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尻に火がつく


 ──我々を繋ぐ、見えざる運命の糸が存在するのなら、きっとそれこそが我々を絡めとり、この世を複雑たらしめる元凶だろう──


 クラフト・ドランカー 640〜723




 ──七咲西高校──


 ふよふよ、ふわふわ、ほわほわと。ぬるい風の吹く春の校庭。伸び伸びぐいぐい広がる雲は、いくつもの人輪を見下ろしていた。



 その内の1つに、光が当たる──


「──じゃあ、俺から」   

 6人から成る輪の中で、俺は先輩として先陣を切る。



「ヒールっていいます。今日一日、皆さんにこの学校の案内をします」

「好きな食べ物はミカンです。よろしくお願いします」

 形式ばった挨拶を済ませ、隣のダイキに目を配る。



「同じく3年生のダイキです。体から炎を出せますっよろしくお願いします!」

 彼は開いた右手から小火を放ち、ニヤリと笑って見せつける。



「炎!?」「すごー」


「ハハッ、スゴイだろー」

 新入生たちに褒められて、彼奴は照れデレに笑みをこぼす。



 そんなダイキの流れに乗って、


「1年1組のミーキです!体を硬くできます」


「トシキです。指を増やせます」


「1組のカラシャです。僕もダイキ先輩と同じで、炎が出せます!」



「おっ、マジで!?」

 それを聞くとダイキは心底嬉しそうに口角を上げ、カラシャの方へとにじり寄る。



「せーのっ」


  ボオオオ!!!


 ダイキの合図と共に、2人の手から2つの炎が打ち上がる。



「「うおおおお!!!」」


「...」

 俺は肌にチリチリとした熱気を感じつつ、それを横から見守っていた。



 ダイキよ、「上級生らしく真面目な感じで行こうぜ!」と言い出したのはお前だろう!?




 確かに魔法の性質が似た人とは、波長が合うものだと聞くが...



 

 まあ、いい。

 それより、まだ自己紹介してないのが1人...



「ふう──あっ」

 ひとしきり熱が収まったところで、コイツもそれに気がついた。



「ごめん、勝手に盛り上がっちゃって」

 その放置された子に向かって、ダイキは跳ねたトーンで声をかける。



「いえいえ!」

 すると彼女もまた慌ただしく両手を振って、それから手をダラリと下げる。



「1年1組のシラキです」

「...好きな食べ物はリンゴです。よろしくお願いします...」



「うんっ」

 最後の1人が名乗り終えたところで、俺は間も無く皆に背を向ける。



「じゃあ早速、行きましょうか」

 みんなソワソワしているようだから、俺はとっとと校庭から校舎の方へと歩き出した。



 尻の砂を払いたい所だが、ここは先輩として我慢した。

 


 俺ももう、3年生だからなあ。



  ザッ...


   ザッ...



「ちなみにシラキさんの魔法は何なの?」

 歩き始めてからちょっとして、ダイキが彼女にそう尋ねる。



「えっ!」

 彼女は、ギョッとしたように身を縮めた。



「あ、それ気になる!」

 ミーキが好奇に目を輝かせ、シラキにずずいと身を寄せる。



「わっ」


「そういや知らねえな」「ぬおおおお!」ボオオオ!

 トシキとカラシャも彼の魔法を知らないようで、シラキに期待の目を向ける。



「え、え、え...」

 彼女は一度に注目されて戸惑っているようだ。



「...」

 ...突然とはいえ、そんなにギョッとする程の質問だろうか?



 あるいは人に言いづらい魔法だとか、もしくは──



「えーと...」

 彼女はすぐには言葉を続けずに、気まずそうに両目を泳がせる。




「──まだ、わかんないんです」



「!」


 その言葉が生んだ、ほんの僅かな沈黙は、彼女にとっては永遠の...



「...えっ!?」

 ミーキが頓狂な声を上げる。



「まだなの?」「あら〜」ヒュポオ...

