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S4−21


予想外の事に、沙綾と秀一は

顔を見合わせる。


夏芽も例外ではなかったので、

緊張気味に背筋を伸ばした。



橋本先生が、ここに来る。



ただ、恭佑は驚いた様子がなく

静かに席へ腰を下ろした。

唱磨も、表情を変えることはない。



ぺこりと再び丁寧に頭を下げ、

秘書は慌ただしく去っていく。


その後ろ姿を見送りつつ、沙綾と秀一は

緩やかに座り直した。



「コンサート直後に、

 会いにこられるなんて······」


「僕たちに、会いたかったんだと思います。」



紡いだ恭佑に、夏芽たちは注目する。

すると彼は、微笑みながら付け加えた。



「先生は、思い立ったら

 即行動する人ですから。」



彼女の性格を知り尽くしていないと、

言い切れない。



······先生って、

そんなにアクティブだったの?



夏芽視点で捉えていた彼女の姿が、

事ある毎に崩れ落ちる。



遠路福岡に来て、コンサートするところ。


わざわざ秘書を遣いに出して

自分たちを引き留めてまで、

会いに来るところ。


確かに、言われてみれば。

アクティブ以外のワードは、見つからない。



「先生、何にも変わっとらんなぁ。」



笑いながら言う楽友も、彼女の事を

よく知る一人だ。



「また、秘書変わっとるし。

 ついていけんっちゃろうね。」


「ははっ······そうやな。」



······“また”?



「気ままな人、なんですね。橋本先生って。」


「はい。すごく。」



パパの質問に、的野先生は即回答。


流石、レジェンド級の勇者。

ハンパないレベル。



「最近多忙だったみたいで、

 なかったんですけど······

 家に来る時も、当日とか。

 何回慌てたか分かりません。」


「ふふっ。それは困りますね。」


「先生、大のラーメン好きで。

 それを食べに来ただけ、とか

 よくありました。」



えっ。それは、意外すぎる。



「景色に癒やされたいとか言って、

 泊まりに来るとか。」


「そん時、ヤバかったけん。

 捜索願い出されそうになったっちゃけん。」



楽友が可笑しそうに笑って暴露した事実に、

目を丸くするしかない。


どんどん、ガラガラと。

築き上げた橋本先生像が、崩れていく。



“面白い”っていうのは。

そういう事だったのか。



「そ、それは、相当ですね······」


「ははっ。口止めされていましたけど、もう

 小野田さんたちにはいいかなって。」


「うふふっ。でも、まぁ何となく

 そういうところあるのかなと、

 気づいてはいましたけど······」


「自由気ままなところが、

 先生の良さでもありますから。」


「田植え手伝いたいとかもあったやん。

 それは流石に、止めたっちゃけど。」


「えっ」


「あぁ、そんな事もあったなぁ······」




夏芽は、唖然とする。



自由気まま、という言葉が。


これ程までに当てはまる人とは、

思わなかった。





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