貧乏ケチオタクくん
「1ヶ月前だってのに、まだ詳細出ないよー」
「好きだって言ってたやつ?クジになるんだ。よかったじゃん」
向けられた画面をスクロールしようとするが、できない。
「これスクショ。容量使えるわけないじゃん。昨日、外でもみようと思って撮ったんだ」
先日、講義で隣の席になったオタクくん。
上京し、自分で学費を払う真面目な子だが、とってもケチだ。
「ほら、他の画面も撮ってあるよ」
「あ、すごーい」
「今回は上位賞にフィギュアが3体もあるんだよ。でもまだ詳細が出ないんだよね。きっと出来が良くないんだと思う。早く画像でないかなー」
「出来が良くなくても楽しみなんだ」
「そりゃそうだよ。発売日はもう決まってるからね、スケジュール帳にも書いてんの」
くじ発売前日
「やばいよ。いよいよ明日だよ。大学の近くに入荷してる店舗があるから、1限前に行く」
「1限前はやる気すごいな。そこ昼飯買うとこだわ。時間あったら行く」
くじ発売当日
景品棚の前に立つオタクくんが声をかける。
「ねみー。フィギュアまだ残ってるじゃん。買わないの?」
「買うわけないじゃん。お金ないもん。それに出来はあんまり良くないからね」
「あんなに楽しみにしてたのに!?何回もくじの話聞かされたけど」
「くじなんて、金持ちの遊びだよ。それに立体が欲しいなら、スケールフィギュアを買った方がいいと思うよ。俺は買わないけど」
いろんな商品を眺めて満足した後、オタクくんは店を出て行った。
【画像のフィギュア棚】
「見てこれ、ついに完成した俺のフィギュア棚」
ガラスケースの画像を背景に、フィギュア(画像)がたくさん並んでいる。
「あれ?予約中の混ざってる?」
「当たり前じゃん。俺の理想のフィギュア棚なんだから、そんなの関係ないよ」
ドヤ顔で、比率もそのままだし、配置にもこだわったんだから、と続けられる。
「将来これ買いたい、みたいな?」
「違う。これが俺のフィギュア棚。場所を取らないし、良いよ」
始めは将来欲しいフィギュアを並べて遊んでいたそうだが、そのうち画面内のフィギュア棚で満足したらしい。
「今、追加候補で有力なのはこれ」
「画面内なのに絞ってんの?」
「これ俺のフィギュア棚だから。そりゃ厳選するでしょ。ちなみにこれが美少女verで、プラモverも作ってて」
このフィギュアのどこが好きか、好きな造形師や今後フィギュア化が発表されてて期待しているフィギュアなどを詳しく説明してくれた。
「俺くらいになると、グッズもスクショで持ってる気になれるからね。場所も取らないし、最高だよ」
買えない現実に適応するため強がってるのか、本気で持ってると思ってるのかわからなくて怖かった。
【単行本の特典】
「昨日、好きな漫画の単行本が出たんだー」
「あ、それこの前リンク送ってきたやつ?アプリで読めるけど、単行本も買うんだ?」
「当たり前でしょ。昨日予約したの受け取ってきたよ」
「普通にお金を使うこともあるんだね」
「ほんとに好きなものには使う」
普段全くお金を使わない姿を見ているだけに、本当に好きなんだなと微笑ましい。
「見てこれ、特典も良すぎる」
「あ、買ったの?」
「いや。フォローしてる人が買ったって画像あげてたから、保存したの」
「え?」
「この人、毎回特典全部買って高画質で上げてくれるから神なんだ」
「特典も、画像で持ってる感じ?」
「流石に好きなのは買うよ。でも今回数が多くてさ。本命は買ったんだけど、アクスタは画質が悪いし、画像も使い回しだったから」
いやーでもやっぱ立体になるといいなーと、スクショを拡大し、隅々まで眺めている。
「今度から、買ったって報告する時文字だけにしようかな」
「うわ。ケチかよ」
「君には言われたくないね」




