S3−1
「日を跨いじゃったから、
今でも良いかなと思ってね。」
「ふふっ。秀一さん、気が早いんだから。」
「······開けてもいい?」
「どうぞどうぞ。」
わっ······
めっちゃいっぱいの、お菓子っ。
「あり、がとう······」
眠さが勝ってしまって、鈍い反応になった。
それを見た彼は、ダメだったかなという
苦笑いに変わる。
「もうお菓子じゃ、喜ばないかなとは
思ったんだけど······」
「えっ、ううん。嬉しいよ?」
「来年は、違うのにするからね······」
「ちょ、パパ······嬉しいってば。」
「ママからのプレゼントは、
夕ご飯の時に渡すからね〜。」
寝落ちから日を跨いで誕生日を迎えるのは、
これが初めてである。
そして、こうして迎えた直後に
祝ってもらうことも。
「秀一さん。今夜は、何が何でも
早く帰ってきてね。」
「あぁ勿論!前倒しで業務済ませてきた。
定時上がり間違いないから。」
「主役のなっちゃんも、よ?
真っ直ぐ帰ってきなさいね。」
「はーい。」
多分、自分の大好きな唐揚げ作ってくれる。
鶏肉漬け込んでるやつが、冷蔵庫に入ってた。
最近自分の食欲すごすぎて、
太ってしまいそうでめっちゃ怖い。
空気が美味しいのと関係してるのかな······
こっちの食べ物、ホント美味しすぎ。
「それじゃあ、おやすみなさいね。」
「おやすみ、なっちゃん。」
「はーい。おやすみ〜。
あ、パパ。お仕事お疲れさま。
プレゼントありがとう。」
さっきの反応を挽回するように、夏芽は
とびっきりの笑顔で手を振る。
すると彼の頬は、へにゃり、と緩んだ。
「明日···あぁ、いや、今日か。今日は、
何が何でも早く帰ってくるからね。
へへっ。」
部屋のドアがパタンと閉まるまで、
秀一の蕩けた笑みが映り込む。
パパ、めっちゃ疲れてるのに。
もしかして、自分のプレゼントお菓子買う為に
こんなに遅くなったのかな。
スナック菓子から駄菓子、チョコレート、飴、
クッキーなどなど、馴染み深い物から
真新しい物まで様々入っている。
わーっ、すんごいたくさん。
あっ。これ食べたかったんだよね〜。
うぅ。今広げちゃうと、食べちゃいそう······
学校帰ってからのお楽しみにしよ。
夏芽の菓子好きは、筋金入りである。
プレゼントは何がいい?と聞かれたら、
とにかくたくさんのお菓子!と
迷わず答える程。これは、未だに変わらない。
いつか虫歯になるよねと思ってるけど、
なぜか今のところ平気。
ケアにうるさいママのお陰かも。
えへへ。これ、食べきるの
いつになるかな。
大事に抱えていた紙袋を、飾るように
そっと勉強机の上に置く。
少し眠気が飛んだのもあって、
スマホを扱いながらベッドへと寝転がった。




