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S3−20


週末のショッピングモールは、

人で溢れ返っている。


フードコートのテーブル席は、

ほぼ家族連れで埋まって賑わっていた。

ちょうど空いていて座れたのが、

奇跡に近い。



「それ、そんなに美味いと?」



向かい側から、言葉が投げられる。


それに目を向けたが、

口の中がうどんで溢れてしまって

開けられず、頷くことしかできなかった。



前方から、箸が伸びる。


えっと言う間もなく、

二枚ほどのワカメが攫われていった。



「あっ、おまっ」



代わりに怜央が、驚いた様子で声を漏らす。


その抵抗虚しく、ワカメとうどんを

御汁に浸して啜った唱磨は、

じっくり咀嚼している。



「······んー。へー。

 まぁまぁいけるやん。」



皆、唖然としていた。



「ま······的野くん。

 今みたいなの、日常でしとるん?」



悠乃の質問に対して、彼は首を傾げる。



「今みたいなのって?」


「お前なっ、家族のやつをもらうなら

 分かるけどっ······」



二人の言いたい事は、すごく分かる。

自分も、それが聞きたい。


妙な動悸が、鳴り止まない。



「······あっ。

 あー······いや、違う。

 今のは、無意識で。ごめん。

 あまりにも美味そうに食っとるけん、

 つい。」



その言い分に、三人は固まった。


そして、それぞれ思うところがあったらしく。



「そっ、そうやなっ。無意識ってある!

 うん、隣の芝生は緑みたいって言うよな!」


「ま、前田くん、それ言うなら

 青く見える、やろ······」


「あはっ、あははっ!そうとも言う!」



うんうん。無意識ね。分かる。

衝動的なやつよね。うん······


······


って、納得できないよぉぉぉっ!



顔が異常に熱くなって夏芽は、

ひたすらうどんを啜りまくる。



「そっかぁーっ。そういうことかぁーっ。」


「やっぱりねぇーっ。」


「はぁ?何の話?」


「そっかー。まぁ、中学になったら、

 いろいろあるよなーっ。」


「やねーっ。」


「お前ら、何言いようと?」


「それについても、全力応援するけんな!」


「自分も!」


「さっぱり分からんっちゃけど?」



いやいやもういいよぉぉぉぉっ······



唱磨くんが天然すぎるのもだけど、

悠乃と前田くんが勘違いしちゃうのも······


事故としか言い様がない。



うどんを中々飲み込めずもぐもぐさせて、

真っ赤になって俯いている

夏芽の様子に、悠乃は何となく察した。


あぁ。これは。まずいと。

慌てて、話題を変えようと声を上げる。



「そうだ!来月、町内の盆踊りがあるやん?

 みんなで一緒に行かん?」



町内の、盆踊り······?



「おっ、それな!

 毎年もれなく参加しとる!」


「うちのパパママが出店しとるんよ〜。

 安くしてもらうけん、行こ!」


「おいおいまだ酒飲めんばい?」


「ビールだけじゃくて、

 かき氷もやるんよ!」


「あ。それなら、俺んとこの

 叔父さん叔母さんも出店するんよ。

 父さんも手伝うみたい。今年は、

 焼きそばするって言っとった。」


「ヤバッ!それは行くしかないやろ!」




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