4.試験
足りない。
力が足りない。
弱い。弱い弱い弱い弱い弱い弱い弱い弱い足りない足りない足りない足りない足りない力力力力力弱い弱い弱い弱い弱い力力チカラチカラヨワイタリナイヨワイチカラツムギチカラマモルタリナイヨワイタリナイヨワイ
◇◇◇◇
「ゲホッ、」
口から血が出た。
まだ足りないのに。紬を守れない。筋力を強化する異能力者に襲われたらどうする?炎を操る能力者に襲われたら?
「ゴホッ」
また、血を吐く。
今はこの体の脆さが憎い。
あぁ、耳鳴りがする。視界もぼやけてきた。またか──
空。顔。紬。
「お兄ちゃん、もうやめてよ。こんなの続けてたら死んじゃうよ?私、死んで欲しくなんてないよ。そんなの、望んでないよ」
涙。
涙がこぼれ落ちる。
──誰が、泣かせた?
僕だ。
──何故?
弱いから。
試験はもう、3日後に迫っていた。
「やっぱりやめようよ。こうまでして試験なんて、やっぱりおかしいよ。」
「いや、やる。」
「何でっ!」
「────」
「私がどれだけ心配してるか、わかってるの!?何で、そうまでするの!おかしいよ!死んじゃうかも、しれないんだよ?」
「──試験は、受ける」
「──っ!なんで!」
「紬の、ため」
「・・・・・・わかんない、わかんないよ。どうしてそうまでするの?」
「守るため」
「・・・・・──。────せめて、今日くらいは休んで」
「それは──」
「いいから休んでって、言ってるでしょ!」
紬は、出て行った。
何でこうなった?なんで?どうして?おかしいおかしいおか──あ、意識が・・・・・・
◇◇◇◇
「う・・・・・・・・」
やけに部屋が暗い。今、何時だ?僕はどれくらい、気を失っていたんだ?
〈17:41〉
大体九時間くらいか。
試験まで、あと3日。もう少し──
頭が痛い。喉が渇いた。
扉を開ける。
「あ・・・・・・」
「紬・・・・・・」
なんか、心なしか目が潤んでいる気が・・・・・・
なんて思っていると、抱きつかれた。
「うおふっ」
「おに、ちゃっ、め、さめたぁ・・・・・・しん、しんじゃったかと、おも・・・・・うぅっ」
「そんな大袈裟な・・・・・・」
「ぐすっ、ひぐっ」
しばらく話は聞けなそうなので、とりあえず座らせて落ち着かせる。
「死んだかと思ったって、僕が寝てる間に何かあったのか?」
「ぐすっ、お兄ちゃ、2日も、起きなくてっ、何回も、『治癒』、使った、のに!」
待て、2日?え?
慌てて日付を確認する。
──まずい、試験明日じゃないか。この遅れを取り戻せるか?
「も、やめて・・・・試験は、もう止めないからぁ・・・・・・」
・・・・・・・・確かに、まだ体は重い。不本意だけど、大人しく休むことにしよう。
◇◇◇◇
「試験会場こちらでーす」
ついに、この日が来た。
昨日は紬がアーンしてくれたから元気100倍、いや万倍だ。すごく体が軽い。軽く飛ぶだけで雲を越えられそうだ。
「じゃあその、頑張って」
「うん、行ってくる」
絶対に、合格しなければ。
◇◇◇◇
「これにて、第一次試験を終了します。お疲れ様でした。二次試験は午後からです。」
何とか、ベストを尽くせたと思う。
それにしても本当によく動けた。立ち幅跳びなんか4m超えてたし。ただ、周りの人も同じくらい飛んでいたと思う。これ、合格できるだろうか?不安になってきた。
「おい、おまえ!おい、おまえのことだよ!お、おま、おい、、、オイコラァ!無視すんなやぁ!」
なんか後ろで叫んでる人がいる。誰だよ、返事してあげろよ。無視するなんて酷い人だな。
振り返る。
「あれ、もしかして僕のこと言ってる?」
「そぉだよ、お前耳悪りぃのか?」
そこにいたのは12,3歳くらいの少年だった。口が悪いなまったく。
「で、僕に何か用が?」
「あぁ。おまえ、どうやってあんな力をつけた?なんかズルでもしてんじゃねぇのか?あぁ?どうなんだよ、オイ」
心外だな。
「ズルなんてしてないよ。真っ当に鍛えた結果さ。」
「あぁ!?テメェ、俺がおまえに劣るって言いてえのかよ?」
「君がそう思うなら、そうなんじゃない?」
自尊心の塊みたいな子だ。
「気にいらねぇなぁ、おい。俺と勝負しろや。負けた方は相手の舎弟になるってぇのでどうだ?」
「やだよ、そんな物騒なこと」
「!うるっせぇぇぇぇぇ」
少年は何故か歯を剥き出して飛びかかってきた。あんま問題は起こしたくないんだけど・・・・・・