されて時と全く同じ反応をした部下に苦笑しつつ説明を進める。


「ロシャナ語というのは架空の言語らしくてな、それで全く知らない言語を指揮ができるほど堪能するのにどれほど期間が掛かるか将校と下士官を集めて測定するのが特殊任務部隊の任務だそうだ」


「……」


「……」


有沢と後藤は説明を聞いたあと困惑した顔で見合ったがどちらも意味がわからないと顔に書いてあったので少佐に視線を戻しても少佐の困惑した顔があるだけだった。


「君達の困惑はよくわかる、私も説明をしていながらさっぱり意味がわからん」


「少佐つまりこのロシャナ語なる架空言語を勉強せよということですか」


「そうなるな中尉」


「あの何故に架空の?」


「わからん、聞いても答えてくれなかった」


「・・・文部省ではなく何故わざわざ陸軍が?」


「それも不明だ」


「・・・・・・どこからの発令ですか?」


「機密事項だそうだ」


後藤は恐る恐るといった感じで質問を出す。


「もしかしてこの部隊は予算確保だけための物ですか?」


別の名目で予算を確保しておいて別のことに流用するのは古今東西でよくある話である。


しかし二階堂は首を横に振った。


「それはない曹長、いくらなんでも名目が酷すぎる上に少なくとも人事局は不満を感じている」


二階堂の記憶にはこの招集命令を出した時の上層部の不満げな様子がありありと残っており、普通は予算の流用を行うなら不満を覚えた誰かが“うっかり”と話してしまわないようにきちんと根回しをしているはずである。


それに建前は普通であるからこそ周囲の目から中身を隠すことができるのに外見が目立ったら逆に衆目を集めてしまう。


「となると人を集めること自体が目的ということ…いや違いますね」


この命令自体が建前ではなく任務の内容が囮で人員を集めて他のことやるのではと考えた有沢だったが思考の途中でそれも間違いだと気づいた。


「そうだな私も君を推薦に出した後のことだったから最初はそう思ったんだが」


二階堂は二人が持つ架空の言語教科書を指差す。


「わざわざそんな物を用意する意味がない、後で読んでみるとわかるが適当に作られた言語ではない」


教科書を持った二人は指に釣られて視線を本に戻す。


そう問題は架空の言語を用意して使う理由が全くないことだった。


どう考えてもこんな命令が本当に軍の上層部がやるとは思えないから何か裏の目的があるはずのに、この架空言語の教科書の存在があまりに異質すぎてここにいる3人は真意を見極められずにいた。


少なくともわかっているのは不満ありげな人事局を首根っこ抑えてやらせるほどの権限を持った所がこの命令を出したことだけだった。


「しかしこの著者のアマナグルって誰なんでしょうね中尉」


著者の名前はタイトルの下に目立つように大きく書いてあった。


「わからん聞いたこともない」


有沢は表紙をめくってみて前書きになにか著者について書いてないか読んでみると。


『頑張ってね』


とだけページの真ん中に書いてあった。


「少なくとも友達はいなさそうだな」


有沢はこの本を床に投げ捨てたくなる衝動に駆られたが、なんとか自制する。


「しかし30過ぎてからで新しいことを勉強するのは辛いですな」


「今後の人生に全く役に立たないことを覚えさせられるのは若くても辛いぞ曹長」


(この教科書を捨てないように我慢するのが一番の苦行だがな)


最初はこれで母親からのお見合い地獄から抜け出せると密かに喜んでいた有沢も今となっては全く笑えない心境になっていた。


有沢と後藤はこの後に他にも集められた将校と下士官と共に半年間以上この架空言語の勉強を続けさせられていき、部隊が早く終わらせたい気持ちを一つになんとかお互いを励ましあいながら、なんとか日常会話程度をしゃべれるようになった時には部隊全員でこれで開放されると涙を流して喜んだが、この架空だったはずの言語による災厄はまだ終わりではない。



そこから更に時は流れて太平洋戦争が終戦してからあと1時間で1年になろうしていた時。


現総理である鈴木貫太郎はアマナグルの世界で自分が総理に任命されてから始まった激動の人生を一人で感慨に浸っていた。


他の閣僚達はすでに元の世界に帰っており邪魔をする人間は誰もいない、そう人間は。


「あと一時間だけどスズキは帰らないの?」


この一年で随分と聞きなれた男とも女とも聞こえる声に鈴木は顔を上げる。


この世界の創造者であるアマナグルは何時ものようにフラフラと落ち着き無く揺れていた。


「最後に少し君と話したくてね、迷惑だったかな」


「いや別にもうこっちの準備は終わっているから大丈夫だよ」


「なら良かった…」


鈴木は相槌を打つと少し言葉を詰まらせた。


最初はアマナグルに祖国をあと少しの時間で丸ごと転移されるから恨み言の一つや二つを言ってやろうかと思ったが、アマナグルには恨み以外にも祖国の敗戦を救ってくれた恩義もまた感じており、鈴木も自身の複雑な感情を持て余していた。