 トシキは怪訝な顔になり、カラシャは弱火になった。



「....」



 都会の人は、たいてい小学校を卒業するまでには...遅くとも中学生の内には、自分自身の特別な『魔法』、物理に反するような力へと目覚める。



 高校生になっても魔法を使えない(都会の)人は滅多におらず、周囲からは冷ややかな目線が向けられるそうな。



「ああ...ごめん、嫌な事聞いちゃった?」


「いえ...」


「オレはそういうの全然、気にしないからさ...!」

 真摯にダイキは謝るけれど、班の空気は冷え切っていた。



 炎使いが2人もいるのにな(笑)



 ...さて...シラキは気まずそうに目を俯かせ、周りはその目を覗くことができない。



「...」

 そんな状況の中で俺は今、すごく不快な気分だった。




 すごく、すごく...嫌...


 この空気を温めるためなら、この俺が()()()()()()()()()()──



 ──グワシッ!


「!?」


「ダイキ、悪いことって何さ」

 俺はグワシッ!と強引にダイキの肩を掴む。



「ああ...!?」


「まだ魔法が分からないということは...これからどんなスゴい力にだって、目覚める可能性があるって事だろう」

「俺なんかなあ」


 俺はダイキの肩に触れたまま、意地の悪い笑顔を浮かべる。



「...!」

「おい、まさか──」

 彼は何をされるか気づいたみたいだが...



 残念ながら、もう遅い。



  パッ


 その次の瞬間には、俺とダイキの体は消え去って...服だけがその場に残された。




「「!?」」「え、消えた...!?」

 シラキがビックリの声を上げる。



「後ろ」

 俺の呼びかけに反応し、新入生4人が一斉に振り向いた──




「「──うわあああ!!」」



 そこには、一糸纏わぬ俺とダイキが立っていた!


「ははははは!!!」



 俺の魔法は、俺と俺の触れている()()をテレポートさせる魔法だ!!!



 ───

 ──

 ─



 スタスタスタ...


  ガラリ、ぴしゃ。


 硬い音を立て扉を閉めてすぐ、俺は室内全体を見回す。

 やはり2年のモノよりやや広い...?いや、気のせいか。


 ここは3年1組の教室。この先1年間を過ごす場所だ。



(...俺が一番乗りか)


 どうやら他の人らは、まだ学校案内の途中らしい。ウチの班の子らはみんな優等生でして、テキパキ終わってしまったよ。



「ふうっ」

 網戸からベランダへと渡り、ぼんやりと校庭の方を見やる。



 何も考えず、こうして心地よい春風を受けるのは何とも心が...



 ......アあっ「あっつううう!!??」




 なんだ!?俺の尻が燃えるように熱い!


  ...違う!


 ()()()じゃねえ...燃えてる!!?



「ヒール...お前さあ!!」


「...ダイキ!?」

 あまりの熱さに尻の方を向くと、背後に立つダイキに気がついた。



「なんっでオレまで脱がしやがったああ!!」


 なるほど、ダイキが俺の尻に小火を放っていたのだあッッつい!



「あ〜、ついノリで...」


「ノリい?!」

「ノリでオレは...こ、後輩の前で...!?」

 ダイキは新入生に裸体をさらけ出したことが、どうやら余程堪えたらしい。




 ...ああ、そうか。俺がすっかり慣れてしまっただけで、人は裸を恐れるものだった。



「...おかげでその後、雰囲気マシになっただろう!?」

「止めろよ服焦げそうだから!!」

 俺は必死に身をよじり、自分の功績を主張する。



「...まあ、そうだな」

 すると彼は意外なほど素直に火を止めて、そのままベランダの手すりに寄りかかる。



「あんときは、ちょっちマズったと思ったな」

「ナイスフォローだ」



「...ハッ」


「へッ!」


 ...しばし2人で、何ともなく外を眺める。



 この学校に来てからの1年で、ダイキとはこんな風に喧嘩できるくらいの仲になった。




「...」

 校庭の方を見渡せば...やっぱりあっちらこちらでも、班が列を作って進む。



「オレらの班、マジで早かったんだな」

 それを見て、ダイキも俺と同じ感想を抱く。



「な〜」


「何かレクでもするべきだったか」


「今更いっても.....」


「あっ」

 ダイキが言葉を遮った。



「何?」


「あそこにいるの、リントじゃね──」


「!どこっ」

 俺は勢い目を校庭に走らせる。


 

