S3−27
「うふふっかわいいっ」
オシャレをする時は、だいたい
ママの監修が入る。
特に今日は、自分じゃ着れない浴衣だから。
ママって、時々何者?って思っちゃう。
着付けできちゃうとか。
「髪、上げなきゃダメ?」
「そうね。上げたほうがいいわね。
なっちゃんの可愛いうなじ、
見せちゃいましょう。」
うなじに、かわいいとかあるの?
何となく、落ち着かない。
「はい!できあがり!
パパに見せたいから、撮ってもいいかしら?
泣いて喜ぶわよ〜!」
「えっ、うん······」
泣いて、喜ぶのかなぁ?
“盆踊りには浴衣で行こーね!”と、
悠乃から強く言われた。
ちょっと着ていくの迷ったけど······
町内の盆踊りが開催される場所は、まさかの
近所の公園だった。
あの場所に出店とか並んで、
盆踊りの太鼓が真ん中のやぐらに来る。
かなり狭くなりそうだけど、
踊るスペースあるのかな?
姿見に映る自分自身を、夏芽は
じっと見つめた。
着て、良かったかも。
気持ちが上がってきた。
ママの監修は、いつも間違いない。
思った以上に、かわいくしてくれる。
「ここの盆踊りって、何なのかなぁ?」
「多分、炭坑節じゃないかしら。
福岡ではそうだって聞いているわよ。」
炭坑節、かぁ。
一回でも聴いておけば良かったと、
今頃になって思う。
「唱磨くんの反応、楽しみね!」
「······いやいやいや、楽しみじゃない。」
ノーリアクションっぽい。
「迎えに来るんでしょ?」
ママ。そのニヤニヤすんのやめて。
夏休みに入ってから、唱磨くんは
何回か家に遊びに来てくれた。
ほとんど、レッスン後の集まりと
変わらない時間を過ごしている。
ただ。ホームだからなのか、
もてなす気分になっちゃう。
この前。気合い入ったママの大量唐揚げを、
残さずペロリと食べてしまって。
“ヤバいっす。無限にいけます。”と、
目をキラキラさせながら言ってた。
そうなるとママも、嬉しいしかなくて。
“今度は何がいいかしら〜?
何でも作っちゃうからね〜!”と、
めっちゃニコニコしながら聞いてた。
大翔は、というと。
唱磨くんがリビングに来ても
全然逃げずに、おっきなブロッコリーマンと
空を眺めていた。
—「気に入ってもらえたみたいやな。」—
そう言って、優しい笑顔になる楽友に
自分も釣られて、笑顔になった。
唱磨くんに、兄弟はいない。
大翔は、弟みたいな感覚なのかな。
大翔のことを、とても大事に
考えてくれている気がした。
大翔も、きっと。
兄という存在で、受け入れているのかも。
ピーンポーン。
「ほら、来たわよ!出迎えなさい!」
うわうわ背中押さないでーっ!
「待って待ってママっ、ママが出迎えてよっ」
「何言ってるの!ふふっ!
恥ずかしがっちゃって〜っ。
大丈夫よ!とーーーーっても可愛いから!」
かわいいとかの問題じゃないってば〜っ!!




