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人族と魔族と、裸族

  ──今日の実験では...これを、こう──


 ──結果は、仮定通りでしたか?


  ──どうしてこの結果になったのか、グループで話し合ってみましょう──



 ──ではここを、こう変えるとどうなるか...今度は予想できますか──


 ───

 ──

 ─



「──ええ皆さん、グループワークお疲れ様でし...た」

 じゃかましいチャイムの鳴った後、イソイソと教室に入り語る教師。おばさん。



 そのおばさん先生は、授業の用意をバタバタと教壇に置いた。


 社会の教師である。


「ええ皆さんお疲れかと思いますが...」

「まあ最後にね、この6時間目だけやりきって終わりましょう、ねっ」


 ...クラス全員、乗り気でない様子だ。イベント後に授業をねじ込んでくるのは、やめよう。



「まあ今日はね、第2章の導入ということで...」

「皆さんもよく知ってる部分から始まるのでね、気楽に聞いてください」


 カリカリカリ...


 そこまで言うと先生は、黒板に大•中•小の3つの円柱を重ねた図を書く。


 

「えーこのようにね、この世界...というか、私たちの暮らす大陸は」

「上層・中層・下層から成る、三層のホールケーキのような構造をしています。ご存知ねっ」


 ご存知。下層から外には、ひたすら海が広がっているのがこの惑星さ。



「あ、もちろんねえ概略図ですよ?あちらこちらにね、山やら川やらもありますから...」


「...こ〜やって書き足すと...ほらっ、イチゴのケーキみたいでしょ?お〜い〜し〜そ〜」


 彼女の緩い語り口で、クラスになごやかな笑いが起こる。




「ハハハ...でーね、層と層ってめちゃくちゃ高さの差があってねー」


「先生見たことないんだけど、境目に行くとーもう底が見えないほどの崖になってるわけ」



(うと...うと...)

 ふと後ろを気にすると、後方窓際の席でダイキが眠気と格闘しているのが見えた。



 俺も眠たいな。


 グループワークなどと言って...本っ当に初対面の奴らと、いきなり話し合いなどさせられたものだから。


 ...実験そのものは、興味深かったんだけど。



「...だからその分、自然環境にも違いが出るわけですが...」

「一番大事な違いが、大気中の()()の濃度ですよね!」


「皆さんが体内で()()に変換してるあの魔素です」



「その魔素の濃度がね、層の下に行くほど濃くなっているんだけどー」

 ガーッと、先生は黒板に描かれた三つの層の下に向かって矢印を引く。



「魔素っていうのがね、これ酸素と同じで、身体に適する濃度じゃないと毒なわけ」


「だから人間は上層、中層では問題なく生活できますけどー」

「下層に行くと『ウッ!濃すぎ!ムリっ』てなっちゃうの」



 ...俺は眠気を抑えるがため首を振り、そのついでにリントの方を見る。


 たぶんリントも眠...はあ真面目に聞いてる!


 教室中央の席でフンフンと、彼女はお堅く授業を受けていた。


 そんなスタンスで臨む授業かな...!?



「...で、魔族は人間とは逆でね...魔族は魔素の濃い方に適応しているので、下層と中層では生きられますがー」

「上層では『ウ、薄すぎ、むりー』となるわけです」



「そのためね...以前は上層で人間が、下層では魔族が暮らし」

「そして中層ではその両方が共生していました」




 



「はい、()()の話ですよっ」

「971年に、まあ今から約30年前ですね...」


「人間への差別問題が発展。人間は中層から追いやられ、人と魔族の対立が深まり戦争へ...」



「ええそして、この不当な差別と戦うため、同じく971年に生まれた職業が!」

「皆さんのよく知る()()ですよね」



 .........


「ああ、やっぱり眠い?ごめんなさいね」



 ......!


