表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白き戦神の冒険譚 ~改訂版を新しく書いているのでそちらを是非!  作者: ルキノア
ランドレウスでの学園代表戦編
55/124

アルノアvsボルタジア

「遅い。」


アルノアの声が響いた瞬間、彼の姿が消えた。


「なっ――!?」


ヴァイスが驚愕する間もなく、白銀の閃光がガルツに襲いかかる。


「ぐぉっ……!」


ガルツは咄嗟に鋼鉄化した腕を前に出し、アルノアの大鎌の一撃を受け止めようとする。しかし――


「斬れるさ。」


アルノアの冷静な声とともに、白銀の刃がガルツの防御を切り裂いた。


「なっ――馬鹿な!!」


ガルツの【鋼鉄の肉体】は、これまで一度も砕かれたことがない。ましてや、炎の魔力を付与したことで強度はさらに増していた。だが、アルノアの一撃は鋼をも断ち切った。


「白銀領域の効果……?」


セラフィナが遠距離から状況を見極め、光の矢を構える。しかし、アルノアは一瞬でガルツの背後を取ると、体を捻るようにしてもう一撃を加えた。


「ぐっ……!」


ガルツの身体が大きく揺らぎ、その巨体がついに膝をつく。


「悪いが、ここまでだ。」


アルノアの魔力が込められた拳が、ガルツの腹部に叩き込まれた。白銀の衝撃波が爆発し、ガルツはそのまま場外へと吹き飛ばされた。


「ガルツ、脱落!!」


実況が叫び、観客席から大きな歓声が上がる。ボルタジアの重戦士がついに倒れた。


「ガルツ……!」


セラフィナが迷わず光の矢を放つ。だが、その一射すらもアルノアは見切っていた。


「その攻撃パターン……もう分かっている。」


アルノアは静かにそう言い、まるで風に乗るかのような滑らかな動きで矢を回避した。


「くっ……!」


セラフィナは続けて数本の矢を放つが、そのどれもがアルノアには届かない。


「なら――」


セラフィナは奥の手を使う決意をする。


「光神の雨 (ルクス・アロウ)!」


無数の光の矢が雨のように降り注ぐ。


「これなら避けられない……!」


しかし――


「本当にそうか?」


アルノアは大鎌を大きく振り、白銀の魔力を全身に纏わせる。


そして――


絶凍雷撃(ぜっとうらいげき)


白銀の雷が天に向かって放たれた。


「――!? これは……!!」


光の矢が触れた瞬間、凍りついて砕け散る。


それはただの雷撃ではない。アルノアの雷に含まれた絶対零度の冷気が、セラフィナの魔法を無力化していく。


「そんな……!」


光の矢が全て砕け散った瞬間、アルノアは既に目の前にいた。


「――終わりだ。」


セラフィナは防御する暇もなく、アルノアの柄による一撃を受け、意識を失って倒れ込んだ。


「セラフィナ、脱落!!」


実況の声が響く。


アルノアは息を整えながら、残る二人――ヴァイスとイグナスを見据えた。


 アルノアの身体を白銀の魔力が包み込む。ガルツとセラフィナを一瞬で戦闘不能に追い込んだものの、まだ戦いは終わっていない。


ヴァイスとイグナスが距離を取り、次の一手を考えている。


「なぁ、エーミラティス。」


アルノアは心の中で語りかけた。


「まだ戦えるか?」


エーミラティスの声が静かに響く。


『当然じゃ。だが、お主の魔力も限界が近い。無駄な動きはできんぞ。』


「分かってる。ここで終わらせる。」


『ふん……その目、よいぞ。まるで神話に出てくる戦士のようじゃ。』


エーミラティスの声には微かな誇りが滲んでいた。


アルノアは静かに目を閉じ、深く息を吸う。そして、ゆっくりと吐き出した瞬間――


「行くぞ。」


再び白銀の輝きがその身を包み込む。


『この戦い……儂が見届けてやる!』


エーミラティスの魔力がアルノアの体に馴染んでいくのを感じる。


次の瞬間、アルノアの姿が消えた。


「っ!?」


ヴァイスが驚く間もなく、白銀の残像が彼の視界を駆け抜ける。


標的は――イグナス!


イグナスはすぐに超高温の炎を操り、自身の周囲に炎の障壁を展開した。


「この熱を突破できるか!?」


しかし、アルノアは止まらない。


『行け、アルノア! その刃で貫け!』


エーミラティスの声が響くと同時に、アルノアの大鎌が白銀の光を帯びた。


「白雷氷刃!!」


白銀の一撃がイグナスの炎を飲み込むように炸裂した。


「なっ……!? 俺の炎が……消える!?」


イグナスの絶対の自信を持っていた炎が、瞬く間に冷気と雷に押しつぶされる。


「ぐぁっ!!」


爆発的な衝撃と共に、イグナスは地面に叩きつけられた。意識が遠のき、動けなくなる。


「イグナス、脱落!!」


実況の声と共に、観客席が大きくどよめいた。


アルノアは肩で息をしながら、最後の一人――ヴァイスへと視線を向ける。


「次は……お前だ。」


エーミラティスもまた、満足げに呟いた。


『さぁ、決着の時じゃ。存分に魅せるがいい、我が契約者よ。』


 ヴァイスは鋭い目つきでアルノアを見据えた。


「まさかここまでやるとはな……だが、俺はまだ倒れない!」


ヴァイスが地面に手をつくと、周囲の重力が急激に変化する。瓦礫が空へと舞い上がり、アルノアの身体もわずかに沈むような感覚に襲われた。


重力牢獄(グラビティ・ケージ)!!」


ヴァイスの重力魔法が発動すると同時に、彼の周囲に炎の魔力が広がる。


炎重撃(フレイム・グラビトン)!!」


超高密度の重力が込められた炎弾が、無数にアルノアへと襲いかかる。重力によって加速したそれらは、通常の炎魔法とは比べ物にならない速度と威力を持っていた。


だが――


「……負けるわけにはいかない!」


アルノアは最後の魔力を振り絞った。


エーミラティスの声が心の中に響く。


『お主の限界が近い……だが、あと一撃、すべてを込めるのじゃ!』


アルノアは力を込め、大鎌を構える。白銀の雷が鎌の刃を包み込む。


「終わらせる……!」


重力の影響を最小限に抑えながら、一気に踏み込む。


ヴァイスが驚愕する。


「この重力の中で動けるのか!?」


アルノアの白銀の魔力がさらに輝きを増し、彼の身体がまるで光となって駆け抜ける。


「――氷雷穿閃(ひょうらいせんせん)!!」


大鎌を振り抜いた瞬間、凍てつく雷の奔流が空間を引き裂き、炎の弾をことごとく相殺する。


「ぐあああっ!!」


ヴァイスの身体が雷撃に包まれ、氷の結晶がその全身に広がる。重力場が崩壊し、地面に激しく叩きつけられる。


――勝負は決した。


ヴァイスの意識が遠のく中、彼は呟く。


「……お前は、強すぎる……」


そうして、ヴァイスも戦闘不能となった。


実況が大きく叫ぶ。


「ヴァイス、脱落!! これでボルタジア、全滅!!」


観客席が割れんばかりの歓声を上げる中、アルノアは膝をつき、荒い息を吐いた。


「……やった……か……」


エーミラティスの声が優しく響く。


『よくやったぞ、アルノア。お主は……本当に強くなった。』


アルノアは空を仰ぎ、そして次の戦場――ロイとアリシアのもとへと視線を向けるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