2015年7月2日
勢いだけで人生で初めて書きました。誤字脱字、汚くて読みにくい文章、色々あると思うので今後のためにご指摘いただけると嬉しいです。
頭の中にある色々な構想を実力をつけて形にしていきたいと思っています。
有識者の方々よろしくお願いします。
まずは21歳の彼女を探そうと思う。
梅雨が明けて本格的な暑さに日々溶かされそうになる時期を楽しみに思うことなんて到底できなかったけど、それでも今年だけは夏を待ち侘びる理由がある。
結婚5年目、26歳で大学の同級生と結婚したものの旦那の度重なる浮気に嫌気が刺し離婚を考えていた何処か影のある彼女に僕は惹かれた。出会いは運命なんて大層なものではなく今時よくあるSNSからの繋がりなのだが、連絡を重ね九州である友人の結婚式のついでに会いに来てくれた31歳のまりは大学生の僕にとってはあまりにも大人で魅力的だった。
ディズニーランドに行ったことのない生まれも育ちも九州の僕に
「次回会う時はディズニーランドを案内してあげる」
なんてことを言いながら飛行機に乗って行ったまりの背中を見送ってもう1年。授業の間に必死にバイトをしてお金は貯めたものの九州から東京への飛行機代は大学生お財布には優しくなくお尻の痛みに悩ませられながらも渋々夜行バスに乗っていた。遠足の前の日に眠れなくなるなんてことがよくある人間なのだが、さすがに片道14時間の旅路は長くこれからの楽しいであろう数日間のこのなんかを考えながら気づいたら眠りについえいた。
到着間際の車内アナウンスで目を覚まし慌ててコンタクトレンズをつけて下車する準備をしていたのだがどうもスマホの電波が良くない。まりに連絡ができないのは非常に困るのだが、事前に到着時間は伝えてあるしバス停まで迎えに来てくれるとのことだったので一時的なものだろうと深くは考えず昨晩買って炭酸も抜け緩くなったファンタを飲み干し到着を待っていた。
人生初の東京、そして1年ぶりに合うまりに緊張しながらバスを降りたが近くに彼女の姿は見当たらない。連絡も取れないこの状況、こんな時はうろうろせず大人しく予定通りの場所で待機するのがすれ違いも起きず早く会えるだろうと考えた僕は写真フォルダなんかを眺めてまりを待った。
15分...30分...そして1時間
一向に来る気配のない彼女に不安を感じながらもどうすることもできず、通信エラーでプレイできないゲームを繰り返し開く僕は側から見れば滑稽だっただろう。
正午を過ぎても電波は戻らず充電だけが減っていく焦りがありながらも21歳の食べ盛りだお腹は減る。ナビも使えない中でも東京探索にどこかワクワクしながらとりあえずは空腹を満たそうと思い道沿いの定食屋に入った。東京にも今時こんな昭和の生き残りのような定食屋があることに安心感を感じつつ券売機でカツ丼を購入しようとするのだが何度やっても千円札を読み込まない。こっちに来る前にATMで下ろしてきた新札なのだから機械側の不具合かななんて事を考えていると見兼ねた店主であろう男性が声を掛けてきた。
「最近また調子が悪いんですよね、良ければこちらで現金で精算しますよ」
感謝を伝え手に持っていた千円札を店主に渡すとそれまで感じの良かった雰囲気が一変した。
「お兄さんこれはどういったいたずらですか?」
言われてる意味の理解できない僕に店主は先ほど手渡した千円札を広げて見せてくる。
「偽札?にしては出来がいい気もするがなんにしてもこんなものが使えるわけないでしょう」
そうは言われても意味がわからない。
千円札が北里柴三郎に変わってからもう少し経つし最近では新札使えない自販機なんかも減ってきた。知らない土地で理不尽に怒られ今回は提供前だったからと警察は呼ばれずに済んだが散々な気持ちで店を出た。
今時ガラケーを使っているような時代遅れなのだから新札の存在も知らなかったのだろうと自分の中で無茶苦茶な理由をつけバス停に向かう。ここでやっとバスを降りてから感じていた違和感に気づいた。
「ちょっと待て、東京はガラケー使っている人間が多すぎやしないか」
普段街を歩いていてもガラケーなんて見ることはほとんどないしなんなら自分自身触ったこともないようなものが2025年の今こんなに普及しているなんてことがあるのだろうか。うちの75歳になるじいちゃんですら妹に教えて貰いながらスマホデビューを果たしたというのに。
時間潰しで無駄に充電を使ってしまい今にも電源が落ちてしまいそうな自分のスマホを確認してみる。ロック画面に表示される日付を見て僕は目を疑った。
「2015年7月2日」
バスを降りてから今までのことを振り返ってみる。スマホの電波が悪いこと、周りのガラケー普及率が以上に高いこと、新札が使用できなかったこと。納得のできなかったことが1つ1つ最悪な想像と共に理解できてしまう。
「まじかよ...」
ここ数年で1番情けない声だった。誰も知り合いのいない東京に無一文で放り出された現状を1番理解しないといけないのは僕だが、1番理解したくないのも僕だった。
彼女は2025年のこの場所で待ってくれているのだろうか。人のことを心配している余裕なんて全くないのだがそれでも気になってしまう。今のまりは僕と同い年、大学や当時通っていた店の話しはよく聞いていた。
頼れる人もいないこの状況で今僕ができることなんて1つしかない。この時代の彼女はまだ僕のことを知らないがそれでも不安とは別に自分と同い年の彼女に会ってみたいとも思った。
「まずは21歳の彼女を探そうと思う。」
タイムパラドックスとかバタフライ効果とか今の僕が考えて分かることは何もないのだからまずは行動してみよう。今の僕にできるのはそれだけだから。