 俺の恩人、リント・ジャンパー。



「ああ、ほら...あそこん花壇のとこよっ」

 そう言ってダイキが指した所には、確かにリントの率いる班が校舎下の花壇を周っていた。




「──ほら...赤色、黄色、白色。他にも色んなチューリップがあるでしょ〜」

 よくよく耳を傾けると、良く通るリントの声がこちらまで届いてきた。



「これはねえ、この西校生の多様性を表しているんだってさ!」


「へえ〜」

 うんちくを語るリントに対し、新入生であろう子が、さらに隣の新入生に呟く...




「無能も、多様性のうちに入るのかなw」


「おい...w」



「...!?」

 間違いなく新入生であろう奴らが、いきなりリントを弄りだした!!?



(聞こえちゃった...)

 リントの耳にも届いたか、眉の尻毛がだらりと下がっている。



「ガキが...脱がすか...」


「おい、どうしたよ急に」

 窓から身を乗り出す俺を、ダイキがぐ〜いと引き止める。



「聞こえただろう?アイツがリントの悪口をボソッと」


「聞こえるわきゃねえだろ、ボソッとなんか!」


 ...まあ俺も奴らの声を耳で聞いたのでなく、()で唇の動きを捉えただけなのだが──



「──ねえ、聞こえてるから」


「いてっ」


「!?」

 コツン、と粗相をした一年坊を叱ったのは...俺たちの同級生の白雲さやか。



 リントとさやか、そのペアで案内していたようだ。


「ははは...よくやった、さやか」


「お前何様だよ...」




(気にしなくていいよっ)


(うん、ありがとう!)


 サヤカとリントは、おそらく小声でそう言った。




「あの、別にこの人の事言ったわけじゃないんですけどw」

 ...彼奴が、再び口を開いた。



「...ん〜?」

 さやかが呆れ顔で応える。



「そうですよ、無能も多様性の一部か?って議論を〜」「っw」



「リントの方見て、ニヤニヤしながら言ってたのに?」


「してませんって、人の顔にケチつけるんですか?うわ差別だ──」



(......)

 さやかの黒目が右斜め上を指す。どうしたものかという顔だ。



「オレには何も聞こえねえけど...なんか揉めてそうなのは分かるぞ」


「あの新入生2人がナマ言ってリント困らせてんの」


「...へえ」

 ダイキは腕に顎を乗せて見守る。



 

「──まあ、いいよっ!」

 さやかと2人の間のバチバチを散らすように、リントが軽く手を合わせる。

「切り替えて次の所にいこっ」



「...そ」

 さやかは彼女の意思を汲んで引く。



「「...おもんな」」

 生餓鬼2名は、リントの対応を見てつまらなそうに呟く。今度はさやかに聞かれないくらいの声で。


 

「...」

 悪意を浴びせられながらも、彼女はニコリとした顔を崩さない。



 リントが見ていたのはその問題児共ではなく、気まずそうに黙っていたもう2名の新入生だった。


 険悪な空気を間近で吸わされた、彼らを想っての事だろう。



 ──この子たちは何も悪くないのだから、不快な気持ちにさせたくない──



 俺の目でも心の内までは覗けないが、彼女はきっとそう考えているのだろう。



「次は極限教室って所に行くよ」

 そう言ってリントが先達し歩き出す。


  ザッ ザッ


「ひょっとして、もう行ったことあるかな?」

 彼女は良い方の新入生に話しかける。



「...ないです」「私も...」



「そっかあ!何かと便利な所だよっ」

「ええっとね──」


  ザッ

     ザッ

 


