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S3−5


こんな形で祝ってもらったのは、

勿論初めてだった。

イジメとかではなく、自然の流れで。


自分なんかが、と思ってしまうのは

隠し持っている陰キャのせいで。


もっと素直に喜べたらいいのにと、

やっぱりどこかで反省してる。



せっかく無事に、

13歳になったんだから······

少しだけ、ポジティブになれるといいな。


笑顔で、“ありがとう”って

言えるようになりたい。

















これで終わりではなかった。


事件は、放課後にも起こった。



自分の教室になぜか、

唱磨くんがやって来たのだ。



最初、知り合いの子に用事があるのかなと

思って見ていたら、目が合った。


真っ直ぐに、自分の所へ歩いてくる。



えっ、えっ?自分に、用事?



「······一緒に帰らん?」


「えっ······」



この非日常の光景に、クラスメイトたちは

すぐに気づいて、好奇の目を向けている。



うわ。何で?急に、どうしたの??



「何だ、お前ら知り合い?」



そこでなぜか、前田 怜央が話し掛けてきた。


これにはさらに、興味津々の視線が強まる。



「······父さんの、教え子。」


「あぁ、確か、ピアノの先生やったっけ。

 ······あれ?でも、

 閉めとるんやなかった?」


「特別に、教えとる。」


「······へーっ。

 小野田、ピアノ弾けるんやな。すげーっ。」



うわうわうわ。もう、何なのこの状況。



「それで、知り合いなん?」


「······そんなとこ。」


「じゃあ、俺も混ぜろよ。」


「いや、何で?」


「ダチなら、俺もなりたい。ってか

 お前、ダチやったやんか。またなろうぜ。」


「よく分からん。」


「何でお前、そんな感じになったと?

 前は仲良かったやん。」


「······そうやったっけ?」


「はぁぁ?その反応、痛ぇなっ。」



ちょ、何なのぉぉ。

よく分かんないよぉぉ。

ケンカとか、し始めないでよぉぉ?



「ふ、二人とも待って。夏芽困っとるやん。

 少し落ち着こ?ね?

 せっかく幼なじみ揃ったんやから、

 仲良くしよ?」



悠乃が割って入ったお陰で、

クラスメイトたちは

何だ、こいつらダチかよ。的な視線に変わって

各々解散していく。


それに、肩をなでおろした。



助かったぁ。ありがと悠乃。



唱磨と怜央は、互いに息をつくと

夏芽に向かって頭を下げる。



「悪い。困らせて。」


「······う、ううん。」


「俺とこいつ、ちっさい頃から知っとるんよ。

 重田もやけど。だから、つい。」



幼なじみ。悠乃が唱磨くんを知ってるのは、

前に聞いてたけど······


前田くんと唱磨くんは、それよりも······



「話すの久しぶりやん。唱磨。」


「······そうやな。」


「自分もーっ。憶えとる?」


「······あぁ。勿論。」


「よかったーっ。忘れられとると思った!」


「忘れる?何で?」


「えっ、だって······」


「お前が、急に変わったけんやろ。」



三人が話すのを、夏芽は

しばらく静かに見守ることにした。




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