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S2−20


自分を抱き締めながら泣き崩れる母親に、

夏芽も堪らなくなって涙を流した。



ママも、責め続けていたんだ。

自分と同じだったんだ。


明るくして、隠してただけで、本当は。



「······的野くんがね、今から

 でっかいブロッコリーマンを

 持ってきてくれるって言って······」


「······まぁっ······

 本当に······唱磨くん、

 すごく、いい子ねっ······」


「うんっ······

 はる、気に入ってくれるかな······?」


「もちろんよっ······

 うふふっ······楽しみねっ······」



互いに、ボロボロに泣きながらも。


心から、笑っていた。



「先生と唱磨くんに出そうと思っていた

 お茶菓子、手渡したいけど······

 涙でメイク取れた顔見て、

 びっくりするわよね······」


「大丈夫だよ、ママ。最近、そんなに言うほど

 メイクしてないじゃん······

 十分、きれいだもん······」


「まぁっ、やだ、ふふっ、嬉しいっ······」


「やっ、ちょ、やめっ······」



ぐしゃぐしゃに頭を撫でられても、

泣き笑いが止まらない。




ピーンポーン。




「わっ、どうしよっ。来ちゃったっ」


「ほらっ、迎えにいきなさいっ。

 私も、すぐに行くから。」



ごしごしと涙を拭って、

ボサボサになった頭を慌てて直しながら

夏芽は、インターホンのモニター画面を見る。


どういうことか、緑色しか映っていない。



えっ。今、どういう角度で映ってるの?




応答せずに玄関のドアを開けると、

存在感溢れる大きな緑色の塊が

唱磨の右腕に抱えられていた。



「うわぁっ!ホントでっかいっ!かわいっ!」


「このサイズのやつ、見たことないやろ?」



勝ち誇った笑顔で手渡され、

ふんわりほこほこで大きな

ブロッコリーマンのぬいぐるみに、

笑うしかなかった。



「かわいすぎるっ······これ、

 ホントに、いいの?」


「あぁ。」


「ありがとうっ」


「持ってくんの、まぁまぁ恥ずかった。」


「ふふっ」


「あらっ!可愛いわね〜!

 唱磨くん!本当に、ありがとう!」



遅れてきた沙綾は、ケーキ箱を両手に持って

笑顔で差し出す。



「これ、良かったら先生と食べてね。」


「あ、すみません······

 いつも、ありがとうございます。」


「こちらこそ!いつでも遊びに来て。

 夏芽は勿論、大翔も喜ぶと思うわ。」



ま、ママっ。勿論って。



「はい。また、来ます。」



淀みもせずに告げて頭を下げると、唱磨は

夏芽に笑顔を向けた。



「じゃあな。」


「······うん。またね。」



釣られて笑顔で応えたら、

少し照れくさくなって

大きなブロッコリーマンで顔を隠す。


彩緑のヒーローの手を借りて、

バイバイと手を振った。




今日だけで唱磨くんの笑顔、いっぱい見れた。



それが、嬉しいのと同時に

意味不明な胸の苦しさを覚える。






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