 しまった。ほぼ意識を失いかけていた。


「「...」」

 それは他の皆も同じようであった。



「...まあじゃあ今回ね、先生中層の映像資料を用意してきたから、後の時間はそれ見ましょうか」



「「え!」」

 机に突っ伏していた者どもが、一斉に面を上げる。


「「がち!?」」「「見たい!」」



 確かにちょっと興味あるな。もしかしたら、俺の知っている場所も出るかも......いや、ないか。



 別に俺、言うほど中層のこと知らないし──



 ─

 ──

 ───



 ガヤ...

    ガヤ......


「「あー終わったー」」


「「マジ疲れたわ...」」

 ようやく最後の授業が終わり、皆続々と動き出した。



「じゃあね」「ん」

 俺の隣のホシという名の男が、軽い挨拶して教室を去る。彼は図書委員だ。



「ヒール、帰る?」

 リントが共なる下校に俺を誘う。



「ちょっと用事」


「そっか、じゃあね!」


「うん」


 リントも颯爽と出ていった。

 彼女には、きつい門限があるらしい。たまに2人で帰る時も、若干ハイペースになりがちだ。



 ...さて、俺は荷物を置いたまま席を立つ。

 扉の下の出っ張りに気をつけて、部屋を出て白い廊下を歩く。

 

 辺りの話し声や駆ける音は、雑音として耳から弾かれる。

 

 そして廊下を歩いていく。

 コツコツコツ、コツコツコツと。


   コツ...


 ...それにしても、さっきの社会の授業の話。


       コツ...


 ...なにか違和感があった。


 なんだろうか...なにかが頭に引っ掛かって、そのせいで話がよくわからなかった。

 

  コツ...



 ──なお後日、その謎を確かめるため...俺は歴史の本を少し読んだ。


 その結果、違和感の正体には気がついた。


 『魔族』に対する認識の違いだった。

 俺の知らない所で、その意味合いが変わっていたのだ。


 だからあの授業も変に感じたし、リントに「人と魔族の戦争」と言われた時に、少し「...?」となってしまった。

 

 しかし、本当にくだらないモノだから...そんなことより今の話をしよう──



  コツ...


「──あれ、ダイキ」

 廊下を突き当たり、階段を降りようとしたところで。



「おう」

 ダイキが下の階から登ってきたのだ。



「部活に行ったんじゃないのか」


「ああ、そのハズだったんだが...!」

 奴はドドンと段を駆け上がる。


「オレの勘違いだった。今日は部活なかったらしい!」

 ズドンと俺の隣にやって来る。



「そうか」


「──つうわけで、ヒマだ!!」

「お前は帰りか?」



「俺は...」

「この学校を少し、見て回ろうと思ってな」



「おん、()()()()?」


「そんな感じ」


「今更あ?」

「お前転入つっても、ここ来てケッコウ経ってるだろ」

 彼奴が僅かに首をかしげる。



「そうなんだが...」

「実はまだ、教室とか体育館以外には図書室ぐらいしか行ったことがなくてな」



 ふとしたときに、思い出す。


 ──色んな生き方があるって、知ってほしい。

  ──色んな経験をしてほしい。


 俺を導いた彼女の言葉。



 ──テレポートだよ!?

  ──どこでも行けるんだよ!なんだってしたいじゃん!


 弾けるような言霊が頭に響く。

 


「これから過ごす場所のことくらい、ちゃんと知っておこうって」

「そう思った」



「...」

 彼は俺の話を聞いて数瞬、真面目な顔をしていたが...



「...確かに、今更だな」

「新生活に慣れるのでいっぱいで、中々やる気になれなかった」



「──いいやッ今更なんてことはねえぜ!」


「...お前が言い出したんだろ!?」


「ハハッ忘れた!」

 ...すぐにチャケた表情に戻った。

「だったらオレが案内してやろうか!」

 


「大丈夫。校内を巡るぐらい、1人で十分だ」

 誰かに頼る必要もないような事だから、断りを入れた...


 ...筈だった。




「──なら、オレがいれば十二分ってワケだ!!!」

 コイツはそう言って俺の肩を組む。



「...はあ!?」

 

「だろ?」

 そうして暑苦しく顔を寄せる。



「大丈夫だって...ば!」

 俺は組まれた腕を引き剥がす。



「いーだろっヒマなんだからッ」

 彼は剥がされた腕をヒラヒラさせる。


 ト

   ト

      トッ...


