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S4−8


              *




コンサート当日。


朝から天候が悪く、雨が降ったり止んだりを

繰り返していた。

ゴロゴロと、雷も鳴っている。



休みの時の雨って、なぜか許せる。

でも、雷はイヤだなぁ。



部屋の姿見で、何度も

自分の格好を確認しながら、夏芽は

髪型をどうしようか悩んでいた。



いつもならママに聞くけど······

今日は、自分で決めたい。


コーデも、ママに聞かず自分で決めたし。



······耳、出そうかな······


横だけ、まとめて······


うん。そうしよ。




こんこんこん。



「はーい。」


「なっちゃん、準備できた?」


「あと、もうちょっとで終わるよーっ」


「リビングで待ってるわよ〜」



勉強机に置いてある

デジタル時計を見て、驚いた。



うわ。もう、こんな時間なんだ。


余裕持って、準備始めたつもりだったのに。


これで、大人って

メイクの時間もかかっちゃうんだよね。

ホント、オシャレって大変。



完成した自分自身の姿を

じっと見て、納得するように頷く。



よし。これでいいかな。

あとはもう、どうにでもなれ。



『浴衣、ばり似合っとったよ。

 かわいかった。』



頭の中を何度過ったか知れない

彼の言葉に、ぶわっ、と熱が急上昇した。



うわ。もう。また欲しがって、

もらえなくて怒って、変な壁作りたくない。


今日は。自分で納得して、

自分をアゲるためだもん。

うん。かわいい。



何度も頷き、気合を入れる。



この調子だと、汗、かいちゃうな。

少し涼しくなって、

過ごしやすくはなったけど。

汗拭きシート、持っていっとこ。



この日の為に買った

小さくて可愛めのハンドバッグは、

思いつく物を全部入れた為に

ぎゅうぎゅうになっている。


何とか調整し、もう一度姿見で確認して

意気揚々と部屋を出た。






リビングに行くと、ソファーに座っていた

沙綾が立ち上がって、

満面の笑顔で迎えてくれた。


レース付きのブラウスに、ロングスカート。

どちらも黒なのだが、さり気なく端々で

遊ばせているせいか、堅苦しさがない。



流石、ママ。めっちゃオシャレ。



「あらあらなっちゃん!

 かわいいじゃないの〜!やるわね〜!」


「ママ、めっちゃきれい。

 ······変、じゃない?」


「うふふ、ありがとう!ええ!

 とーーーってもかわいいっ!」


「あっ、もうっ、頭撫でないでよっ」


「ふふっ、ごめんごめん。つい。」



撫でられた拍子に乱れた髪を、夏芽は

手ぐしで一生懸命直しながら、

リビング内を見渡す。



「あれ?パパは?」


「先に車に行って、準備してるわよ。」



そして、ソファーに

ちょこんと座っている大翔と、目が合った。



大翔、スーツだ。カッコかわいい。



彼女は微笑んで、手を差し出す。



「お待たせ、はる。行こっか。」



それを、素直に取って

彼は立ち上がってくれた。




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