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S1−4



              *



チュンチュン。


おはよう。

今日もいい天気ね。



会話しているように、雀のさえずりが

ベットに横たわる夏芽の耳へ届いた。


気だるそうに起き上がると、

カーテンの隙間から日差しが漏れて

日溜まりになっている所を、

ぼーっと見つめる。



熟睡、できてない気がする。

変な夢も、見た気がする。

とにかく、モヤモヤする。



ずっと、頭から離れない。



“······Aの4番が、狂っとる”。



謎解きを、試されているような感覚。



スマホは、防犯と緊急連絡ができるように

持たせてくれているけど、

自由に扱う時間と範囲は限られている。


昨日ママにお願いして

その時間をもらい、

心当たりがある言葉を検索してみた。



“アー”と発音していた“A”は、多分

“ラ”の事だ。橋本先生もドイツ語読みするから、

何となく分かった。

で、鍵盤が並ぶ左から4番目の、“ラ”。


これで合ってると思う。間違いない。

······だけど。


それが、狂ってるって、なに?




「なっちゃーん!起きなさーい!

 朝ごはんできたわよー!」



うわ。ママの声、めっちゃ通る。


周りに家がないから、大きな声出しても

苦情は来ないだろうな。

ピアノだって、気にせず弾けちゃったし。

それは、いいんだけど······



「······うーん······」



わしゃわしゃと、頭を掻く。



「気になる······」



本人に直接聞くのが一番だ。

でも、会いに行ってまで、聞くことなのか。

······



「夏芽ーっ!!」


「はーいっ!!行きまーす!!」



ママの雷が落ちる前に、行こう。


腹が減っては、というやつだ。

とにかく、お腹を満たそう。









「おはよう。」


「······おはよ。」


「休みだからって、

 ダラダラ寝るのはダメよ?」


いいじゃん。まだ8時だよ?


「······はーい。」


なんて、言えるはずもなく。




ダイニングテーブルに並ぶ朝食の材料は、

昨日寄ったコンビニで買ったものだ。


トーストと、ポタージュスープ。

ツナサラダに、ハムエッグ。

それと、アップルジュース。


その中で主役と言わんばかりに

手の平くらいの立派で大きな苺が、

一人二つずつ。


······


これから先、苺見る度に

“あの言葉”が頭の中でいっぱいになってしまう。


呪いをかけた責任、取ってほしい。




「おはよう。なっちゃん。」


「······おはよ。」



今日は土曜日。

パパのお仕事は、来週の月曜日からだ。



「秀一さん。後でスーパーに行きましょう。

 的野先生に、いい場所を教えてもらったの。

 いろいろ買い揃えないと。」


「そうだな。歩いていける距離なのか?」


「ええ。そのスーパー、

 ホームセンターも兼ねているから

 自転車も置いているらしいの。

 それも買いましょう。夏芽の中学校、

 自転車じゃないと遠いから。」


「そうか。」


「車も、必要ね。」


「ああ。とりあえず、社用車を

 借りられる事になっている。」



自転車通学、になるのか。

しばらく乗ってなかったなぁ。乗れるかなぁ。



「はるくんの自転車も、買うからね〜。」



ハムエッグを頬張っている大翔に、

ママは笑顔で声を掛ける。


それに反応することは、ない。



大翔、自転車乗れたんだっけ?


······あっても、乗るのかな······






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