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S3−11


「ぜんざいって、手作り?」


「うん。母さんが生きとった時も、

 それだけは父さんが作っとるね。

 父さんも甘いもの大好きやけん、

 こだわりがあるんやろうな。

 入れる餅は、毎年農協で

 餅つきしたやつやけど、ばり美味かよ。」


「うわぁぁぁ······

 間違いなく美味しいやつじゃん、それ〜。」


「ははっ、そんなに?

 食べに来ればいいやん。」


「えっ、いいの?!」


「食べきれんやろって思うくらい、

 いつもばりばり多めに作るけん。

 ほとんど父さんが食べとるし。」


「······ほ、ホントに、行くよ?」


「あははっ!何気にしとるんよ?

 その方が、父さんも喜ぶけん。」



待って待って。それって、

唱磨くんの誕生日を祝えるのと、

美味しいぜんざい食べれるのと、

自分の方が、めっちゃ楽しいばかりじゃない?

······いい、のかな。


······いい、んだよね。

うん。ごめん。

食欲に勝てない。



「······行きます。」


「うん。伝えとく。」



うわぁぁぁ。楽しみすぎる。

お祝いのお返し、本気で考えよう。




夏芽はポケットからスマホを取り出すと、

画面を唱磨の方へ向けた。



「そういえばパパがね、日が跨いだからって

 夜中にプレゼントしてくれたの。」



秀一からもらったプレゼント菓子を、

紙袋から全部出して広げた画像。


それを見て彼は、しばらく固まる。



「······量、バグっとらん?」


「毎年の楽しみ。」


「いつか歯、無くなるんやない?」


「虫歯ゼロだよ。」


「······ばりすご。」


「えへへ」




空の色が、さっきよりも

朱色に染まっている。


それに気づいた唱磨は、

地面に両足付けて立ち上がった。



「もう帰ろう。家の人待っとるやろ?」


「······そう、だね。」



その気遣いは、とても嬉しい。

でも少しだけ、寂しい。


もっと、この時間の中に、いたいな。



そう思いながらも、夏芽は腰を上げた。



「明日、感想聞かせて。」


「うん。」


「······

 ノクターン、弾くっちゃろ?」



その問いに、少し間を空けて答える。



「······まだ、分かんない。」


「そうなん?弾くと思って、

 聴いとるんかと思っとったけど。」


「······」



今の自分の力で、弾けるかどうか。



「小野田」



呼ばれて、顔を上げる。



「俺は、お前が弾くノクターン

 聴きたい。」



そう告げた楽友は。


朱色の光に照らされて、眩しそうだった。



「今のお前なら、弾ける。自信持て。」



······ねぇ。唱磨くん。


どうして、分かっちゃうの?



「待っとるけんな。お前のノクターン。」



どうして、そんなに······


自分のこと、信じてくれるの?



「怜央が、ファン1号って言っとったけど。

 俺は、0号やな。」


「······?」


「無限大ってこと。」




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