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ギルドマスター

パーティを組んで初めての依頼。

アルノアとシエラはギルドで提示された依頼の中から、《双頭の猟犬》という魔物の討伐を選んだ。


「Cランクの魔物か……まあ、最初の依頼としてはちょうどいいな」

アルノアが依頼書を眺めながらつぶやく。

双頭の猟犬は、大型の狼のような魔物で、首が二つあるのが特徴だ。獰猛な性格で、連携して襲いかかるため、単独での討伐は危険とされている。


「準備は問題ないか?」

「……問題ない」

シエラは淡々と答える。


二人は討伐対象が現れるとされる森へと足を踏み入れた。


魔物との遭遇


森の奥へ進むにつれ、空気がピリピリと張り詰めていく。

草むらが揺れ、不穏な気配が辺りに広がった。


「来るぞ」


アルノアが低く警告した瞬間、茂みから二つの影が飛び出した。

双頭の猟犬――それも二体。


「数が多いな」

アルノアは大鎌を構え、シエラは精霊魔法の準備を始める。


一体がアルノアに向かって突進し、もう一体がシエラを狙う。

素早い。だが、対応できない速度ではない。


「白雷氷刃!」

アルノアの足元に白い雷と氷の魔力が走る。一気に加速し、迫る猟犬の一体をかわして横から大鎌を振るった。

ズバンッ!

刃が魔物の肩口に食い込むが、致命傷には至らない。


その間に、シエラも動く。

「――氷壁」

手をかざすと、透明な氷の壁がシエラの前に出現し、猟犬の牙を防いだ。

反動で魔物が一瞬ひるむ。


「風の精霊よ、貫け――!」

シエラの周囲に風が渦巻き、槍のような形を成す。

「ウィンドランス!」

放たれた風の槍が一直線に魔物の胸を貫いた。


「ナイス」

アルノアが声をかけながら、もう一体の猟犬を牽制する。

だが、傷ついた猟犬は怒り狂い、二体で連携して襲いかかってきた。


連携の手応え


「シエラ、もう一発頼む」

「わかった」


アルノアが魔物の注意を引きつけ、その間にシエラが詠唱を続ける。

「氷槍――フリーズスピア!」


シエラの放った氷の槍が猟犬の足を貫き、動きを鈍らせる。

その隙を見逃さず、アルノアが跳び上がり、大鎌を振り下ろした。


「はぁっ!」


ズシャァッ!


今度こそ致命傷。

一体目の猟犬が倒れる。


残る一体も、シエラの精霊魔法で動きを封じられ、アルノアの一撃で仕留められた。


「ふぅ……終わったか」

「……うん」


初依頼の手応え


倒した魔物を確認しながら、アルノアはシエラに目を向けた。

「思った以上にやりやすかったな」

「……そう?」

シエラは少し意外そうに首を傾げる。


「俺が前で囮になって、お前が精霊魔法でサポート。連携は悪くなかった」

「……なら、よかった」


 (シエラの魔法……以前より攻撃性能が上がっているな)


アルノアは戦いながらそう感じていた。学園で戦ったときの彼女は、精霊魔法の制御に慎重で、どちらかといえば防御や補助が中心だった。しかし今は違う。氷槍や風の槍など、多彩な攻撃魔法を繰り出し、こちらの動きに合わせて敵の隙を作ってくれる。そのおかげで、戦いやすさが格段に増していた。


(きっと、あの時の精霊の暴走を乗り越えて、成長したんだろうな)


アルノアは僅かに口角を上げ、再び戦いへと集中した。


シエラは静かに頷く。

初めての依頼だったが、その後も互いに違和感なく戦えた。それは、シエラにとっても意外だった。


「帰るか」

「うん」


こうして二人は、初依頼を成功させ、冒険者としての第一歩を踏み出したのだった。


 アルノアとシエラは近場のダンジョンでの討伐依頼をこなしながら経験を積んでいた。一方で、フレスガドルの中央の塔型ダンジョンでは、メインの攻略パーティーがついに49階層を突破し、50階層の攻略が目前に迫っていた。その影響で、他国からも多くの冒険者が集まり、ギルドや街全体が活気づいていた。


塔の深部への挑戦が間近に迫る中、アルノアとシエラもまた、着実に力をつけつつあった。


 アルノアとシエラは、これまでギルドから受けていたモンスター討伐の依頼に加え、小型ダンジョンの踏破にも挑戦することを決めた。ダンジョンには各々ボスモンスターが存在し、それを討伐すればより貴重な戦闘経験が得られる。戦いの勘を養うことはもちろん、今後より難易度の高い依頼を受けるための準備としても適していた。


2人はギルドへ向かい、受付嬢に適したダンジョンがないか相談する。


「すぐに紹介できるダンジョンがあるか確認しますね」


受付嬢が書類をめくっていると、ギルドの奥から静かに歩み寄る人物がいた。長い金髪を持つエルフの女性。彼女は落ち着いた物腰ながらも、ただ者ではない威厳を漂わせていた。その存在感に気づき、アルノアとシエラは自然と視線を向ける。


「あなたがアルノアさんとシエラさんですね」


女性は柔らかい微笑みを浮かべながら、穏やかな声で語りかける。


「私はこのギルドのマスター、アイズと言います」


ギルドマスター。思いがけない存在に、アルノアは少し身構えた。ギルドの長が自ら話しかけてくるのは、何か特別な理由があるのだろうか。


「お二人のことは、以前から聞いています。学園代表戦での活躍、そして先日のランドレウスでの戦い……特に、アルノアさん。あなたの力には、私も興味があります」


アイズは目を細め、じっとアルノアを見つめる。その視線には好奇心と何かを見極めようとする意志が込められていた。


「もしよろしければ、お二人にぜひ試してほしいダンジョンがあります」


受付嬢からの紹介を待つはずだった2人にとって、予想外の展開だった。しかし、ギルドマスター自ら勧めるダンジョンとなると、興味を持たざるを得ない。


「試してほしい、ですか?」


アルノアが問いかけると、アイズは微かに微笑みながら続けた。


「ええ。詳細をお話ししましょう」


その言葉とともに、2人はギルドマスターの案内で奥の部屋へと向かうことになった。

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