動き始める戦況
アルノアの白銀領域、再び
セラフィナの光の矢が雨のように降り注ぐ中、アルノアは 静かに目を閉じる 。
「──白雷氷刃」
ゴオオオオ……！！
白銀の魔力が爆発的に広がる。
ヴァイスの 重力魔法が支配する空間を、白き光が侵食していく。
「……また、これか！」
カイゼルが 黒雷を放つが、白銀の力がそれを凍てつかせていく。
「……甘く見られたもんだな。重力なんて、ただの抑圧でしかない。俺の領域は、その抑圧を凍てつかせる」
アルノアの足が、徐々に軽くなる。
「よし、これなら──！」
アリシアが アルノアの領域の中で、さらに地面へと手をつける。
大地の守護──アリシアの防御
ドンッ！！
「大地の盾！！」
地面が一瞬で隆起し、光の矢を受け止める。
「……ふう、やっぱり厄介ね」
アリシアは重力の影響を受けながらも、 己の魔法で地を制し、完全な防壁を築き上げた。
「アルノア、あなたは早く動きなさい！ こっちまで凍えそうよ。」
「了解」
アルノアの足元の霜が消え、ついに 完全に動きを取り戻す。
ランドレウス側もただ圧されるだけではなかった。
サーシャが即座に行動に移る。彼女の手から発せられるのは《聖水の祝福》。水魔法と聖魔法を掛け合わせた特別な術式であり、味方の身体能力を向上させるだけでなく、状態異常を打ち消す効果も持つ。
「これで少しは動きやすくなるはずよ！」
彼女の魔法を受けたロイたちは、重力の拘束を振りほどき、素早く態勢を立て直す。
「サーシャ、助かった！」
ロイが剣を構えながら前へと踏み込む。カインも雷を纏いながらすぐに続く。ランドレウスの精鋭たちが、再び攻勢へと転じようとしていた。
アルノアとカイゼルの戦いは、まさに決勝戦の中心となるべき激戦となっている。
アルノアの白銀の領域が広がる中、カイゼルの黒雷がそれを打ち砕こうと奔る。黒と白、相反する二つの力が激突し、空間には無数の閃光と冷気が入り乱れていた。
アルノアは大鎌に氷と雷を纏わせ、カイゼルの黒雷の拳を受け止めながら、刃を翻して切り裂こうとする。しかし、カイゼルもそれを読んでおり、素早く後退しながら新たな雷撃を放つ。
「お前の魔法、確かに強いな。でも――」
カイゼルは不敵な笑みを浮かべ、周囲の雷を収束させる。
「俺の雷は、ここからが本番だ！」
黒雷が彼の全身にまとわりつき、まるで闇を纏うかのようにその力を増幅させる。
だが、その時だった。
「アルノア、お前だけを見てる暇はないんだよ！」
突如、横から二つの攻撃が放たれる。
ランドレウスのカインとゼインが同時にアルノアとカイゼルを狙って突撃してきたのだ。
カインの雷の刃がアルノアに向かって振り下ろされる。アルノアは即座にそれを受け止めるが、カインの力強い一撃に大鎌がきしむ。
「お前とは前に戦ったことがあるが、その時とは比べものにならないな……！」
一方で、ゼインは炎の剣を構え、カイゼルへと襲いかかる。
「さすがにお前を自由にさせるわけにはいかないな、カイゼル！」
ゼインの炎雷の剣が黒雷と交差し、火花が散る。
アルノアとカイゼル、そしてカインとゼイン――。
奇しくも雷魔法の使い手が集まって更なるステージへ進む。
決勝戦の分断戦略
アルノアとカイゼルがしのぎを削る中、ボルタジアの他の四人――イグナス、ヴァイス、ガルツ、セラフィナは別の動きを見せていた。
彼らが狙うのは、アリシア。
元々アルノアにはカイゼルが対応する作戦だった。彼らは全員強いが、カイゼルは抜き出て強い。アルノア1人ならカイゼルで十分と皆が思っている。
圧倒的な制圧力を持つ彼女を最優先で無力化する。ボルタジアの戦略は明確だった。
「アリシアを潰すぞ。」
ヴァイスが重力場を局所的に発生させ、アリシアの動きを封じる。さらに、セラフィナが光の矢を放ち、ガルツが接近戦を仕掛ける。
「私を囲むつもり？ ふふ、いいわ。こっちもそのつもりだったし。」
アリシアは余裕の笑みを浮かべると、瞬時に鉱物魔法を発動。ダイヤモンドの防壁を展開し、光の矢を弾きながら、足元の地を隆起させてガルツを押し上げる。
「このまま囲って削るぞ！」
イグナスが炎の波を広げながら、アリシアの逃げ道を潰しにかかる。ヴァイスも重力の圧力を高め、身動きを取りづらくしていた。
しかし――
「甘いわね。」
アリシアは地面に手をつくと、瞬時に強力な鉱物の槍を無数に出現させる。ヴァイスの重力場を逆に利用し、反発力で加速させる形でボルタジアのメンバーへと放つ。
「くっ……！」
ヴァイスが防御に回るが、その瞬間、アリシアはガルツの目の前に出現していた。
「前衛同士、少し遊びましょうか？」
ガルツの大剣と、アリシアの鉱物の剣が激突する。
一方で、ランドレウスのロイ、サーシャ、エマの三人は、アルノアとカイゼルの戦いには加わらず、ボルタジアの動きを警戒していた。
「カインとゼインなら、アルノアとカイゼルの戦いに割って入るには十分な実力がある。私たちはボルタジアの動きを見るべきだね。」
エマが冷静に分析する。
ロイが剣を肩に担ぎながら、アリシアと戦うボルタジアのメンバーを見つめる。
「ボルタジアは、まずアリシアを落としに来た。だが、アリシアがそう簡単に崩されるわけがない。」
サーシャも水の魔力を操りながら、次の一手を考えていた。
「私たちが動くべきタイミングを見極めるわ。」
決勝戦は、刻一刻と戦況が変化しつつあった。
