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S4−33


的野家に泊まる事と加え、

恩師と一緒に過ごすというのは

非日常すぎて、イベントに近かった。



多分、眠れない。



彼女が風呂に入っている間、夏芽は

歯磨きを済ませてパジャマに着替えた。


言われた通りにベッドに上がり、

壁に背を付けて座る。



ここって、何の部屋だったんだろう。



家具がない為、生活感がない。


何も、読み取ることができなかった。



そういえば、橋本先生って

唱磨くんママと知り合いだったのかな?


······知り合い、だったよね。きっと。



グランドピアノが置かれた部屋に

飾られている、家族写真を思い出す。



······会いたかったな。唱磨くんママと。



会うことは、一生叶わない。

しかし彼の笑顔に、その人の面影がある。


もう、会うことができないけど。


彼の中で、生き続けている。









横になってスマホを扱っていると、

彼女がネグリジェ姿になって戻ってきた。


条件反射で、身を起こす。



「あら。まだ起きていたの。

 ここのお風呂、とても寛げていいのよ。

 つい、長湯しちゃったわ。

 今度入っていきなさい。」



まるで自分の家のように告げる彼女は、

温まったのか頬がほんのり赤い。


メイクを落として目元がスッキリしているが、

あまり変わりなく肌艶が良かった。



橋本先生ってホント、いくつなんだろう。



「誰かと話しながら眠りにつくのは、

 いつぶりかしら······ふふっ。

 楽しくて眠れそうにないわね。」


「自分も、です。」



小3の頃、自分の部屋を作ってもらってから。

最初は、嬉しくて眠れなくて。

次第に、寂しくて寝つきが悪くて。

でも、それに慣れて。眠れるようになった。


大翔も自分が傍にいなくて寂しかったのか、

よく部屋に来て寝ようとしていた。

気取っていたのか何なのか

分からないけど、それを自分は嫌がって。


何であの時、遠ざけちゃったんだろう。



「電気を消してもいいかしら。」


「はい。」


「話しながら、寝ましょう。」




照明が落ちて、真っ暗になった。


何も見えないけど、温かさは感じる。



「······先生。」


「なぁに?」


「自分のママと、どうやって

 知り合いになったんですか?」



ママが教えてくれないなら。

先生に、聞いてみようと思った。



「······沙綾さんに、聞かなかったの?」


「聞いたけど、教えてくれないんです。」


「······そう。」



やっと、謎が解けるかも。



「沙綾さんは、話す時を

 待っているのかもしれないわね。

 私が教えるのは、控えておくわ。」



えっ。



まさかの返答に、彼女の方へ向く。

暗闇に目が慣れてきたのか、

天井を見つめる姿を捉えた。



「ただ、言えるのは······

 あなたを愛していたから、

 今があるということ。それだけよ。」



謎が、謎を呼んだ。


この時の夏芽は、彼女の言葉を

理解することができなかった。




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