「──さやかセンパイ」

 語り出すリントの後方で...悪い方の新入生が、密かにさやかに話しかける。



「......何?」


「センパイも知ってますよね?魔法ランキング」


「いや、知らないけど...」


「うっそ、知らないんすか」「ここの生徒を魔法の凄さでランク付けした表ですよ」



(知らねえよ)


「えホントに知らないって顔じゃん」「めっちゃ出回ってんすよ、しかも毎年更新されてる」



(そういう意味の知らねえじゃねえわ どうでもいいって意味だっつうの)


 怒り呆れも過ぎ去り無視しだしたさやか。

 無言で抜き去り歩いていく。

 


 そうして俺の視界から外れて行った。


「...」

 魔法ランキングねえ。知ってるよ。



 作成者は不明。誰かが勝手に作って流布している、七咲西校生の格付け表。


 下らないと思いながらも、それを見てしまった事がある。


 邪にも気になってしまったのだ。

 自分が他者からどう評価されているのか...



 俺の順位は十分高かった。だけれど問題はそこじゃない。


 リントがその魔法ランキングの、最下層グループに位置付けられていたんだ...



「...行っちまったな」

「トラブルは解決したのか?」

 ダイキが横目で俺を見やる。



「いいや」

「リントが馬鹿にされっぱなしで終わりだよ」



「何を?」


「魔法」


「おおそうか」

 俺の返答を軽く流して、それから彼はこう言い放つ。




「いつも通りだな」




「....ああ」




 ...俺が()()を初めて認知したのは約4ヶ月前、2年生の冬頃だった───


 ───

 ──

 ─


 寒風の冬、体を温める学校行事。

 魔法オーケーのスポーツ大会。


 その練習期間の中、リントの魔法について触れる者がいた。


「これど?」「いやー、リントそこのポジション...は無いでしょ」「ここじゃない?まあ味方のジャマにもなんないし」「めいちゃんの背中に付けて壁にさせるのは?」


 彼らはクラスメイトのポジション取りを決めていた。その場にリントはいなかった。



「俺はリントはここが良いと思う」


「お、尻尾取りのジョーカー!」「尻尾どころじゃないけどなw」「で何?どこがいいって」



 けらけら笑う4名に対して、俺は再び意見と理由を述べる。


「前線だよ。あいつは体捌きが良いから、避けるタイプの防御役にさせ──」



「──ムリムリムリ!」「無茶やろが」「確かに動きは凄いけど、これ魔法アリだから」

()()()()()には務まりませんて」




「...は?」

 



 自分の瞳孔が、急激に細く縮まるのを感じた。



「今なんつった?」


「え知らん?リントの魔法ランキング」「ほぼ最下位だよw」「下位十人は『無能』って事になってんの」



「知らねえよ」


「あマジ、知らんか〜」


「そういう意味じゃねえよ知ったことじゃねえつってんだ!」

 軽口が過ぎた奴らに食ってかかる。



「おこってるー」「こわw」

「表にそう書いてあんだからしゃあなくね?」

「ヒールはむしろ有能側なんだからいいじゃんね」



 俺はその時、あのランキングを見た事を酷く後悔した。こいつらと自分が、いち読者という点で同一視されているように感じたからだ。



「...あんな表に書かれていただけで、好き勝手言っていいとでも?」


「いやランキング関係なく普通にリント無能だよね」


「......」


「無言やめて?こわい」「だってリントの魔法知ってるしょ?」

()()()()()()()()



「知ってるよ...」



 リントと初めて会ったあの日に、彼女に教えてもらったから。

 

 本来見えるはずのない非実的存在である魔素を見る事ができるのだと。



「見えるから何?って話じゃん」「意味無いやん」

「魔素の濃度とか知りたいなら、試験紙でも使えばいいもんね」



「だったら、なんだ」


 それだけでこんな扱いを受けるのか?


 実用的でない魔法なら、道具で代用できるなら、そいつに価値はないというのか?


 魔法がこの世の全てだとでもいうのか?


