3.試験に向けて
──ピンポーン
僕が居間で白蜘蛛と戯れていると、インターホンが鳴った。
「お兄ちゃーん、ちょっと手が離せないからでてー」
ゴロゴロしていたい気分だったけど、可愛い妹の頼みと会っては仕方ない。
「失礼、我々は国家直属異能対策特殊機動部隊第一班だ。こちらに傷を癒すという能力を持つものがいると聞き、スカウトに来た。何か知らないか?」
「あ、えと、国家直属・・・・・・何ですって?」
「国家直属異能対策特殊機動部隊第一班だ。それで、何か知らないか?」
ふむ、何やら国お抱えの特殊部隊らしい。なぜこんな冷静でいられるかと言えば、おそらく話題に上がっているのが紬だからだ。とりあえず一通り情報を整理してみたが、おかしい点がいくつかある。まず、異能力という非日常的な力が発現してまだ数日しか経っていないということ。
「いくら何でも話が早すぎる、と思っているね?」
「っ!・・・・・・まぁ、はい」
「いいだろう、説明してやる」
何でこの人、こんなに偉そうなんだろう
◇◇◇◇
彼に話をまとめるとこうだ。まず、強い異能力を手に入れた人たちが暴れていて、人を襲うこともあったらしい。それを異能で止めた人がいて、助けたのがたまたま大物政治家だったことが全ての始まり。
世界中で多発している異能による被害、それを止めるべく国が動き、ナントカ部隊が結成された。今は対人に特化した警官や自衛隊を派遣しているようだが、しかしそう簡単に止められるはずもない。怪我人も多く出てこのままではまずい。なので、傷を治す力を持った人を片っ端から集めているそうだ。
「勿論働きに応じて給金は出るし、我々も相応の扱いをさせてもらう」
「お兄ちゃん、この人誰?」
「ああ、実はかくかくしかじかでー」
「それで伝わるの漫画の中だけだよ」
ー説明中ー
「なるほどね」
「どうか、我々のために力を貸してくれないだろうか」
「・・・。・・・・・・・・・・・。・・・・・・・・・・・・・・少し、考える時間をあげてください」
「分かった。では数日後にまた伺わせていただこう」
そう言って何とか部隊の人は出ていった。そう言えば名前聞いてないな。
正直あまり気は乗らない。紬はまだ子供だし、何より───
「お兄ちゃん」
「・・・・・・」
「私、やる」
「わかった。けど、僕もついていく。」
「お兄ちゃん・・・・・・」
紬は、この命に変えてでも守らなきゃいけない。
☆☆☆
白蜘蛛の名前を考えたので、今から命名式を行おうと思う。
「と言うわけで、蜘蛛ちゃん。君は今日から『ルミネ』だよ」
白蜘蛛あらためルミネがわちゃわちゃと動く。最近では動き方なんかで喜怒哀楽も少しわかるようになってきたのだ。今のは喜びの意。
名前もつけて立派に家族の一員なので家を作ってあげた。適当な障害物と水入れをいい感じに配置して完成。我ながらいい出来だと思う。が、ルミネには不評だったようで、全身で怒りを表している。
十何回目ようやく満足していただけたらしい。早速糸を張っている。
「あ、お家作ってあげたんだ」
「何度も試行錯誤を重ねた末のこれだよ」
「確かにいい感じ」
ルミネの美的センスは抜群らしい。
☆☆☆
「答えは、決まったかな?」
「はい」
「では、改めてもう一度。我々のために、力を貸してくれ」
「はい。ただ、条件があって、、、」
「僕もいきます」
「・・・・・わかった。しかしその場合、君は一般兵として試験を受けて入ることになるが?」
「それで構いません」
「・・・・・・そうか、では試験の概要を話しておこう。まず、試験は二つあり、一つ目は体力試験だ。異能力が使用可能なところを除けばおおよそ通常のものと変わらない。二つ目は異能力試験。どのようなことができるのかを見せてもらう。試験は4ヶ月後の3日だ。入隊希望書を出しておけよ」
「わかりました」
「では、失礼した」
「ねぇ、本気なの?危なくない?」
「紬を一人にするくらいなら、どんな危険な場所にだって行くよ」
「・・・・」
じゃあ、試験に備えて体を鍛えるとしよう。
◇◇◇◇
「フッ、フッ、」
あれから三週間ほど経った。
僕はこれでもかと自分を追い込み、異能力の応用を組み込んだ動作やパルクールを活用して、それなりに動けるようになった。
ただ、時折空を飛んでいる人を見たりするのでそう言った人たちと戦うことを視野に入れないといけない。最悪そう言った人たちと、紬を守りながら戦うことになるかもしれない。なので、異能力についても色々と試行錯誤している。最近ではよく体を壊してしまうようになったが、紬の『治癒』のおかげで頑張れる。
何か格闘技でも習うべきだろうか。
伝われ、主人公のシスコン具合(とズレた考え方)!