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依頼の内容

ダンジョン 《深潭ノしんたんのうず》 の内部へ足を踏み入れると、アルノアたちはすぐに このダンジョン特有の異質さ を感じ取った。


まず目についたのは 空を舞うモンスターたち だった。

このダンジョンでは、なぜか 羽を持つモンスター が多く出現していた。


「水のダンジョンなのに、飛行系が多いのは意外だな……」


アルノアがつぶやくと、エギルが頷く。


「この環境に適応した結果だろうな。水に落ちれば一気に不利になるから、飛行能力を持つ個体が多く生き残ったんだろう」


しかし、彼らの注意を引くのは 空ばかりではなかった 。

ダンジョンの至る所に 水場 が広がっており、その 水中からもモンスターが狙ってくる のだ。


「地上と水中、どちらも気を抜けないってことね……」


シエラが慎重に周囲を見渡す。


目の前では、鳥のような形状をした 水色の羽を持つモンスター が旋回しながら鋭い目を光らせていた。

同時に、水面から ヌルリと黒い影が浮かび上がる 。


「来るぞ!」


エギルの声が響いた瞬間、空と水中の両方から 同時に襲撃 が始まった。


 エギルたちの戦いは、アルノアにとって 学ぶべき点が多い ものだった。


エギルは 水と地の魔法を駆使し、防御と攻撃を同時にこなす 。

彼の足元から 巨大な水の盾 が出現し、空中のモンスターの攻撃を弾く。

同時に、地面から 鋭利な石の槍 を突き上げ、水中の敵を仕留めていた。


ラウドもまた、先ほどの戦闘とは異なり、 炎だけでなく水属性も巧みに操る 。

水の流れに逆らうことなく動き、勢いを利用して素早くモンスターを斬る。

「お前、水属性も使えたのか?」

アルノアが驚いて尋ねると、ラウドは得意げに笑う。

「このダンジョンに挑むなら、水くらいは使いこなせねぇとな!」


一方で、ミアはあまり目立った動きを見せず、 剣を構えたまま冷静に敵を迎え撃っていた 。

アルノアは彼女の動きを観察しながら、 まるで”何か”を待っているようだ と感じた。


「今回は俺たちでやるから、お前らはモンスターの特徴をよく見ておけ!」

エギルが言い放ち、さらに魔法を展開する。


アルノアはその言葉を受け、 モンスターたちの行動を注意深く観察することにした 。

このダンジョンに出現する敵のほとんどは 水属性 を持ち、水を利用した 奇襲や拘束 を得意とする。

しかし、まれに 別の属性を持つ個体も紛れ込んでいる ことに気づく。


 戦いが終わり、アルノアとシエラはそれぞれ このダンジョンでの最適な戦い方を思案 していた。


「水の中からの奇襲が面倒だな」

アルノアは渦巻く水面を見つめながら言う。

「水の勢いで 音がかき消される から、接近に気付きにくい」


シエラは静かに頷き、精霊たちとのつながりを感じ取る 。

「私の精霊が 教えてくれるから大丈夫 。」


アルノアが驚いたようにシエラを見ると、彼女は少し考え込みながら続けた。

「ここに来てから、水属性の精霊の力が 異常なほど強まってるの 。もちろん水源が多いからって理由もあるけど、それにしても 強まり方が大きすぎる ……」


シエラの言葉を聞いたアルノアは、その違和感を 心に留めることにした 。

水が豊富なだけでは説明がつかない 異常な精霊の力の高まり 。

それが このダンジョンの核心に関わっている可能性 もある。


「……このダンジョン、何かあるかもしれないな」

アルノアは エーミラティスが示唆した壊れた武器 との関連も考えながら、警戒を強めるのだった。


 ダンジョンを進む中で、エギルたちは このダンジョンを攻略できていない理由 を語ってくれた。


「一度、ボスモンスターまでたどり着いたことがあるんだ」

エギルが険しい表情で語り始める。


「ボスはリヴァイアサン……水龍のモンスターで、昔から変わらない存在だ。だが、最近になって異変が起きている 。」


ミアが続ける。

「道中のモンスターたちの魔力が異常に高まっている の。以前よりも格段に強くなっていて、ボスの元にたどり着くだけでも一苦労。」


「そして問題はボスの方も同じってことだ」

ラウドが険しい口調で言う。

「リヴァイアサンも確実に強くなってる。特に最近、時折黒いオーラ をまとった個体が現れるんだ。あいつらは普通のモンスターとは違って、異常な耐久力を持ってる上に、攻撃も強烈だ 。下手に挑めば、無傷じゃ済まない。」


アルノアとシエラは顔を見合わせる。


(やはり水属性の魔力が高まっていることと関係がある……?)


シエラの精霊たちが感じ取っていた 水の異常な強まり 、エーミラティスが示唆した 壊れた武器 の存在、そして 黒いオーラをまとうモンスター ――


このダンジョンの奥には、何か異変の核心がある 。

アルノアは 慎重に進む必要がある と改めて認識したのだった。


「リヴァイアサンは個体としてもかなり強力なモンスターだ」

エギルが険しい表情で続ける。


「それに……周囲が滝に囲まれている せいで、常に水の勢いが激しい。しかも、その滝の中から次々とモンスターが出現する んだ。こっちがボスに集中しようとしても、雑魚モンスターに妨害されて消耗させられる。」


「厄介なのは、それだけじゃない」

ラウドが苛立ったように言う。

「リヴァイアサンはダメージを受けると水中に潜る んだ。で、こっちが攻撃しようとした瞬間に、予測不能な角度から襲いかかってくる。仕留めようと思っても、決定打を与えにくい。」


アルノアとシエラはじっと話を聞きながら、戦いのイメージを組み立てていた。


「……つまり、今回の依頼は強化種の討伐と、このダンジョンの異変の原因を探ること だな?」


「そうだ」

エギルが頷く。


「俺たちはここまでで、モンスターたちが強化されていること 、そして黒いオーラをまとう個体がいること までは突き止めた。でも、その原因までは分かっていない。リヴァイアサンの討伐もできていない状況だ。」


「このままじゃダンジョンの異変は収まらないだろうな……」

ミアが険しい表情で呟く。


アルノアはふと、エーミラティスの言葉を思い出した。


(この武器は何かが宿っているが、壊されている。お主なら元に戻せるかもしれん。)


もしかすると、この武器とダンジョンの異変には関連があるのかもしれない――

そう考えながら、アルノアは静かに武器の柄を握り締めた。


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