だから鈴木はアマナグルに最後どうしても聞いておきたいことだけ聞くことにする。


「君に召喚を頼んだのはいったい何者なんだ?」


この質問にアマナグルは困ったように笑う。


「うーんゴメンネ、その質問には答えられない、黒幕は最後の最後で判明しないと楽しくないでしょ」


「そうか…こんなことに巻き込んだ犯人に一発入れてやりたかったが残念だ」


半分冗談混じりで返しつつ別に鈴木はこういう性格だとはよく解っていたので今更アマナグルに怒りはしない。


ただ召喚された後も名も知らない黒幕に祖国が利用されるのではないかと思うと心配にはなった。


そんな鈴木の心境をアマナグルが知ってか知らずか。


「その代わりになるけど一つだけいいことを教えてあげる」


「いいこと?」


「うん、向こうに行ったら東の大きな島を探すんだ」


「島?」


「そう、そこで君達は重要な決断を迫られることになるけど、うまくいけば良いものが二つ手に入るよ」


「もう少し詳しくはならないのか」


流石に東だけでは見つけられないと鈴木は首をふる。


「地図とか書けないから諦めて、大丈夫君たちは“必ず”見つけるよ」


「何故教えてくれたんだ?」


鈴木は今まで飛ばされる世界の情報を言語以外は何一つ教えようとしなかったアマナグルがなぜ今になってそんなことを教えるのか聞く。


「その方が依頼人の計画より面白くなりそうだから」


「君らしい答えだな…わかった探してみよう」


アマナグルが面白さを最優先に動くのは知っているので、迂闊に従うととんでもないことになる危険性があるのは鈴木も百も承知だが黒幕の手のひらから出られるということなら探す価値はある。


どちらにせよ飛ばされた後に永遠と江戸時代のように引きこもるつもりはないので、あてもなく動くよりかはマシと言えるだろう。


「じゃあ聞きたいことは他にはない?」


「君に言いたいことは沢山あるが私も老人だからね夜更しはそろそろやめておこう」


「そう…じゃあ向こうに帰すね」


少し寂びさを感じる声を出しながらアマナグルは鈴木の魂を元いる場所に帰す。


しかしこのまま湿っぽい終わりになるのが気に入らないアマナグルはいいことを思いついた。


(…!?)


スズキは徐々に薄れゆく意識の中、今まで光球の姿だったアマナグルが神々しく輝く美しい少女の姿になったので声にならないほど驚いた。


アマナグルは驚く鈴木に微笑みを返しながら恭しく礼をすると今までの魔法で変えていた声ではなく本来である少女の声で最後の別れを鈴木に告げる。


「さようなら、そして私の故郷『後日談の世界』へようこそ」


これが鈴木が最初で最後に聞いたアマナグル本来の声となった。



1945年8月15日朝、進駐のためハワイから日本の軍港に停泊するつもりだったアメリカ空母艦隊が最初にこの世界から日本列島がなくなっていることに気づき、すぐに艦隊司令部にこの事を連絡したがもちろん最初は誰もが何かの冗談だとわらって本気にしなかった。


しかし何度も偵察機や艦で探しても一向に見つからずいよいよルーズベルトの後任であるトルーマン大統領の耳にも入るほどの騒ぎになる。


2日後にトルーマンの指示で高高度からの航空機によって撮られた写真が世界に激震をもたらす。


その写真には中国大陸のとなりに日本が写っていなければならないはずの場所にはただ青い海が広がっていただけだった。


この写真を見た瞬間トルーマンがその場で卒倒したのは後生に当時はどれほどの衝撃的な事件をだったかを伝えていた。


結局この世界で大日本帝国は1945年8月15日になぜか突如滅亡した、それがこの世界での大日本帝国の終章となる。


では『後日談の世界』で語られる大日本帝国の終章の話を始めよう。

ようやく、ようやく今作の主人公(一応)を登場させれました。



感想等も随時募集しています。

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