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S1−18


「ママ。撮ってくるね。」


「行ってらっしゃい!

 ベストショット、ママのスマホに送ってね。

 期待してるわよ〜!」



何気にプレッシャーかけてくるなぁ。


こういう時の撮影は、自分が担当。

何かとママは、自分が撮ったやつがいいと

頼んでくる。


あ。そうだ。パパにも送っとこ。




大翔の手を放し、桜の近くへ駆け出す夏芽を

沙綾は眩しそうに見送る。



一生懸命、桜に向けてスマホを翳す、愛娘。


その瞬間を、ポケットに入れていたスマホで

画像に収めた。



「······後で、はるくんも一緒に撮ろうね。」



笑顔を向けて、話しかける。


それに、反応する事はない。


でも、それでも。


呼びかけるのを、決して止めない。




「······こんにちは。」



後ろから、掠れた声が掛けられる。


その声に沙綾は、はっとして振り返った。



「あら、こんにちは!

 唱磨くんも花見しにきたの?」


「あ、いえ······

 父さんからお遣い、頼まれとったので。

 その帰りです。」



公園の入り口付近に、自転車が停めてあった。


通りかかって、見かけたのだろう。

挨拶をしてくれた事が、嬉しかった。



夏芽はまだ、彼がいる事に気づいていない。




「······大翔くん。こんにちは。」



沙綾は、目を見開いた。



彼が、この子の名前を知っている事。

挨拶の言葉で、呼びかけた事。


もし、事情を先生伝いで知っているとしたら

この行動に移すのは、勇気がいる。


見知らぬ人間に声を掛けられたら、

離れようと逃げてしまうからだ。


しかし。


大翔は、自分を盾にするようにして

隠れるだけで、逃げようとしない。



それにまた、驚くしかできなかった。




強めの風が、吹き荒れる。


逆らうことなく桜は、踊り狂うように揺れた。



大きく波打つ光景に、夏芽は

撮る事を忘れて目を奪われる。



東京でも綺麗な桜を、毎年いっぱい見てきた。


でも。こんなに、美しいと思うことは

今までになかった。


何が、違うのだろう。




花嵐が吹き抜けた方向へ唱磨は視線を移すと、

先日楽友になった彼女の姿を捉えた。



背中くらいの、少し茶色がかった髪が

桜とともに舞っている。


聴こえるはずがない、ピアノの音色。


それが、微かに聴こえた。



見上げたまま動かない、横顔が映った途端。


音色と、自分の心臓の音が

どくん、と、重なる。



これは。一体、何やろう。



初めて起こった感覚に驚き、

釘付けになって、動けなくなった。







曇りない春日向が、

揺れ動く桜に注がれている。



生み出された真円が、大翔の瞳に映った。




ごく僅かな、揺らぎ。



それに気づく者は。


まだ誰も、いなかった。













sinfonia1終わりです。

ここまで読んてくださり、本当に

ありがとうございますm(_ _)m。・゜・゜・。∞


入院と手術で数日連載ができませんが

落ち着き次第、朔耶くんたちの方へ

行こうと思います(*^^*)


何卒よろしくお願いしますm(_ _)m

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