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S4−26


メニューが、ラーメンだけ。

それは逆に期待できる。

一杯のラーメンに、

力を注いでいるってことだから。


替え玉って、無いのが普通じゃないの?

この意味は、よく分かんないな。

大盛りっていうのは、二玉分ってことかな?


動画・撮影禁止かぁ。

撮りたかったなぁ······

えっ。って、いうことは。

口コミだけで、広まったってこと?

それは、すごい。




ここでは、小野田家と的野家で分かれて

夏芽は壁際に座ったので、

唱磨と隣にはならなかった。


しかしそれで、安心した。


二つの小さなテーブルを

くっつけられた席の、隣同士の間隔は狭い。


腕が触れるか触れないかの近い距離なので、

そうなると、ラーメンに集中できない。



「大盛りの方は、いらっしゃいますか?

 手を上げてくださると助かります。」



力強く元気な問いかけが、

カウンター越しから投げられた。


秀一、唱磨、恭佑の男性三人は、

迷わずに挙手をする。



「かしこまりました!少々お待ち下さい!」




ラーメンが来るのを待っている間

誰一人、口を開く様子はなかった。


店内の雰囲気もあるが、至極の一杯を

きちんと迎え入れようという

姿勢になっていた。




目の前に届けられた、ラーメンは。

チャーシューとメンマ、青ネギが乗っていた。

見た感じでいうと、至って普通の

とんこつラーメンだった。


ただ、ほわりと漂うスープの香りが。

一気に、腹の虫を騒がせる。



シンプル。でも、美味しそう。



一同、いただきます、と手を合わせて

ラーメンに向かい合うと、

箸を割り、レンゲを持つ。



とりあえず、スープからだよね。



丁寧に掬って、一口含んだ。


その瞬間、衝撃が走る。



うわっ。なにこれっ。

めっっっちゃ美味しい。



さらに一口。もう一口。


スープばかり飲んでいると、

彼女が笑いながら言った。



「夏芽さん。麺も食べてあげて。」



その言われ方が、レッスンのようで。

懐かしいのと、姿勢を正される感覚が蘇った。


だが今は、それが何となく嬉しく思えて。


夏芽は微笑みながら、はい、と答えると

箸とレンゲで麺を解していく。



少し持ち上げ、ズルズルと啜った。



ヤバい。麺も、ちょー美味しい。

止まらない。



一心不乱で麺を啜り、スープを味わう。



大盛りだったはずの楽友のどんぶりは、

誰よりも早く空になった。


スープも飲み干されて、底には

“ありがとうございます”という文字が

残されていた。



「はーっ······ごちそうさまでした!」



きちんと手を合わせて唱えた

彼の笑顔は、ホントに満足げで。

熱を持って、頬が赤くなっていた。



「ばりヤバ。無限に食える。」



素直な感想に、夏芽は思わず笑う。



食べ終わるのが寂しい。


この一杯には、そう思わせる力がある。





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