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S3−4


「小野田、今日誕生日なん?」



聞いていたのか、斜め前の席の

前田 怜央(まえだ れお)が話し掛けてきた。

これにはかなり、びっくりする。



「う、うん······」


「おめでと!」


「あ、ありがと······」



悠乃と話していたのを、見かけたことはある。

でも、自分とは。

話したことあるかな?って、考えるくらい

何の繋がりもない子なのに。



「みんな!小野田、今日誕生日!」


「えっ」



まさかの一言。


クラスメイト全員が、注目する。


一斉に視線を浴びて、固まるしかなかった。



変な動悸が起こると同時に、

わっと各所から声が上がる。



「おめでとさーん!」


「おめでとー!」


「これでまた一人、

 行ってしまったんやな······」


「はーっ?なんやそれ〜?」


「自分も一週間後に後追いまーす!

 よろしくー!」


「自分は一ヶ月後〜!」


「ヤバッ!エンドレスやん!ぎゃははっ!」



意見が飛び交い騒然となって、

どうすることもできない。


笑うべきなのかどうかも、分からない。



とにかく恥ずかしくて何も言えず

真っ赤になっていると、まとめるように

悠乃が笑顔で声を上げた。



「みんなでバースデーソング歌お!」



ゆ、悠乃??



「定番のやつ?」


「で、いいんやね?」


「はーい、せーのっ!」


「ハッピバースデ〜トゥーユー♪♪♪」




これは、夢?


自分へ向けて、みんながバースデーソングを。


こんな光景、ヤバすぎる。



······夢、かもしれない。

そうだ。まだ、続いてるんだ。夢。




混乱して現実逃避していると、担任の

後藤 蒼汰(ごとう そうた)が

目を丸くさせて教室に現れた。



「こらお前ら何事だーっ?!」


「センセー!今日、

 小野田の誕生日なんっす!」


「祝ってやってくださーい!」



先生、お願い。止めてください。


懇願するように、眼差しを送る。



「ほぉ〜?それで歌っとったんか?」


「先生も一緒にお願いしまーす!」


「分かった!混ぜろ!」


「うぇ~い!」



······混ざっちゃうんだ。



夏芽は身を固めたまま、

教室内全員からのバースデーソングを

一身に浴びた。


終わった後、大きな拍手が送られる。



「小野田。誕生日おめでとう。

 これからも、元気で過ごしなさい。」


「······あ······

 ありがとう、ございます······」


「はいみんな、席に着け〜!」



後藤に言われた通り、

クラスメイトたちは素直に

ガタガタと音を立てて席に着いていく。


その中、悠乃がちらっと目を向けてきて

にこっ、と笑った。


そのお陰で、自覚する。



これは、現実だったらしい。


まだ、ドキドキしてる。



嬉しさが先にくるよりも、

大きな驚きの方が強かった。




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