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S3−31


「夏芽ーっ!」


「こっちだこっちーっ!」



悠乃と前田くんだ。


やぐらの方から、手を振ってやってくる。



「かわいーやんっ!」


「悠乃こそっ!めっちゃかわいっ!」



オレンジ色の浴衣。明るい笑顔の悠乃に、

めっちゃ似合ってる。めっちゃかわいい。



「こんばんは悠乃ちゃん!

 浴衣似合ってるわ〜!可愛いっ!」


「あっ、夏芽ママさん!えへへ!

 こんばんはです!」


「お初です!前田と申す者っす!」


「武士かお前は。」


「うふふっ。どうも初めまして。

 夏芽がいつもお世話になっています。」


「みんなー!焼きそばできとるよー!」


「待ってました!いただきまーす!」


「あっ、うちんとこのかき氷もよろしく!」


「俺は、かき氷が食いたい。暑すぎ。」


「あぁ待て待て!焼きそばが先やろ?!」




焼きそばの、いいにおいと。


たくさん行き交う人の、熱気と。


笑顔で賑わう、楽友たちと。



楽しい気持ちが、いっぱい。




ぎゅっと、繋いでる大翔の手が強くなった。



目を向けると、お面の方向は

やぐらに向いている気がする。


太鼓、見たいのかな。



「ママ!ちょっと行ってくる!」


「えっ、あっ、はーい!」




唱磨くんは、かき氷を買いに行ったみたいで

姿が見えなかった。



悠乃と前田くんは、ママと一緒に

焼きそば買うのに並んでる。


自分たちを見て、笑顔で手を振ってくれた。


それに応えて振り返した後、大翔と一緒に

やぐらに向かって歩いていく。




人混みを縫っていくのって、難しい。


ぶつからないように避けながら、

やっと近くまで行けた。



大きな太鼓。


さっきまで、練習で叩いていた人が

いたけど。今は、いない。



「······はる!太鼓、おっきいね!」



声を掛けてみた。



反応は、ないけど。


太鼓がある方向を見上げたまま、動かない。




「かき氷んとこ、めっちゃ並んどる!

 買うのやめた!」



そう言いながら、唱磨くんがやってきた。


おかしくて、笑ってしまう。



「並んでたら、必ず買えるのに。」


「並ぶの嫌いなんよ。無理。

 空いたら買う。」


「多分、空かないと思うよ?」


「じゃあ、いらん。盆踊り終わっちまう。」



楽友は、意外なところで

せっかちさんだ。



「······太鼓、好きなん?」



大翔の様子を見て、聞かれる。



「分かんない。あまり見たことないから、

 珍しいのかも······」



言い終わる前に、どんっ、と

横からきた人に押された。



あっ、

ヤバッ、

こけるっ······!




そう思う前に、ぐいっ、と引っ張られた。



大翔の手を繋いでいない方の、自分の手。



それを。



地面に倒れないように、

力いっぱい握った、手が。




「あぶねー······大丈夫か?」



聞かれるのと。状況を理解するのと。


入り乱れて、よく分からずに

向けられた視線と合わせる。



「······あ······う······うん······」




手が。


唱磨くんの、手が。


自分の手を、握っている。






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