S4−1
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「剣道部って、素振りで出るんやろ?」
「おー。おかしくね?文化祭なんやけん、
運動部は何もせんでよかと思わん?」
「技術ってことやないと?
ダンス部とかも、披露するみたいやんね。」
「ダンスは、何となく分かるやんか。
アート的な要素あるけん。
······素振りって。
どー考えても、おかしいって。」
ホームルーム前の時間。
最近、教室内の話題は、
約一ヶ月後に行われる文化祭の事で
持ちきりだった。
「そーかなぁ。かっこいいやん。」
「······かっこいい?」
「うん。ねっ、夏芽?」
上の空だった夏芽は、話を振られて我に返る。
······えっと。
文化祭の話、だったよね。
「······まぁ、うん。そうだね。」
適当に返事をすると、怜央は顔を輝かせて
嬉しそうに笑った。
「そ、そーかぁ?!そーなんか!んじゃ、
ばりばり本気で素振りしちゃるたい!」
「あははっ、うんうん。見守っとくけん。」
微笑む悠乃の目線は、母親のように温かい。
いや、うん。
多分、ホントに、そんな感じだろうな。
「やけどさ、みんなに見られながら
素振りするとか、シュールすぎね?」
「恥ずかしがっちゃダメ。
そういうのって、全力でやるべき。」
「·····お、おぉ。そうやな!」
何か、悠乃の笑顔が温かすぎて。
面白がって言ってるようにも見える。
「重田は?何か、するん?」
「うちは、美術部やけん。想像つくやろ?
描いた絵を、部室に展示する感じやね。
実はそれが夏休みの課題やったんよ。」
夏休み。その単語、今できれば聞きたくない。
「へー。じゃあ、
お前が描いた絵、見れるったいね。」
「······えぇっ?!
見に来んでよかよ?!」
「ぶははっ!何でそんなに慌てると?
見に行くとは、まだ言っとらんばい?」
「見に来んでいいけん!」
「強く念押されると、逆に見に行けって
言っとるみたいやんか。」
「ちがーうっ!」
この二人は、いいなぁ。平和で。
幼なじみ枠。自然体で仲良し。
「あ。小野田は、ピアノ弾いたらいいやん!
体育館に置いてあるやつ、集会とかで
校歌弾くだけしか使っとらんやろ?」
思いもよらない提案で、夏芽は
かなり慌てた。
「いっ、いやいや。個人的に弾くとか
おかしいよ?」
「その手があった!
夏芽のピアノ聴きたーい!
プロなんやけん、いいやーん?」
プロじゃないし。
唱磨くんが、金取るとか言うから。
「そーいえばさ。校歌弾けるヤツ、
先生探しとったみたいなんよね。
それしたらよかやん?」
「それ、ばりいいーっ!」
「······えっ?
三年生の人、いたでしょ?」
「半年後に卒業するやんか。
引き継ぎたいらしいっちゃんね。」
「二年生の人、いないの?」
「それが、おらんらしいったいね。
一年生の小野田が弾けば、
長く弾けるやん?で、俺たちは同時に
長〜く聴ける!」
「採用〜!」
······
そういう問題じゃない、けど。




