アリシアの強さ
ランドレウスのロイたちは、戦況を見極めるために動きを止めていた。
(……ボルタジアの4人がアリシアに仕掛けるか。なら、今は様子を見るべきだな)
そう判断したロイの指示で、サーシャとエマも即座に迎撃を控える。
一方、ボルタジアのイグナス、ヴァイス、ガルツ、セラフィナの4人は、まるで打ち合わせたかのように同時にアリシアへ向かって攻撃を仕掛ける。
先陣を切ったのはガルツ。巨大な戦斧を振りかぶり、地面を砕くような一撃を放つ。
「っ……ふふ、強引ね」
アリシアは岩の柱を瞬時に生み出し、ガルツの斧を受け流す。
ドゴォォン!!
岩が砕け散るが、アリシアはすでに次の動きに移っていた。
「邪魔だ……ッ!」
ヴァイスが重力魔法を発動し、アリシアの足元に圧力をかける。
だが――
「ふふっ、甘いわよ?」
アリシアは舞うようなステップで足元の力場を避け、空中へと跳躍する。
「そこだ!」
イグナスの爆炎の槍がアリシアの上方から襲い掛かる。
「その程度で私を捉えられるかしら?」
アリシアは空中で地面へ向かい、手をかざした。
ゴゴゴゴ……ッ!
瞬時に地面から岩の柱が複数出現し、爆炎の槍を迎撃する。
「チッ……!」
イグナスの攻撃が岩の柱によって相殺されると同時に、セラフィナが光の矢を無数に放つ。
シャアアアアアッ!!!
光の軌跡が鋭くアリシアを追尾する。
「そうね、そろそろ反撃しようかしら」
アリシアは鉱物魔法を発動し、手にダイヤモンドの剣を生み出す。
――金剛剣舞!
ギィィィン!!
彼女が一閃するだけで、光の矢の軌道が弾かれ、弾け飛ぶ。
「っ……!」
セラフィナの目が見開かれる。
「まだまだよ?」
アリシアは再び地面に手をかざす。
すると、今度は地面から無数の鉱石の刃が生まれ、ボルタジアの4人を包囲するように飛び交う。
「――っ、避けろ!」
ヴァイスが仲間に叫ぶが、アリシアの鋭い剣閃がすでに彼らの間を駆け抜けようとしていた。
まるで戦場を舞う女神のように、アリシアは優雅に、そして圧倒的に敵を圧倒していく――。
ギィィィン!!
アリシアのダイヤモンドの剣が輝きを放ち、ボルタジアの4人を包囲する鉱石の刃が次々と襲いかかる。
「くっ……!!」
ヴァイスが重力魔法で押さえつけようとするが、アリシアの魔力の密度が圧倒的に上回っていた。
「これ以上はまずい……!!」
イグナスが爆炎を放つも、アリシアは優雅に身を翻し、攻撃を受け流す。
完全にボルタジアの劣勢だった。
その時――
「そこまでだ、アリシアさん!!」
ドォンッ!
アリシアの目の前に突如蒼炎の刃が飛び込む。
「……ロイ?」
ランドレウスのロイが、サーシャ、エマとともに間に割って入ったのだ。
ボルタジアの4人は一瞬驚いたが、すぐに状況を察する。
「……何のつもりだ?」と、ヴァイスが険しい顔をする。
ロイはアリシアに向き直ると、冷静に言葉を紡いだ。
「アリシアさん、あなたは強すぎる。もしボルタジアをこのまま倒したら、俺たちランドレウスだけではあなたたちフレスガドルに勝てるか分からない。」
アリシアは微かに目を細める。
「つまり、一時的にボルタジアに加勢するってわけ?」
「……ああ。」
ロイの決断は明確だった。
この決勝は三つ巴の戦い。どこかのチームが圧倒的な戦力差を持てば、最終的に残った方が勝つ。
つまり、今ここでボルタジアが敗北すれば、ランドレウスはフレスガドルに勝てなくなる可能性が高い。
「合理的な判断ね。でも――」
アリシアは一歩踏み出し、ロイの目を真っ直ぐ見据えた。
「あなたたち、私の敵に回る覚悟はできているの?」
その言葉に、ロイは迷わず頷く。
「もちろん。その覚悟がなければ、ここには立っていない。」
その瞬間、空気が張り詰める。
ロイ、サーシャ、エマがボルタジア側につき、一時的な共闘体制が成立した。
アリシアは小さく息をつき、微笑を浮かべる。
「……いいわ。じゃあ、その選択が正しかったかどうか、確かめてみなさい。」
「よし、行くぞ!」
ロイが叫ぶと同時に、エマが巨大な風の槍を形成し、ボルタジア側の攻撃に加わった。
「嵐槍!」
バキィィィン!!
鋭い風の槍がアリシアに向かって飛んでいく。
「……なるほど、手を組んだことで攻撃の手数が増したわね。」
アリシアは素早く鉱物魔法で防御を固め、ダイヤモンドの障壁を形成。しかし、そこへすかさずロイの蒼炎の剣撃が迫る。
「豪炎斬!」
ゴォォォ!!
明るい炎の刃がアリシアの障壁に炸裂し、爆風が巻き起こる。
「っ……!」
アリシアは後退するが、すぐに態勢を立て直す。しかし、そこへボルタジアのイグナスが続けざまに炎の弾丸を放つ。
「ここからは俺たちの反撃だ!」
「フレアバレット!」
イグナスの炎弾が次々とアリシアを襲う。
「ふふっ、面白くなってきたじゃない。」
アリシアは岩の柱を瞬時に作り出し、攻撃を受け流しながらも冷静に戦況を分析する。
サーシャの支援――戦場の安定化
「みんな、落ち着いて!」
サーシャが後方から聖魔法の光を放つ。
「セイクリッド・エンハンス!」
その瞬間、ロイとエマ、ボルタジアのメンバーの身体能力が一時的に向上する。
「おおっ、体が軽い!」
ロイが驚きながらも剣を握り直す。
サーシャは水魔法も使い、足場の調整や即時回復を行うことで、ボルタジアとランドレウスの連携をより安定させていた。
一時的な共闘とはいえ、サーシャのサポートによって彼らの戦力は確実に向上していた。
「……随分と手厚いサポートね。でも、それで私を止められるかしら?」
アリシアが静かに呟くと、地面が一気に隆起し、周囲にダイヤモンドの刃が無数に出現する。
「金剛刃舞 (こんごうじんぶ)!」
シュババババッ!!
圧倒的な速さで飛び交う刃がロイたちを襲う!
「くっ……!!」
ロイが剣を構えて防ぎ、サーシャが水の防壁を展開する。
「こんな攻撃、簡単に――!」
エマが言いかけた瞬間、ダイヤモンドの刃が軌道を変えた。
「!? 追尾するの!?」
「甘いわね。」
アリシアが笑みを浮かべながら、一気に間合いを詰める。
「さて、今度は私の番よ?」
「まだそっちの番にはしない!」
ガルツが魔力を纏って走っていた。
「ジ・アイアン」
「領域のような広範囲は無理でも俺の解放は最強の矛であり盾にもなる!」
鋼鉄が具現化し全身を纏う
アリシアの魔法を破壊して回る。
決勝の戦場は、ますます混沌を極めていく!