「...」

 疑問と怒りが溶け合って、出てきたのは短い言葉だった。

 


「...脱がす」


「「え」」


 時計の針が刻むより速く、彼ら全員を裸で校庭に放り出した──

 



「──うっわ!」「のわああ!!!」「さっっっむwww」「お前やば」



「二度とあいつの悪口いうんじゃねえ」

 のたうちまわる奴らに言い放つ。



「マジごめんw」「ネタで言っただけなのに」「もうしないから戻して〜」「それ尻尾取りでもお願いね」



「......?!」


 彼奴等は、笑っていた。


 俺の怒りも意に介さず、ヘラヘラのらりくらりと言を間に受けない...



 俺はその日に初めて知った。

 人間社会では、魔法の差異による差別があるのだと。


 そして彼女がその被害者の1人だと。


「...」

 魔法が全てではないのに、それで他者を蔑もうなんざ下らない...



 

 だけど あのランキングを見ようとした時点で

 

 俺にも少しは それに似た気持ちがあったんじゃないのか?



「......」


 そうして俺はまた少し、自分の事が嫌いになった───


 ─

 ──

 ───



「──いつものことって...いつまで続くんだ」

「どうにかできないのか」

 俺はダイキにそう尋ねる。



「あ〜その手の奴らって、構えば構うほどつけあがるからな」

「オレが何言ってもしてもダメダメさ」



「怒っても脱がしてもな」


「だな」

 彼は手すりを離し重心を戻す。



「オレが見える範囲なら止められはするが...今度は見えないトコでやられるだけだし」

「ずうっとリント見てるワケにもいかねえだろ?」



「場当たりに助けた所で、根本的な解決にはならない訳だ」


「おう」


「...」

 鼻でため息をつく。



「そういう問題は、根っこから焼き切らねえと意味ねんだ」

 風を巻き込み彼の手から火が上る。



「クソだが現実的な話、リント自身が変わるしかねえ」

 巻き上った火が春の空に消える。



「...変わる?」

「どう変われと」

 身を乗り出す俺にダイキが答えた。




「それこそ、アイツがなりたがってる...()()になっちまうとかな!」


「...」

 一発キメて、逆転か。

「それも、大変だな」




 リントは戦士になりたいらしい。


 わざわざ戦時中の中層へ向かい、敵の魔族と戦おうというのだ。


 ...確かダイキも、戦士を目指していると言ってたな。



「...んまあぶっちゃけキツイわな」


「流石に戦争ともなれば、魔法を無視する事はできない」



「ああ...」

 ダイキは背を反り伸びをする。

「ただでさえ魔族つうのは、人より魔力がふた回りぐらい多いのによ」

 


「戦う職業なんだから、お前みたいに戦闘で使える魔法じゃないとな」


「...リントは、2月の入隊試験受けるらしいぜ」

「オレもだけど」



 大学やらの入学試験と並列して、戦士への入隊試験が開かれる。



「あと、もう10ヶ月後か」

「...大丈夫なのか?」

 俺はリントが現在いるであろう、極限教室のある方を見やる。



「ヘッ...オレですらキンチョーしてんだから、あいつはもっと焦ってるだろうよ」

 

「...」

 卒業したって、俺は上層で狩りするだけだから気楽なモンだけど。



 一年に一度の重大な試験、それを控えた者たちの心境は察せられる。


 


 ...それでしか、リントが彼奴等を見返せないというなら...


 受かってほしい... か?



 だが、もし受かってしまったら...リントは戦場で...



「...」


「そう、焦ってる...」

「まさに、尻に火がつく...ってヤツだッ!!」



「...」


「さっきのお前みたいにな(笑)」


「──お前がつけたんだろがっ!!」

(こいつホントに緊張してんのか?!)



 ヒールたちがベランダで組み合っていた時...その廊下を1人の女生徒が通りかがった。


 その胸には『シラキ』と書かれた名札が。



「...ふふっ」


 彼らを見て、こしょりと微笑むと...荷物を運び廊下を渡った。








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