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白き戦神の冒険譚 ~改訂版を新しく書いているのでそちらを是非!  作者: ルキノア
ランドレウスでの学園代表戦編
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それぞれの戦い

「なら、そろそろ本気を出そうかな」


アルノアは大鎌を軽く振り、静かに呟いた。先ほどまでの単発の魔法では、確かに相手の防御を崩すには至らなかった。だが、それはただの手探りに過ぎない。


「白雷氷刃」


再び口にした瞬間、大鎌の刃に氷と雷の魔力が凝縮されていく。周囲の温度が一瞬下がり、空気が張り詰める。だが、それだけでは終わらない。


嵐雷閃らんらいせん

 アルノアが新たに考えていた魔法を発動する。


アルノアの足元から風が巻き上がり、雷がその流れに沿って走る。そして、氷の斬撃に雷撃を纏わせ、前方へと一気に放つ。


「来るぞ!」


ゼファーが叫ぶと、すぐに魔法障壁が展開される。しかし、雷の軌道を計算し尽くした斬撃が、障壁の隙間を縫うように突き進む。


「くっ…!」


防御に回った前衛が後退する。


だが――アルノアはすぐに次のターゲットへと目を向けた。


後衛の魔法使い、リュネアとゼファーが詠唱を始めていた。


「このままじゃ撃たれるな……」


アルノアは一瞬考え―― 突っ込むことを選んだ。


大鎌を構え、一直線に相手の後衛へと駆ける。


「させない!」


リュネアが生命魔法を発動させる。彼女の足元から無数のツタが急成長し、アルノアを絡め取ろうとする。


だが――


「雷閃撃」


アルノアの体が一瞬雷と化し、ツタが伸びてくるよりも速く空間を駆け抜けた。雷のスピードを活かした瞬間的な加速。リュネアの制圧が追いつかない。


「しまっ――」


焦るリュネアだったが、ゼファーが間に入る。


炎嵐壁えんらんへき!」


轟音とともに燃え盛る嵐がアルノアの行く手を遮る。風に乗った炎は壁となり、触れるものすべてを焼き尽くす勢いだ。


「なるほど、厄介だね」


アルノアはすぐに大鎌を横薙ぎに振るった。


氷断旋刃ひょうだんせんじん!」


大鎌の刃から放たれた氷の斬撃が炎の壁を真っ二つに切り裂く。その瞬間、アルノアの姿が消え――


「……!?」


次に見えたのは、すでにリュネアの目の前にいるアルノアだった。


「おっと、チェックメイトかな?」


大鎌の刃がリュネアの喉元へと伸びる――その瞬間。


「まだよ!」


リュネアが生命魔法を発動。彼女の周囲の岩が一瞬、まるで意志を持ったかのように動き、アルノアを吹き飛ばそうとする。


「……なるほど、生命魔法ってこういうのもできるのか」


アルノアは驚きながらも、寸前でバックステップ。ギリギリで攻撃を回避する。


「だけど――」


アルノアは大鎌を再び構え、雷を纏わせながら笑みを浮かべた。


「もう逃がさないよ?」


リュネアとゼファーは、ようやくアルノアの”本気”を理解し始めた――


 ――――――――


 アリシアは微笑みながら戦場を見渡し、アルノアの戦いぶりに満足そうに頷いた。


「ほらね? アルノアは強いと言ったでしょ?」


雷と氷を纏った大鎌を自在に操り、相手の後衛を圧倒するアルノア。その姿を見ながら、アリシアは相手の前衛たちに視線を向ける。


「さて……そうしたら、あなた達前衛とは、私も肉弾戦でもしようかしらね?」


静かに足を踏み出すアリシア。しかし、その一歩がまるで大地の意志そのものを操るように、周囲の岩が揺れ、地面がうねる。


「……っ!」


エアリアスの前衛たちが身構える。彼らはすでに理解していた。彼女の魔法は単なる遠距離攻撃ではない。大地そのものを武器とし、肉弾戦すら圧倒する、規格外の力――それが「鉱物魔法」の真髄なのだ。


アリシアは軽く埃を払いながら、微笑を深める。


「ふふっ、せっかくだから楽しみましょう?」


アリシアは地面に軽く手をかざした。すると、大地が脈動し、鉱石の輝きが彼女の手元に集束する。まるで地中から掘り出された宝剣のように、純粋な鉱物から成る剣が形成されていく。


その刃は透き通るような青白い輝きを放ち、まるで神聖な鉱石が鍛え上げられたかのよう。アリシアはその剣を片手で持ち上げ、軽く振る。


「ふふ……あんまり見せたことはないけれど――」


彼女は剣を天に掲げ、微笑みながら前衛の戦士たちを見据えた。


「聖天が魔法だけを極めていると思ったら、大間違いね。」


その言葉に、相手の前衛たちが警戒を強める。


アリシアが足元に魔力を流し込むと、地面が脈動し、突き上げるように隆起する。その瞬間、アリシアの体がまるで弾き出されるように前方へ――。


「――行くわよ。」


地の力を推進力に変え、一気に敵陣へ急接近!


敵の前衛たちが身構える間もなく、アリシアの鉱物剣が光を帯び、優雅な軌跡を描く。


剣が舞う。


ただの力任せの斬撃ではない。まるで風に舞う花弁のように、柔らかく、しかし確実に敵を追い詰める。


「なっ……速い!」


マリクが防御の構えを取るが、アリシアの剣が彼の武器を弾き、瞬く間に隙を突く!


エリオットが援護に入ろうとするが――


ズシンッ!


彼の足元から地の槍が飛び出し、動きを封じる。


「くっ……魔法と剣を同時に……!」


アリシアは優雅に剣を翻しながら、相手を圧倒していく。


「ほら、もっと本気を見せなさい? 私が魔法しか使えないと、まだ思っているの?」


微笑みながら放たれるその言葉が、相手の焦燥感を煽る。


アリシアの戦いは、力強さと優雅さを兼ね備えた、まさに“聖天”の名に相応しいものだった。

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