最強守護神の黒猫、「また我、何かやってしまったか?」を覚えてしまう
王都西区画。
煙。
悲鳴。
崩れる城壁。
「ダメだ!!」
「上級魔獣だ!!」
「騎士団が押し負けてる!!」
現場は地獄だった。
巨大な四足魔獣。
鋼鉄みたいな外皮を持つ災害級。
騎士たちの剣は弾かれ、
魔法も通らない。
「くそっ……!」
騎士団長が膝をつく。
「ここまでか……!」
その時。
てちてちてち。
場違いな足音が聞こえた。
全員が振り返る。
黒猫だった。
「……猫?」
『騒がしい』
「守護神様だぁぁぁ!!」
兵士たちが泣きそうな顔になる。
ふくは欠伸をした。
『昼寝しておったのだが』
「すみません!! 国が滅びそうで!!」
『仕方ない』
ふくは前へ出る。
バルグレイヴが咆哮した。
空気が震える。
普通の人間なら気絶する威圧。
だが。
ふくは。
すっ……と片足を上げた。
「来るぞ!!」
「守護神様の一撃だ!!」
次の瞬間。
ぺし。
猫パンチ。
それだけ。
それだけで。
轟音と共に、
巨大魔獣が地平線の彼方まで吹き飛んだ。
山が消えた。
雲も割れた。
被害規模がおかしい。
静寂。
兵士たちは口を開けたまま固まる。
「す、すげぇ……」
「これが守護神様……」
「圧倒的すぎる……」
その空気の中。
ふくは、
ゆっくり振り返った。
そして。
『……また我、何かやってしまったか?』
沈黙。
ユキトが頭を抱えた。
「あーーーーー!!!」
『ぬっ!?』
「覚えたな!? 変なの覚えたな!?」
『最近読んだ』
「読むな!!!」
兵士たちがざわつく。
「な、何ですその台詞……?」
「妙に腹立つな……?」
ふくは真顔だった。
『強者の余裕というやつだ』
「絶対違う」
『人気らしい』
「五年前だよ!!」
『またか!?』
ふくがショックを受ける。
『流行は巡ると聞いた』
「巡ってねぇ!」
その時。
遠くの山が崩れた。
さっき吹き飛ばしたバルグレイヴが、
まだ転がっていたらしい。
「被害デカすぎるだろ!!」
『加減した』
「どこが!?」
ふくは不満そうに尻尾を揺らす。
『難しいの』
「最強すぎるんだよお前は!」
すると若い兵士が、
そっと手を挙げた。
「あの……」
「ん?」
「“また我、何かやってしまったか?”、嫌いじゃないです」
『ほう』
ふくの耳がぴくっと動く。
「お前ら甘やかすな!!」
『やはり人気か』
「チョロいなぁ!?」
世界最強の守護神は、
ちょっと得意げだった。




