sinfonia 2 a-moll
ゆるりと再開します♪♪♪
お時間の許す限り
よろしくお願いしますm(_ _)m。・゜・゜・。
咲き誇っていた桜は儚く散り、
若葉に覆われている。
「小野田さんって、地元ここやないよね?」
その質問は、急に投げられた。
前席に座っている生徒は、
最近少しだけ話すようになった
重田 悠乃である。
「あ、うん。」
「もしかして、東京?」
「······うん。」
「やっぱね!」
予言は正しかった。というような。
そんな明るい笑顔を、向けられても。
「親の転勤?」
「······うん。」
「大変やったね。こっち何もなかろ?」
同じような質問を、
前にされたような気がする。
「何もないこと、ないよ。」
美味しいもの、たくさんある。
「東京いいなぁ。行ってみたいなぁ。」
質問したのは、きっと
その憧れからなんだろうな。
「ねぇ。今日の帰り、予定ある?」
じっと、見つめられた。
真っ直ぐすぎて、目を逸らしてしまう。
「ごめん。今日は······」
レッスンが。そう言いかけて、止める。
ピアノ弾いてること、言っていいのかな。
「そっか。じゃあ、また今度!」
ニコッと笑って、前に向き直った。
意外と、あっさり引いてくれた。
ホッとしたと同時に、罪悪感が。
きっと、遊ぼうって誘おうとしたんだ。
ごめんなさい。
彼女の背中に、謝罪の言葉をぶつける。
人見知りの壁が、まだ壊れない。
自転車で通学する事には、慣れた。
急な坂とか、最初漕ぐのきつかったけど
今では、息切れせずにいける。
制服のスカート丈が膝下で
かわいくないけど、ガンガン漕いでも
見える心配がない。
それは、良いところかな。
家の近所の公園に差し掛かり、夏芽は
桜並木を一瞥した。
もう葉っぱで、いっぱい。
咲いてる時間、あっという間だった。
花見の下見で撮るのに集中してた時、
なぜか唱磨くんがママと大翔と並んで
自分を見ていた。
死ぬほど驚いた。なんで、いるの?って。
こっちが気づいたら、何も言わず
どっか行っちゃって。
一体、何だったの?
その疑問は、まだ解けずにいる。
中学に入学して、約一ヶ月半が過ぎた。
急速に中間テストとか運動会とか
鬼イベントが続いて、
飛び交う博多弁に慣れないまま、
無難に何とかやり過ごした結果、
友だちゼロの学校生活を送っている。
予想は、していた。言葉の壁。
同じ日本語でも、そういうのあるんだ。
話したら絶対、東京人だったのがバレる。
ハブられそうで、怖かった。
でも、今日。
重田さんに聞かれて、隠せなかった。
きっと、いい子だ。かわいい。
何となく分かる。普通に、自分と
仲良くしてくれそうだって。
そう思って、分かっているつもりだけど。
なかなか踏み出せない。
家に帰り着くと、夏芽はヘルメットを脱いで
自転車の前カゴに入れる。
すぐに玄関へ向かうと、
ポケットから鍵を出して、施錠を解いた。
「ただいま〜。」
「おかえりなさい!
何か食べていくでしょう?
シュークリームあるわよ。」
すぐに沙綾が玄関まで出てきて、
笑顔で迎える。
「今日暑すぎ。喉カラカラ。
とりあえずお水だけでいい。」
「了解!冷蔵庫入れておくからね。」
シュークリームは、事前練習の後。
頑張ったご褒美に、頬張ろう。