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S3−6


「話し掛けても避けるし黙るし

 どーしたっちゃろって、みんな

 心配しとったんやけんな?

 何でそうなったん?

 母ちゃんが、いなくなったけん?」


「ちょ、前田くん!」


「······まぁ、色々とあって。」


「その色々、教えろや。」


「教える必要、ないやろ。」


「ダチやろ。」


「思い込んどるだけやろ。」


「痛すぎるって。お前。」


「知らん。」



二人のやり取りから、夏芽は察した。



言いにくいことを、ズバッと聞いちゃうくらい

仲良かったんだろうな······

唱磨くんと前田くんって。



「······まぁ、避けなくなっただけでも

 いいたい。前みたいに遊ぼーや。」


「気が向いたら。」


「あー。何で、

 そういうこと言うっちゃろーかー。」


「悪いけど、忙しいんよ。色々と。」


「また色々かよ。忙しいって、勉強が?」


「まぁ、そんなところ。」


「真面目かっ。」


「ガチやけん。」


「ねぇねぇ、どうしてそんなに

 ピリピリしとると?仲良くしよ?」


「そうそう。また仲良くなればいいやん?

 そのガチで色々忙しい理由、

 ちゃんと教えろって。俺ら、別に

 お前の邪魔をしようなんて

 思っとらんけん。」


「······」


「あ。良かったら、自分も

 聞かせてもらいたいなぁ。」


「······」



ちらっと、唱磨くんの視線が自分に向く。

ほんの一瞬だったけど。


そう。別に、隠す必要はないんだよね······


何で唱磨くん、みんなを避けるように

なっちゃったんだろう。



「······俺と小野田は、楽友なんよ。」


「楽友?」


「夢を目指す、同志みたいなやつ。」


「夢って······?」


「小野田は、ピアニスト。

 俺は、ピアノ調律師。互いに目指しとる。」



······自分の夢は、ちょっと

人に話すの躊躇っちゃうけど。



語られた事実に、

悠乃と怜央は目を見開いた。



「すげーやん!」


「カッコいい!」


「だから俺ら、助け合っとる。」


「同盟みたいなやつか!ばりばりいいやん!」


「ピアノしとるの知っとったけど、

 プロを目指すのは聞いとらんかった!」


「う、うん······実現難しいし、

 理解されないだろうなって思って······」


「そんなことなかよぉ!

 ばり頑張っとるやん夏芽!」


「へぇーっ、聴きてぇなー。」


「金取るけど。」


「はぁぁ??」


「そのくらいのレベルやけんな。

 小野田のピアノは。」



えっ。



「ま、的野くん?」


「うわぁぁっ払う!聴きたい!」


「い、いやいや悠乃っ」


「そういうお前は、タダで聴いとるんやろ?」


「楽友の特権。」


「ずりぃっ」


「俺が調律師になったら、

 小野田が弾くピアノを調律する。

 それで、チャラにする予定。」



えっ。なにそれ。初めて聞いた。




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