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S3−3


今年の梅雨明けは平年よりも早く、

真夏の始まりを自覚させるような

澄んだ青空が広がっている。



梅雨の時期、悠乃の父親が車で

夏芽を一緒に乗せて

登下校の送迎をしてくれていた。

今でも雨の日は、お世話になっている。


機関銃のように話し明るい人柄に

最初は戸惑ったものの、今では会うと

笑顔にならずにはいられない。

その心意気に、とても感謝していた。


その時の悠乃は面倒くさそうにしているが、

心の中では頼りにしているのを知っている。




ここに引っ越してきて驚いたのが、

一晩中聞こえる蛙の鳴き声だった。


水をくれと雨乞いをしているのか、

みんなで雨降らないかなと喋っているのか

分からないが、とにかく賑やかである。


不思議と、うるさいとはならなくて。

自然の生き物の声が聞こえる環境は、

なぜか妙に安心できた。


耳を澄ましていると、色んな音が聞こえる。

夜起きたとしても、少しも寂しくはなかった。




通学途中、農家の人が

周りに伸びた雑草を刈り、

トラクターで土を耕しているのを

夏芽は目に入れていた。


楽友が手伝うと言っていた田植えは

無事に終わったらしい。

この前、こっそり自転車で通りかかり

寄り道して確認した。


小さな苗が、水を張られた田んぼで

綺麗に並んで植えられていた。



晴れた時は、青空が反射して映っている。

ずっと見ていても、飽きない。


何も手伝っていないけど、

愛着が湧くというか。

同じ田んぼでも、どこか見方が違った。


楽友が関わっているからなのかな。

無事に育ってほしいなと、心から思う。












学校に着く頃は、汗だく。

汗拭きシートは、マスト。

ママに頼んで、買ってもらってて良かった。


汗臭いまま、教室に行きたくない。

必ずトイレに寄って、シートで拭いて

いい匂いなのを確認してからじゃないと無理。



朝でも気温は高く、蒸し暑さがあった。

何もしなくても暑い上に

自転車を漕いでいくのは、かなりしんどい。


シートで拭いて落ち着いた後、

設置された水飲み場に行って、がぶ飲みする。


夏芽のように自転車通学の子たちにとって、

この場は天国だと言っていいだろう。







朝のホームルームが始まる前。


教室内が賑やかな中で、夏芽は悠乃に

今日が自分の誕生日であることを打ち明けた。



「えっ、今日誕生日なん?!」


「うん。」



さらっと言ったのに対し、友人は

この世の終わりみたいな顔をした。



「何で早く言わんかったと〜?!

 プレゼント、用意できんかったやーん!」


「い、いいって。祝ってもらえたら、

 それで嬉しいから。」


「夏芽は良くても自分がダメ!

 そういうの大事にせんとぉ〜!」


「え〜?」



おめでとうって言葉だけで、十分だけどなぁ。




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