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光の果て  作者: さば缶
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光の果て

 判決の日、法廷の空気は重く、まるで真夏の空の下に閉じ込められたかのようだった。

傍聴席には詰めかけた人々が息を潜め、目の前の被告を見つめている。

佐伯は手錠をかけられたまま、静かに被告席に座っていた。

彼の顔には相変わらず何の表情もなく、ただ真っ直ぐに裁判官の言葉を待っている。


「主文、被告人を有罪とする。刑は……」


 裁判官の声が響き、世界が一瞬だけ止まった。

判決が読み上げられる間、佐伯は微動だにしなかった。

ただ淡々と、その言葉を聞いていた。

彼にはもはや、自分自身の運命がどうなるかなど関係がないかのように見えた。


 判決が下され、法廷がざわつき始めた頃、佐伯はゆっくりと立ち上がる。

まるでそれが何かの儀式であるかのように、時間が流れるのを拒むかのように、彼の動きはゆっくりだった。


 その時、法廷の窓から一筋の光が差し込んだ。

午後の太陽が低く傾き、彼の顔を照らした。

眩しい光が彼の目を射抜き、佐伯は僅かに目を細めた。


「人は光を見つめると、その果てに何があるか知りたくなるものです」


 佐伯は呟いた。それは独白のようでもあり、誰かに語りかけているようでもあった。

声は小さく、かすかに揺れていたが、その言葉は空間に滲み、傍聴人や弁護士、検察官の耳にゆっくりと届いた。


 法廷内は再び静寂に包まれた。

誰もがその言葉の意味を理解しようとしたが、光が眩しすぎるように、答えはどこにも見つからなかった。

ただ佐伯の後ろ姿が警備員に連れられ、ゆっくりと消えていく。

その瞬間、彼が何を見ていたのか、何を感じていたのか――誰にもわからないままだった。



結び

 事件は終わり、佐伯は刑に服することになった。

それでも人々は、彼の「太陽が眩しかったから」という言葉を忘れることができなかった。

評論家は事件を哲学的に解釈し、学者は心理学や社会学の視点から彼の行動を分析し続けた。

しかし、何を論じても真実は空白のままだった。


「光の果て」に辿り着こうとした男の行動は、理解されることなく終わった。

いや、理解など、そもそも必要だったのだろうか?

理由のない行動、不条理な現実――人々はその中で、答えを見つけ出そうともがく。そして、それでも世界は何事もなかったかのように続いていく。


 灼熱の太陽は今日も変わらず輝き、光は世界のすべてを飲み込む。

人は光に向かって歩き続け、理由を探し続けるだろう。

その理由がどこにも存在しないことを知りながら。


 砂浜には白い光が降り注ぎ、波の音が静かに響いている。

太陽は高く、ただ眩しく、ただそこにあるだけだ。

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