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S3−29


「えっ······」



瞳の奥に、強い光が宿っている。


それを見て、この前の事を思い出した。



何かを求め、伝えようとしている。



「はる?なに?どうしたの?」



それによって、ズキズキして

モヤモヤする気持ちが全部吹き飛んだ。


宿った光を消したくない思いで、覗き込む。



あの時は。


ブロッコリーマンのキーホルダーを、

落としてしまって。


どこにあるの?あれが欲しいよって

伝えようとしていた。



今度は?



夏芽は必死になって、その意味を

汲み取ろうとした。



自分は、お面を渡した。


それが、何かを生み出した。



······何を?

一体、何が言いたいの?大翔?




じっと、その光を追う。


······

分からないのが、つらい。


あの時だって、自分は何もできなくて。


分かりたいのに。何で分からないの?



焦れば焦るほど、分からない。




浴衣の袖を持っていた大翔の手が、離れた。


時間切れ、という風に思えて

夏芽は泣きそうになる。



しかし。


掴む手が離れたのは、

ある行動をする為だという事を

目の当たりにする。



大翔は、持っていたお面を顔に被せた。



「······」




閃光が走る。




生まれた何か、というのは。


もしかして。



······そういうことなの?大翔?













「どうしたのかしら······

 戻ってこないわねぇ······」



リビングに行って中々戻らない夏芽を、

沙綾は気にしながら言葉を漏らす。



「あの······良かったら、盆踊り

 一緒に行きませんか?」



控えめに、掠れた声が掛けられる。


それに、彼女は笑顔で応えた。



「······そうね。

 大翔が行きたいって言うなら······

 行きたいわね。」



人が集まる所へ行くのは、彼にとって

かなりの負担になる。


私が、付いていたとしても。



「······多分、大翔くんは······

 行きたいと思います。」


「······えっ?」



小野田の家に来て、

盆踊りの話題になった時。


大翔くんは、反応していた。


小野田を、見ていた。



だから、探した。


お面で顔を隠せたら、

周りの視線はそれに集中する。

大翔くんに、注がれない。


たくさん人がいても、大丈夫だって。





リビングから現れた、夏芽の隣には。


お面を付けた、大翔の姿があった。



「えっ?」



沙綾は驚いて、声を上げる。



「······ママ。一緒に、盆踊り行こ。」



お面を付けたら。


大翔は、ブロッコリーマンになれると

思ったのかも。



「手を繋いでいれば、大丈夫だよ。」


「なっちゃん······」



泣きそうになっている母親に、

夏芽は優しく言葉を掛けた。


大丈夫。行けるよ、と。



そして、玄関に立っている唱磨へ

目を移して、満面の笑みを浮かべた。



「お面、ありがとね。」




楽友は。


いつも、良いきっかけをくれて。



魔法を、かけてくれる。





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