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白き戦神の冒険譚 ~改訂版を新しく書いているのでそちらを是非!  作者: ルキノア
ランドレウスでの学園代表戦編
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天使が気付く記憶の違和感

アリシアが前へ出る。


大地の加護による強固な防御を展開し、サーシャの光の刃を次々と受け止めていく。通常なら攻撃と防御を交互に行わなければならないが、今は違う。アリシアは**「守る」ことだけに専念**し、その後ろからアルノアが迷いなく突っ込む。


アルノアはアリシアの守りを完全に信じ、一切の防御を考えずに攻撃だけに集中する。


「行くぞ、アリシア!」


「任せなさい!」


まるで意思を共有しているかのように、2人の動きが完璧に連動する。


アリシアがサーシャの光を受け止めた瞬間、アルノアがその隙を突いて一気に距離を詰める。サーシャの神聖魔法が炸裂するが、アリシアの防御がそれを全て遮断し、アルノアには一切影響を与えない。


その圧倒的な突進力に、ロイが即座に立ちはだかる。


「そう簡単に通すか!!」


炎を纏った拳がアルノアに振り下ろされる。しかし――


ガッ!!


ロイの拳がアルノアの鎌に受け止められる。そのままアルノアが鋭い蹴りを放つと、ロイはわずかに体勢を崩した。


今までのアルノアなら、相手の攻撃も警戒しながら戦わなければならなかった。しかし今は違う。アリシアがいる限り、防御は必要ない。


アルノアは攻撃のみに集中できる!


その違いが、ロイに少しずつダメージを与え始める。


「くっ……!」


ロイが後退しながら態勢を立て直そうとするが、アルノアの攻撃は止まらない。


 ロイの炎が燃え上がる。


アルノアは迷わず踏み込んだ。アリシアの防御がある限り、恐れるものは何もない。


「はあああっ!!」


ロイが拳を振るう。炎が爆発するように広がるが、その瞬間、アリシアが盾となり前に出る。


「ここは通さない!」


大地の加護を纏ったアリシアが炎の衝撃を受け止める。その隙を突き、アルノアは一気に距離を詰めた。


ロイが気づいた時には、すでにアルノアの刃が首元へ届いていた。


「……っ!」


勝負は呆気なく決まるものだった。


ロイは僅かに息を呑み、そして静かに両手を上げる。


「……降参だ。」


アルノアが刃を下ろし、一歩下がる。


これで残るはサーシャとエマのみ。


アリシアとアルノアはお互いに視線を交わす。まだ息が上がるが、ここまで来た。あとは2人を倒せば勝利だ。


 サーシャとエマに動揺が走る。


ロイの敗北――それは単なる一人の脱落ではなかった。ランドレウスのリーダーであり、精神的な支えでもあったロイが倒れたことで、彼女たちの心に一瞬の隙が生まれる。


(今だ――!)


その一瞬を、アルノアは見逃さない。


「行くぞ!」


瞬時に加速し、エマへと突撃する。


「っ……!」


エマは反応が遅れた。驚きと焦りが、普段の冷静な判断を鈍らせていた。


(アルくん……ほんとに強くなったね……)


刹那、彼女は覚悟を決める。しかし――


横切る閃光。


サーシャが咄嗟に間に入る。


「エマ、下がって!」


聖なる光が煌めき、アルノアの一撃を受け止める。しかし、完全には防ぎきれなかった。


「くっ……!」


サーシャの顔が歪む。ダメージは確実に入った。


それでも、彼女は倒れない。エマを守るように前に立ち、アルノアとアリシアを睨みつける。


「……まだ終わりじゃないわよ。」


彼女の背後で、エマもまた息を整え、戦う意志を取り戻しつつあった。


 サーシャの背後に降臨する天使の輝き。純白の翼が広がり、神聖な光が戦場を包む。アルノアとアリシアにとって、これまでにない圧力がのしかかる。


しかし――その光を前にして、アルノアの中で別の力がざわめいた。


「フフ……まさか天使がここまで力を貸すとはのう。」


アルノアの意識の奥底で、エーミラティスが低く笑った。


「確かに天使の力を降臨させてはいるが、まだまだ軽い契約じゃな。」


エーミラティスの声は、どこか愉快そうだった。


「お主、忘れてはおらんじゃろう? 儂らは一心同体となることができる。そして――」


アルノアの身体から銀色の魔力が溢れ始める。天使の神聖な光とは異なる、冷たく鋭い力。


「儂は戦の神じゃよ?天使なんぞには負けん。」


その言葉とともに、エーミラティスのオーラが解き放たれた。


神々しい光と、圧倒的な戦の気配が激しくぶつかり合う。


サーシャの背後にいる天使の表情が一瞬変わる。まるで驚きを感じたかのように――。


「まさか……」


天使の力を受けたサーシャでさえ、その異様な空気に気圧される。


天使の顔に、一瞬の動揺が走った。


「まさか……本当にエーミラティスなのか?」


信じがたいものを目の当たりにしているはずなのに、確かに感じる。その威圧感、その魔力。その存在感。


天界にいるはずの自分ですら、エーミラティスという存在を 架空のもの だと認識させられていた。


かつて天界で交わされた知識の中に、“戦の神” の話があった。

それは伝承か、伝説か、あるいはただの作り話として語られていたものだった。

しかし――


目の前のこの気配は、まぎれもなく “本物” だ。


天使の脳裏に、一瞬だけかつての記憶が蘇る。


確かに、エーミラティスは実在したはずだ。

戦を司り、数多の戦場を駆け抜けた戦神。

だが、その記憶は断片的で、まるで霞のようにぼやけている。


なぜだ?

なぜエーミラティスのことを思い出そうとすると、記憶が霧に包まれるのか?

一体、誰が――いや、何が、エーミラティスという存在を 忘却 させようとしたのか?


天使の視線がアルノアを通してエーミラティスへと向けられる。


エーミラティスは、不敵に笑った。


「……思い出しそうか?」

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