 そしてすぐさま身軽に階段を降りる。


         ...ット。


 ダイキは最後まで降ると、にやけ顔だけをこちらに向ける。

 ...着いてこいと?



「...!」

 俺が怪訝な顔を向けていると、そのまま彼は先へ進む。



 ...着いてくるだろって?



「...行くから、待ってよ」

 俺は前傾し足を前に出し、いざ階段を降りようとする。



「おう、追いついてみな!」

 しかし野郎は歩調を強めて距離をとる──



「──なんでだよ!?」

 慌てて駆け降り彼奴を追った...



 かくして、なぜか駆け足で案内が始まった──


  タッ

    タッタッ

         キキイッ...


「──こん中は保健室」

「ガッコで怪我とかしたら来るとこだぜ」



「知ってる。中で授業をサボってる奴がいるんだろ」


「...別にいねえけど、どこ情報?」


「本」


「本か〜」


 タッ

    タッタッ

         キキキイッ...


「──ここが職員室」

「先生がヒマな時なら、質問とかに答えてくれるぜ」



「暇かどうかは、どうすれば分かる?」


「聞けば分かるだろ」


「...確かに」


「ッハ!」


「何だよー!」


 タッタッ

      タッ。


        ザッ...


「──知ってっか、この校舎横の花壇」

「7世代前の校長の自腹らしいぜ」



「7世代というと、何年前だ?」


「あん、30年前とかじゃね」


「へえ」

「知らない花だが、ずいぶん長生きなんだな」



「いやあ...世代毎に、新しいのに植え替えてんじゃねえかな」

「つか、チューリップ知らねえの...?」



 ザッ ザッ

        ザッ...


「──おおダイキ」「何してん?」


「転入生に学校案内す」


「おえーい」「イイ子やんイイ子。じゃ」

 スタコラサッサ...。

 


「......誰?今の」


「部活の先輩」


「そう...」


「あれお前、そういや部活入ってる?」


「入ってない」


「何あるかとか調べた?」


「まだ」


「この学校部活めっちゃあるよ!」

「ビブリオバトル部とかあるからな」



「...何それ!?」



 ザッ ザザザッ...


「──前から思ってたんだけど」

「プール...汚くない?」   



「今はまだ解放されてないからな」

「夏になったら、使えるように掃除されるぜ」



「もうすぐか」


「だな」

「マジな話なんだが...オレ、この陰で男子と女子が()()()()()()()のを見かけたことがあんだよ」



「へえ」


「そーの反応は信じてねえな!マジなんだぞ!?」


「別に疑ってないけど...??」


「???」



 ザザザ...

      ザ...ザッ...ザザッと。


 その後も俺たちは走っては、止まり。新しい事を知ってまた走る。


 そいつを繰り返す。繰り返した。


  

    キキイッ...


