薬酒師ライラ、婚約は酒瓶に封じました

王都で工房を構える、類稀なる才を持つ平民の薬酒師ライラ・ヴァルトラウテ。彼女のもとに、王家から王太子レオナールとの婚約話が持ちかけられる。それは、ライラの薬酒師としての技術、特に研究中の『不老酒』を王家に提供することと引き換えに、王太子妃の座と研究への全面的な援助を約束するという、完全なビジネス契約だった。

研究資金を欲していたライラはこの取引を受け入れ、契約の最終確認のため王宮へとおもむく。しかし、彼女を待っていたのは、王太子レオナールからのあまりに一方的な婚約破棄の言葉だった。王子はライラの平民という出自を理由に婚約を反故にしながらも、見返りである『不老酒』の製法は契約通り献上するよう、傲慢に命じる。

その理不尽な要求に対し、ライラは怒りを抑え、冷静に「契約不履行をされたあなたに対価を渡すことはできない」と突き返し、毅然とした態度でその場を去る。王宮を後にした彼女は、この裏切りを糧に、誰のためでもない自分自身の力として『不老酒』の研究を本格的に進めることを、強く心に誓うのだった。