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sランクパーティ

ギルドの騒ぎを聞きつけ、Sランクパーティ《蒼波の羅針盤》のメンバーが到着した。


その中心にいるのは、ラウドの両親であり、Sランク冒険者の エギル と ミア。


二人がギルドの扉を開けた瞬間——


ズンッ……


空気が一変する。


ギルド内の冒険者たちは、思わず息を呑んだ。


圧倒的な魔力と、長年の戦いの中で培われた経験が、まるで嵐のように周囲に広がる。


アルノアもその圧を感じ取った。


「(……強い)」


魔力の質、練度、隙のなさ——全てが一流。


彼らこそ、Sランクの中でも上位に位置する冒険者たちなのだと、一瞬で理解した。


しかし——


その威圧感はすぐに霧散する。


「あああああ!? うちのバカ息子が何かやらかしたな!? 本当にすみません!!」


「本当に申し訳ありませんでした!!」


驚くことに、エギルとミアはアルノアとシエラの前に立つなり、深々と頭を下げた。


「えっ?」


あまりにも予想外の行動に、ギルド内の冒険者たちもポカンとする。


「私たちの息子が無礼を働いたようで……本当に申し訳ない!!」


「迷惑かけてない? 大丈夫だった?」


先ほどまで圧を放っていた二人とは思えないほどの勢いで、謝罪の言葉を繰り返す。


ミアはシエラの手を握り、涙目になりながら言った。


「あの子、負けず嫌いでプライド高いから……何か失礼なこと言わなかった!? 大丈夫!? 嫌な思いさせてない!?」


シエラは少し戸惑いながらも、淡々と答える。


「ええ……まあ、少し喧嘩腰ではありましたが……」


「やっぱりぃぃ!? ほんっとすみません!!」


一方、エギルはアルノアの肩を掴み、力強く言う。


「いや、本当にありがとう!! ラウドに敗北を教えてくれたんだろう!? あいつ、これまで同年代で敵う相手に出会ったことがなかったからな……!」


「……特に気にしていませんよ」


アルノアは淡々と返したが、エギルの顔はどこか嬉しそうだった。


その様子を見て、ギルドの冒険者たちはますます困惑する。


「え、Sランクパーティのリーダーが、ここまで頭を下げるのか?」

「しかも相手はBランクだぞ……?」

「いや、やっぱりあの白髪の青年、尋常じゃなく強いんじゃ……」


ギルド内に、ざわめきが広がる。


その間、ラウドはというと——


端の方で膝を抱えていた。


「……俺の親、マジで恥ずかしい……」


彼の敗北とは別の意味で、ギルドは騒がしさを増していった。


 ラウドの方へ歩み寄る エギル と ミア の顔には、明らかに怒りの色が浮かんでいた。


「ラウド」


エギルが低い声で名前を呼ぶ。


「……な、なんだよ……」


「迎えに行くって言ったよね? なのに、なんでこんなことになってるの?」


ミアの声には怒りと呆れが混ざっていた。


ラウドは顔をそらしながら、ぼそぼそと答える。


「……あいつらが俺より強いとか言われて、ムカついたから……」


「はぁ!? そんな理由で暴走したっての!?」


バシンッ!


ミアの手刀がラウドの頭を叩く。


「痛っ……!?」


「感情に任せて暴走して! ここの街のみんなに怪我でもさせてたら、アンタ、冒険者やめてもらうところだったわよ!!」


「……っ!」


ラウドは悔しそうに唇を噛んだ。


エギルもため息をつく。


「お前はもう、Sランクパーティの正式な一員なんだ。自己中心的な戦い方で、仲間や周囲を危険にさらしてどうする?」


「……」


「今回のことでよく分かっただろ? お前より強い奴なんて、いくらでもいる。お前はまだまだ未熟なんだ」


ラウドは拳を握りしめ、悔しさを滲ませた表情を浮かべる。


そんな彼に、ミアはビシッと指を突きつけた。


「ほら、アルノアさんに謝って! そして感謝もするのよ!!」


「……え?」


「え? じゃないわよ! アンタ、あの人が魔力で抑えなかったら、このギルドどころか周囲の街区まで火の海になってたかもしれないのよ!? どれだけ迷惑かけたと思ってんの!!」


ミアに怒鳴られ、ラウドは気まずそうにアルノアの方を見る。


アルノアは相変わらず冷静な表情で、ラウドを見返していた。


「……その、悪かった……」


「それだけじゃないわよ! ちゃんと感謝も!」


「……っ! それと、助けてくれて……ありがとう」


ラウドは悔しさを滲ませながらも、しっかりとアルノアに頭を下げた。


その様子を見て、ギルドの冒険者たちはざわつく。


「Sランクパーティのメンバーが頭を下げるなんて……」

「やっぱりあの白髪、相当ヤバいやつなんじゃ……?」


一方、アルノアはその謝罪を淡々と受け止めると、静かに言った。


「別にいい。だが、次はもう少し冷静に判断することをお勧めするよ」


その何気ない一言が、ラウドの胸に深く刺さった。


「……わかってるよ」


ラウドは小さく呟き、悔しさを滲ませながらも、今度こそしっかりと頭を下げた。

 

 ギルドの中で、そのまま顔合わせが始まった。


広いギルドホールの一角、木製の頑丈なテーブルを囲んで向かい合う。


エギルがまず口を開いた。


「さて――正式に挨拶といこうか。俺たちは 蒼波の羅針盤そうはのらしんばん の エギル だ」


「同じく、ミア よ」


エギルの隣で、ミアが笑顔を浮かべながら続ける。


「まあ、知ってるとは思うけど、そこにいるのが私たちの息子、ラウド ね」


ラウドはまだ気まずそうにしていたが、視線をそらしながらも「……ラウドだ」とだけ名乗った。


エギルは気にした様子もなく、改めてアルノアとシエラに視線を向ける。


「君たちは、フレスガドルから俺たちのサポートに来てくれたアルノアとシエラ……で間違いないな?」


アルノアは軽く頷きながら応じる。


「アルノアだ。よろしく頼む」


シエラも静かに言葉を続ける。


「シエラです。お世話になります」


エギルとミアは二人をじっと見つめ、興味深そうに頷いた。


「なるほど……君たちの実力は、さっきの一件でよくわかったよ」


エギルが微笑みながら言う。


「私たち 蒼波の羅針盤 は、基本的に 戦闘メンバー6人 で動いているわ。それ以外のメンバーはサポート向けの人たちね」


ミアが補足するように説明を加える。


「今ここにいるのは私たち3人だけだけど、もう 3人のメインメンバー がいるわ。彼らは今、ダンジョン内で待機してもらっているから、合流したときに改めて紹介するわね」


「そいつらもかなりの実力者だ。君たちとどう噛み合うか、俺たちも楽しみにしている」


エギルの言葉に、アルノアとシエラは静かに頷いた。


こうして、フレスガドルの二人と蒼波の羅針盤の正式な顔合わせが始まったのだった。

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