 そして──



「──ここが、極限教室」

 ダイキは、幾つもの部屋の並びを指した。



 部屋部屋(へやべや)のそれぞれは、厚い扉で閉じられていた。


「クソ暑い部屋とか、クソ寒い部屋とか...んまあ色々と極端な環境を体験できる」


「へえ、実験に使うのか」


「...んまー実験ちゃあ実験だが」


「?」


「言うんなら、魔法の実験だな」


「魔法か...」



 極限教室とやらが並ぶ廊下を、ダイキは歩き渡りつつ語る。


「魔法ってよお、人によって完全にランダムだろ?」


「ああ...」



 ──親と子で、生まれ持った魔法が違うのが当たり前。

 魔法が、血に全く依存しない──



「...()()()、そうだったな」


「おう」

「んで...自分にどんな魔法が使えるかは、自然には分からない」



「...ああ、なるほど」

「そのための教室か」



「おっ、分かったか」


「強い欲求や衝動に駆られた時、『自分にはそれができる気がする』と...初めて魔法を自覚する」

「それをこの極限環境で誘発する訳だ」



「そ」


「...確かに疑問に思っていた」

「みんな当然のように魔法を使うけど...人じゃない魔族はともかく、人間がそう簡単に魔法を発現させられるのかって」



「...んでもココは発現ってより、よっぽど魔法の拡張に使われるな」

 彼は靴を床で擦り足を止める。



「...そうなのか?」

 行き止まりがもう近いからだ。



「似たような施設なら、別に街中にもあるし」

「ほっとんどのやつはそういうトコで...中学卒業ぐらいには、自分がどんな魔法か大体把握する」



「人間の社会なら、そういう施設はあって然るべきか」


「んそ」

「だからここのは、自分の魔法の方向性はもう理解した上で...更に可能性を広げるために使う」



「無料か?」


「おうともッ」

 ダイキは手のひらを上に向け、小さな炎を浮かばせる。



「おっ」

 ダイキの魔法。体から火を放つ魔法。



「だからオレもここで魔法を鍛えるのさ」

「戦士になるってんなら、こんな炎じゃ物足りねえよな!」

 グッと自分の炎を握りしめて消す。




「...ん」

「お前、戦士になりたいの...?」

 ダイキの言葉尻を捉える。



「おう、言ってなかったか」

 彼がニヤリと片口を上げる。

「オレ、卒業したら戦士になるって決めてんだ」



「マジで?」

「あんな殺し合いがしたいのか」


 俺がそう聞くと彼は眉を吊り下げる。


「別に殺したくてなるワケじゃねえよ」

「オレが戦争を終わらせるんだ!」



「!?」

 一才の恥じらいも見せず、ダイキは元気にそう言い放つ。



「...無茶だ」

「死ぬぞ」



「かもな」


「...もう、30年続いてるって話だろう」

「今更終わるとは思えない」



「まあ、分かんねえな」


「...俺は少し、事情に詳しいから分かる」

 転移で戦場を覗いた事がある。

「お前が行っても、何も変わらない」



「分かんねえけど、そうかもなあ」


「分からないならやめておけよ」

「行く意味ないから...!」



「ッヘエ!心配ごくろう」

 俺のひとしきりの否定にも動じず、彼は堂々として振る舞う。

「だって、分かんねえんだからしゃあねえだろ」



「ええ?」


「意味ないかどうかって、まず行ってみなきゃ何も分かんねえだろ」

「オレはまだ、魔族を直接見た事もねえんだし」



「...そう」

 一理あると思った。



「そう!」

 彼は俺の納得を見て話を転換する。

「...んだからオレは、もっと魔法を鍛えにゃならんのさ」



「例えば、どう鍛えるんだ?」


「オレだったら、ここのクッソ寒い部屋に入って...ホントはもっと強い炎が出せるんじゃねえか?って」

「オレの可能性と相談したりする」

 


「何だったら、火を出すだけがお前の魔法とは限らないしな」

「実は氷も出せたりするんじゃないか?」



「それは試したけど無理だったな」

「でも、できたらカッケーよな〜!」

 彼は顔を仰向けてそう叫び、壁の出っ張りにもたれかかる。



「だな」

「俺は、生物だけじゃなく...それ以外も転移できたらもっと便利だなって」



「ッハ!そりゃ強すぎだ」

「...あ」

 ふとダイキが壁から背を離す。



「そんなヤツ、なんか居た気がするな」


「え、何でも転移できる奴が?」

 俺は目を丸くして尋ねる。



「いや、非生物を転移させる魔法だったような...」

「雑誌で見た気いすんだよ。確か()()()()の──」




 ──ガラガラガラガラ!!!?


 俺がダイキに耳を傾けていた時。

 後ろの扉が勢いよく開かれた。



「んお!ダイキ〜」「おっつ〜」

 スタコラシャッシャ〜...



「おつ!」

 その者たちが出てきた扉には『空腹』と書かれていた。



「...」


 ...彼女らが十分に歩き去るのを待って、俺はようやく口を開く...


