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白き戦神の冒険譚 ~改訂版を新しく書いているのでそちらを是非!  作者: ルキノア
ランドレウスでの学園代表戦編
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ギルドでの騒動と動き出す闇

ランドレウスの冒険者ギルドの扉が勢いよく開き、ロイたち幼なじみのチームがダンジョンから戻ってきた。疲労感を漂わせながらも全員が無事で、受付カウンターへ向かう。


「ただいま戻りました。これが今回のダンジョン報告書と、回収した素材です。」

ロイが手際よく書類を差し出すと、受付の女性が微笑みながら受け取った。


「お疲れ様です、ロイさん。……それにしても、今日は少し予定が狂って驚きましたよ。」


「予定が狂った?」

ロイが怪訝そうな顔をすると、受付の女性は小声で言葉を続けた。


「アルノアさんが予定より早くギルドにいらっしゃいました。」


「……なんだって?」

ロイの表情が驚きに染まり、他のメンバーたちも動揺を隠せない様子だった。


「アルノアが……ランドレウスに?」

ロイの隣に立つサシャが呟く。その名前を聞いて、全員が驚愕して顔を見合わせた。


 予定より早く到着したアルノア


受付の女性は続けた。

「ええ、フレスガドル代表としていらっしゃったんです。本来なら大会開始直前に来られる予定だったんですが……おそらく準備を早めるために、予定を繰り上げたのではないかと。フレスガドルで正式な冒険者になったようです。」


「フレスガドルの冒険者…!」

ロイが驚きながら復唱する。その言葉を聞いた一同はさらに驚きを隠せなかった。


「……あいつ、あのフレスガドルで冒険者になるほど頑張ったのか。」

カインが感慨深そうに呟く。

カインはランドレウスとフレスガドルの冒険者登録の違いを知っているため努力したことを一番理解していた。


「でも、どうしてギルドに?」

サーシャが不思議そうに尋ねると、受付の女性は書類を整理しながら説明を続けた。


「冒険者証の記録を更新するためですよ。フレスガドルで正式に認められたことをこちらでも反映する必要があるんです。」


「……なるほど。」

ロイが小さく頷いた。しかし、その次の言葉が耳に入った瞬間、彼の表情が一変した。


「それから、ゼイン・ラグナスさんと少し言い争いになっていました。」


「ゼインと?」

ロイの目が鋭く光る。


受付の女性は少し申し訳なさそうに頷いた。

「ゼインさんが、アルノアさんに『聖天アリシアと組んだからここまで来られただけだ』と挑発していたんです。でも、アルノアさんは落ち着いて反論していましたよ。」


「……あいつ、相変わらずだな。」

ロイが苦々しい表情で言った。ゼインの傲慢な性格と挑発的な態度は、学園時代から問題視されていた。


「アルノアは何て答えたの?」

今度はリナが静かに尋ねた。


受付の女性は少し微笑みながら答えた。

「『俺はフレスガドルで努力した』って、しっかり言い返していました。その目は本当に自信に満ちていて、ゼインさんも言葉に詰まっていましたよ。」


 その言葉を聞いた一同は、しばらくの間、沈黙していた。


「……アルノアが戻ってきた。」

ロイがぽつりと呟く。


「しかも、代表として。」

カインが続けた。


「予定より早く来たのは、準備のためか……真面目ですねアルさんは。」

サーシャが小さく笑みを浮かべながら言った。


「けど、すぐに会うのは難しそうだね。」

リナがそう言い、全員が同意するように頷いた。


「きっと、次に顔を合わせるのは大会本番だ。」

ロイが結論づけた。


幼なじみたちは、アルノアと再会するその時を心に思い描きながら、それぞれの胸に期待と緊張を抱いていた。

 


 ランドレウスに集う影


ランドレウスの街は、代表選の熱気と活気に包まれていた。しかし、その裏側には異様な静けさを纏う者たちの存在があった。


ランドレウスの外れにある古びた教会。その中には、黒いマントを纏い、胸元に十字架のネックレスを輝かせた数人の影が集まっていた。彼らは一見すると普通の信徒にも見えるが、その瞳には冷たい光が宿り、周囲の空気を重くしていた。


「予定通り、強者たちが集まりつつある。」

会合の中心に立つ一人が低く呟く。彼は他の者たちよりも重厚なマントを羽織り、その十字架のネックレスには赤い宝石が埋め込まれている。その姿から、彼が破壊神の使徒たちのリーダーであることは明らかだった。


「代表選は各国の精鋭が揃う絶好の場……その力を我々の計画に利用しない手はない。」

「だが、強いものが集まるという事は気をつけるべき相手もいる。とりわけ、あの『聖天アリシア』だ。」

別の使徒が言葉を重ねる。その表情には警戒の色が浮かんでいた。


「心配はいらない。我らの主の力を前にすれば、いかに地の加護を操ろうと抗うことはできん。」

メンバーが自信たっぷりに答えると、他の使徒たちは静かに頷いた。


「では、計画を再確認する。」

リーダーが視線を巡らせながら言葉を続ける。


「この大会は、破壊神の封印を緩めるための儀式を施す絶好の機会だ。各国から集まる強者たちの魔力を吸収し、それを主の力に変える。我らの主が完全に顕現するのも、そう遠くない。」


「しかし、どうやって魔力を集める?」

一人の使徒が疑問を口にする。


「簡単なことだ。大会中に“異変”を起こすのだ。強者たちが戦いを続ける限り、溢れる魔力を吸収する仕掛けを設置しておく。特に注目すべきは……フレスガドル代表の少年、アルノア。」


その名前が出た瞬間、場の空気がわずかに揺らいだ。


「彼は破壊神の力に触れている可能性が高い。その力を利用すれば、我らの計画はさらに進むだろう。」


「だが、彼には戦女神の加護があると言われている。」

「あぁ、恐らく破壊神について気づいているだろう」

別の使徒達が懸念を示すと、リーダーは冷笑を浮かべた。


「だからこそ興味深い。戦女神と破壊神、その両方の力を秘めた存在が現れるならば、我らが主にふさわしい贄となる。」


 会合の最後に、リーダーが静かに手を掲げた。

「ランドレウスに集う全ての強者たちよ。その力は我らが主のために捧げられる運命にある。大会の裏側で、破壊神の復活の道が整うのだ。」


「主の御力を示すため、全ては犠牲となるべき。」

他の使徒たちが口々に唱える。その声は不気味な響きを持ち、教会全体に重々しく反響した。


「バルボリスお前にこの作戦の指揮を任せる。」


「あぁ……最悪の場合直接戦ってでも遂行するさ。」


彼らは密かにランドレウスに潜伏し、計画を着々と進めていた。大会に集う強者たちが、知らぬ間に破壊神の野望の一端を担わされることになる――その危機に、アルノアたちはまだ気づいていない。

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