第4章 「白骨遺体の秘密」
遺体の科学的鑑定結果がついに探偵事務所に届いた。
神代慎は慎重に封筒を開け、中の報告書に目を落とす。
DNA分析の結果は驚くべきものだった。
遺体のDNAは、四宮 奈緒のものとは異なり、むしろ浅倉 明日香のものに極めて近いことが判明したのだ。
骨格の特徴や歯の状態も、報告書に記された浅倉 明日香の記録と一致していた。
「つまり……遺体は四宮 奈緒じゃない……?」
橘が椅子に深く座り込み、キザな笑みを浮かべる。
「死体すり替えトリック……遺体の身元を偽装するための計画的な工作ですね」
神代は眉をひそめた。
服装や所持品も巧妙にすり替えられていた。廃ビルで見つかった遺留品は、浅倉 明日香のものではなく四宮 奈緒のものが混ざっていたのだ。
「犯人は四宮 奈緒の死に偽装させたかった。何のために……?」
澪はぽややんと訊ねる。
「でも、なんで浅倉さんの遺体を使ったんだろう? 二人は親友だったんでしょ?」
神代は少し考え込む。
「親しい者同士だからこそ、身元の偽装に利用された可能性もある。あるいは、真犯人の誰かにとって浅倉 明日香は単なる駒に過ぎなかったのかもしれない」
橘はさらに分析を続ける。
「このトリックの意味は単なる身元偽装じゃない。遺体の交換で、捜査を撹乱し、真相から目を逸らそうとしているんだと思いますよ。」
そのキザな態度の裏には、鋭い洞察が隠れていた。
神代は鋭く言葉を切った。
「この事件、ただの殺人じゃない。誰かが必死で真実を隠そうとしている。だからこそ、俺たちはもっと深く掘り下げなければならない」
探偵事務所の空気が一気に引き締まった。
静寂の中で、三人は次の一手を模索する。