「...また、お前の友達?」


「んん、2組の女子だな...名前なんだっけ」

 彼はまた壁に背中をつける。



「...」


「...思い出せねえ(笑)」

 彼奴は半開きで苦笑する。



「...ダイキってさ」


「あん?」

 


 俺はダイキと目を合わせる。


「友達ってか...知り合い?」

「ほんと多いよな」



「...?」

「まあ、そうだな」

 彼は自信を持ってそう答えた。



「...なあ」

 

 一個体が、独力で生きていくのは困難であるが。


 ダイキにはもう、生きていくのに十分な友がいるはずだ。

 十二分とすらいえるのかな。



「お前が俺と仲良くして、何の意味があるんだ」


「...??」

「...は?」

 彼は首を傾げて答える。



「だって俺なんかと関わらなくたって、お前は生きていけるだろ?」



「...お〜」

「おめえどんな生き方してきたら、んな捻くれたコトになっちまうんだ」

 彼は僅かにこちらに歩み寄る。



「変か?」


「えっげえ変なこと言ってるぜ」


「...なら、価値観の違いか」


「そういう問題かね」

 五歩分近づいて立ち止まった。

 


「俺は無意味なことが嫌いだ」

「それをしたって、何の意味も無いからだ」



「...オレとお前がこうして話すのも、んじゃあ無意味だってのかよ?」



「...必要以上に友達を作るのが無意味って事」

「お前は他にも話し相手がいるだろう」



「...?」

 彼の動きが止まる。



「なのにわざわざ、新しい奴と関わろうとして心を疲れさせる──」


「──疲れねえよ!!」


「!?」


 彼の訂正が強く遮った。



 それから彼奴は更に俺に近づいて、距離に見合わぬ声量で話し出す──


「──価値観の違いってんなら、オレの価値観を言わせてもらうぜ!」

「まず無意味なコトが嫌い!」

「それはオレも同じだ!!」



「そうか──」


「──でも友達は!!」

「いればいるほど楽しい!!」



「...ええ?!」


「あと別に!疲れねえから!」

「お前と話してても別に!!!」



「いっ」


「逆におめえは疲れてんのかよ!?」


「そりゃ俺はあんま、人と話した事ねえから...!」


「ああそうか!それはしょうがねえ!!」

 ダイキがまた俺の肩を掴む。


 

「んじゃ少しずつ慣れていきゃいいさ」

 右手で柔く掴んでくる。



 もむもむもむもむ揉んでくる。

「...何コレ」



「お前もオレの肩揉んでみろよ」


「ええ?」

 彼の口と目に促されるまま、俺も右手でダイキを揉み返す。



 もむもむとした時間が流れる。



「...何コレ?」


「なんだろな」

 揉み問答。



「.........これこそ無意味だろう!」

 ぐばっと彼を掴む手を離す。



「ッハハ!そうだな」

 彼は第二指でトントンと肩を叩き、それから手を俺から離す。



「んまあ、とりあえず学校全部見て回ったし」

「終わりにすっか?」



「...そうだな」

 窓から見える、街の影は伸びきっていた。



 

「今日でお前のコトも良く分かったしな!」

 彼奴はいっぱいの口で笑う。



「俺はお前のこと全然わかんないけど...」

 ひょっとするとコイツはリント以上に、意味不明な人間かもしれない。



「...ありがとう、案内」


「ヘエ!どういたしましッて!」



「...」


「へへへ...」



「...」

「...荷物、取りに戻らないと」



「──ああ!忘れてた!」

「オレどこ置いたっけ!?」



「どっかの廊下に放り投げてなかったか?」


「やべえどこだそれ!!?」

 彼は慌てて頭を巡らせる。



「...俺のは教室にあるけど──」


「──よし!探すぞ!!」

 言い終えるや否や、ダイキは走り出す。



「おい待て!!!」

 俺も早歩きで追いかける。



 夕陽の差す校舎の内側を、2人の影が駆け回った... 

 


気に入っていただければ幸いです。

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