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S3−14


まさかの、ラスボス襲来。


橋本先生が、福岡に来る。


しかも、コンサートで。



その事実に、夏芽は浮き立った。



チケットには、何を弾くのか

詳細は記されていない。だが、

会えるのと生演奏が聴けるという

願ってもない機会に、少なからず

嬉しい気持ちで溢れてしまう。



「9月中旬だから、まだ少し先だけどね。

 私たち家族の分もあるわ。そして、

 的野先生たちにもチケットを送ったって

 仰っていたの。だから、みんなで

 一緒に行きましょう。」


「的野先生、“たち”······?」


「ええ。唱磨くんも。」



沙綾から告げられる一言一句に、

身体中の細胞が活性化していく。



何、そのイベント。ヤバすぎない?



「みんなで来てほしいって。

 秀一さん、その日は土曜日だけど

 お仕事入れないでね。」



ソファーで夏芽と同じように仰け反って

くつろいでいた秀一は、

眠気でとろんとした目を向けて微笑む。



「勿論だよ〜。僕は、橋本先生のコンサート

 初めてなんだよねぇ。楽しみだなぁ。」


「ふふっ、そうね。」


「僕の車で、みんなを乗せていこうか?」


「えぇ。そうしてもらおうと思ってたの。

 終わったら、みんなで食事会しましょう。」


「おぉ。いいねぇ〜。」



最近、パパは車を買ったんだよね。

それもあって、何かと自分たちを乗せて

ドライブしたがる。


東京にいた時のやつより、

ずっと大きくて広くて

乗り心地は、とてもいい。



「夏芽。めいっぱいオシャレして

 行きましょうね。」



にこやかに言われて、少し怯む。



「めいっぱいって、どのくらい?」


「目が離せなくなるくらい。」


「えっ」


「うふふ、大丈夫。ママがついてるわ。

 こんなに成長しましたっていう姿を、先生に

 見せつけちゃいましょう。」



こういう時のママは、本気だ。


どうしよう。今から怖くなってきた。



「唱磨くんも見惚れちゃうくらい、

 キレカワにね。」


「しょっ」



唱磨くんは、めいっぱいオシャレするのと

関係なくない?



シャキッと背筋を伸ばし、秀一は

言葉を投げる。



「僕は、まだ早いと思うぞ。」


「あら、そうかしら。ふふっ。

 こういうイベントっていうのは、

 大事なのよ。いつもと違う姿を見て、

 自覚するはずだから。」


「まだ、早い。」


「私は、もう始まっていると思うわよ。」



いやいや、何の話??



「なっちゃ〜んっ」



えっ、パパ?

何でそんな、悲しそうな顔してるの?



「まだ僕のなっちゃんでいてくれ〜っ」


「えぇっ??」



どゆこと???



「なっちゃ〜んっ」


「夏芽。パパに何か弾いてあげて。」


「えっ?」



この流れで、ピアノ弾くの?



「秀一さん。最近なっちゃんのピアノ、

 とってもすごく素敵なのよ。」


「聴きたいぃぃ癒されたいぃぃ」


「まだ早いなんて、言えなくなるから。」





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