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白き戦神の冒険譚 ~改訂版を新しく書いているのでそちらを是非!  作者: ルキノア
ランドレウスでの学園代表戦編
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圧倒的な2つの力

激しい魔法の応酬が続く戦場で、アルノアはゼファーとリュネアの連携に警戒を強めていた。


ゴウッ――!!


ゼファーの手から放たれた巨大な炎の竜巻がアルノアへと迫る。赤々と燃え盛る火柱は渦を巻きながら空へと伸び、熱波が会場全体に広がる。


「――リュネア!」


ゼファーの合図とともに、リュネアが炎の竜巻へと生命魔法を注ぎ込んだ。


すると――


炎の竜巻が唸り声を上げ、意志を持ったかのように動き出す。


「なるほど……」


アルノアは低く呟く。生命魔法の本領、それはただ回復するだけではない。生命力を与えることで、無機物をも意志を持つものへと変える力――。


ゼファーが不敵に笑う。


「これで3対1の戦いになるな、アルノア。」


炎の竜巻が、まるで獲物を狙う獣のようにアルノアを包囲する。ゼファーとリュネアは、魔法でその動きを制御しながら、同時にアルノアへ攻撃を仕掛ける。


三方から襲い掛かる猛攻――!


しかし、アルノアは静かに大鎌を構え、口元に微かな笑みを浮かべる。


「……元々1ではないよ。」


その言葉と同時に、アルノアの大鎌が淡い雷光を纏い始める。


「白雷氷刃――!」


轟く雷と凍てつく刃が、一閃!


アルノアの目が白銀に輝く。


その瞬間、意識の奥でエーミラティスの声が響いた。


(……考えるまでもないか。お主ももう分かっていたのだな)


アルノアは心の中で微かに笑う。すでにエーミラティスもこの戦いの流れを理解し、共に戦うことを決めていた。


「お主はもう、大きな負担なしに儂をこの身に顕現させることができる。その上でお主は自我を持ち、魔法を使える……」


エーミラティスの言葉に、アルノアは無意識のうちに強く大鎌を握る。


「これは儂の力でもあるが、間違いなくお主自身の力だ。」


ゼファーとリュネアが息を呑む。アルノアの周囲の空気が明らかに変わっていた。魔力の密度が異様に高まっている――まるで空間そのものが支配されたかのように。


「見せてやろう……この場で、お主の力を。」


アルノアの大鎌がより鋭く、より研ぎ澄まされた雷と氷の刃を纏う。彼の瞳は揺るぎなく、白銀に輝くまま。


「行くぞ。」

 

彼の一閃が、戦場の空気を切り裂いた。


「絶天凍破〈ぜってんとうは〉」


アルノアがその名を口にした瞬間、白銀の魔力が空間を支配し始める。


――かつて黒竜との戦いで、無理やりこの力を解放した時は、代償として意識を手放した。だが今は違う。


アルノアの身体は確かに戦場に立っている。


その魔力はまるで世界そのものを凍結させるかのように、会場全体に広がっていった。


「なっ……!」


ゼファーが驚愕する。彼が生み出した炎の竜巻が、凍りついていく。


竜巻が燃え盛る獣のごとく咆哮しながら渦を巻いていたのは、ほんの一瞬前のこと。だが今、その動きが鈍くなり、熱が奪われ、やがて――


――バリバリバリッ……!


炎の竜巻が氷の竜巻へと変貌する。


「ば、馬鹿な……!」


リュネアの目が見開かれる。彼女の生命魔法によって意思を持ったはずの炎すら、アルノアの魔力に支配される――そんなことがあり得るのか?


――いいや、あり得る。


それが絶天凍破の力。


全てを凍てつかせる、圧倒的な魔力密度。


「さて……これで“三対一”の戦いになる、か?」


アルノアが、ゼファーとリュネアの言葉をそのまま返すように微笑んだ。


「いや……最初から俺は”一”じゃなかったんだけどな。」


雷と氷の力を纏う大鎌が、静かに構え直される。


――次の瞬間、戦場が激しく震えた。


「アルノア! 会場全体を覆うのはやめてよね!? 私まで被害があるでしょ!」


アリシアの声が響く。


アルノアの「絶天凍破」が放つ凍てつく魔力は、戦場全体に拡散し、あらゆるものを凍らせようとしていた。だが、その影響は敵味方問わない。


「……悪い」


アルノアが僅かに魔力の放出を調整しようとするが、それを上回る勢いで、別の白い光が戦場に広がる。


金剛神域こんごうしんいき


アリシアが力を解放した瞬間、ダイヤモンドの鉱石魔法の力を帯びた領域が展開される。


白銀の光が、大地に根付き、まるで神が降臨する聖域のように変貌する。


「やれやれ……これでお互い影響は無し、ってことでいいわね?」


アリシアが剣を構え直し、目の前の敵に鋭い視線を向ける。


彼女の領域魔法により、アリシアの周囲に存在する鉱石は最硬の盾となり、最強の刃となる。


絶対防御の領域と、圧倒的な氷の魔力が支配する戦場。


絶天凍破の冷気と、金剛神域の輝きが会場を包み込む。


二つの領域が交わる戦場。


「ここまで来たら――」


アルノアが大鎌を構える。


「一撃で終わらせるわよ」


アリシアが剣を握り締める。


敵は理解した。 このまま戦えば、勝ち目はない。

だが、それでも抗うしかない。


ゼファーの炎が燃え盛る。

リュネアの生命魔法が大地を揺らす。

仲間たちも、それぞれが全力で立ち向かおうとする。


しかし――


「――“白雷氷刃”」


「――“金剛神断”」


二人の声が重なった瞬間、世界が変わる。


アルノアの大鎌が振るわれ、雷氷の刃が一閃する。

あらゆるものを凍らせ、時間すら止めるような魔力の奔流。


アリシアの剣が煌めき、超硬の閃光が駆け抜ける。

その一撃は全てを断ち、何者にも抗うことを許さない。


――一瞬だった。


敵の魔法が、剣が、炎が、全て打ち砕かれ、凍てつき、終焉を迎える。


そして、静寂。


「……勝負あり!」


審判の声が響き渡る。


絶天と金剛――

二柱の”神”が顕現したような戦いは、ここに幕を閉じた。


 

 

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