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凪の夕浜 その②

 いきなり手を掴まれたと思ったら、たちまちひょんな所まで連れられた。

 そしてヒールは消えてった。


 夕日の差し込む静かな廊下。ここには僕とダインさんだけが...



「ええっと...」

 彼もまた、この状況に困惑している。


「どう...したんでしょうか...?」

 そして怪訝な顔して問いかける。



「いや〜、僕もその...」

 僕もわからないのだ、と...そう言おうかとも思ったが。


「...その」

 考えてもみれば、やるべきことは明白だった。




「──ごめんなさい!」

 僕はダインさんに正対し、あの時にできなかった謝罪をする。



「...ん?」


「自分の都合で、トレスティアさんに危ない事をしてしまって」


「あ〜」

「その事ですか」

 彼の方も、合点が行ったようだ。



「はい...」


「いや、あなたは悪くありませんよ」

「あれはルールの範疇ですし、そもそも現実の話ですらない」



「そうですが...」


「それなのに、勝手に気を立てた私がいけないのです」



「...ですが、あなたの気を害してしまったのが、とても悪く思って」

「...!」

 気を落とす僕の左肩に、姿勢を下げた彼の右手が触れる。




「では、その気持ちは受け取ります」

 彼は緩やかな笑みを浮かべ、しかしすぐにその口を引き締めた。


「その上で私も...すみませんでした」

 コクリ...と、彼の頭が下に振れる。

「許していただけますか?」



「!」

「は、はいっ!」

 勢いで僕がそう答えると、彼の表情は再び柔さを取り戻す。



「よかったです」

「これで落着ですね」



「はい」

「...ありがとうございます」


「いえいえ」

 彼はスッと、僕の肩から手を離す。



「ところで...トレスティアさんの方は...?」


「ん、彼女なら大丈夫です」

「あの事は気にしていないどころか、むしろ感心していたんですよ」



「そうなんですか!?」

 それは良かった...?



 あの人こそは本当に、気軽に会いに行けるような方ではないから。


「ええ...」

 とまで言い、また彼が難しそうな顔をする。

「だからまあホント、私が異常者というか」



「!そんな事ないです!」


「フフッ、そうですか」


「んっ」

 あっさりと、僕の後悔は過ぎ去った。



 肩の荷が1つ、降りたような気がした。肩の右とか左とかでなく、両肩の前の方を重していた荷が。



 しかしアポ無しハダカの訪問でさえ、ここまで丁寧に対応してくれるとは。これが大人というものなのだろうか。


 僕ももう18ではあるけれど、この人を見て自分が大人だとは言えないなあ...



「...あの、ひょっとして」

 姿勢を直した彼が、ふと口をつく。

「私に謝るためだけに、ずっとその...裸で探し回って...?」



「ええっ!?」

「いや裸なのは、その...」


「ヒールさんの魔法ですよね」


「あ、はい」

 どうやらこの人も、ヒールの魔法を知っているみたいだ。



 試合を見たのか、もしくは医務室で話したのか。


「フッ...」


「?」

 僕がはいと返事をすると、彼はなぜだか軽く吹き出した。



 それから目を一段と細めて、

「素敵な友人ですね」



「!」

「そうなんです!」


 こうして謝る機会を得たのも、そのヒールのおかげであるからね。

 後でお礼をしないとねっ。



(.........)


「フフッ」

「大事にしてください」



「はいっ」


「では、また...」

 そう言って彼は、僕を過ぎ去って廊下を渡ろうとする...




 ...けれど、僕の首周りから両の肩...その後ろを未だ重すものがある。


 それを何とかせぬ事には、僕は帰れそうにはなかった──


「──あのっ」

 僕は去り行く彼の背に、すがりつくように呼び止める。



「はい。」

 彼はピタリと足を止め、律儀にこちらへ振り返る。



「その〜...相談したいことがあって」

「少しお時間をいただけませんか?」

 僕は恐る恐る、迷惑も承知で相談を押しかける。



「いいですよ」


「!」

 彼は快くそれを受け入れてくれた。



「いいです...けど」

 けれども彼はそう言うと、僕の体を見回して、

「...寒くはないんですか?」



「えっ」

 言われて、そこで自覚する。



 この真冬の中で、自分が裸であることを!



「...いや、大丈ックシュ!」

 気づいてすぐ、言い逃れのできないくしゃみが出てしまう。



「ああっ、風邪ひいちゃいますよ...」


「いえ、平気です」

 どの道僕の服、ここからじゃ相当遠いからね。それこそヒールに戻してもらわないと...



 ...というかヒールはどこ行ったんだろう。



「せめて...」

 言いかけて、彼は天井を見つめる。


「...せめて、あそこの部屋に行きましょう」

「今は誰もいませんが、暖房はついたままのはず」

 指した先には白い扉があった。




 テクテク...

  テクテク...


   ガラリ、すとっ。


「...よければ」


「!」

 よく見る椅子に腰をかけると、彼が自分の上着を被せてくれた。



「ありがとうございます!暖かい!」


「それはよかった」

 彼は安らいで頬を緩める。



 僕らの頭の上では、まだ新しいとわかるピカピカの蛍光灯が、部屋を白く照らしていた。


 その天井の中心にはアミアミの網状の隙間があって、温風はそこから出ているようだ。


 フワフワな上着に包まれぬくたい風を浴び、こたつの中な感覚で僕は、芯の方から温まってゆく。



「で、相談とは?」

 彼は僕の無事を確認すると、早速本題を振りかける。



 僕は応えて口を開く。

「...実は」

「戦士をやめようかどうかで悩んでいて」



「ええっ!?」

 彼の眉が上に引っ張られる。

「せっかく、ここまで頑張ってきたのに...?」



「...はい」

「その──」

 僕はヒールに語ったことをなぞる。




 ──彼にとっての彼女のように、皆それぞれに大事なものがあると。


 この一件で、僕には他者の夢を壊すのは耐えられないと気づいたこと──



「...」


「──それでダインさんのような方々が、どういう精神して戦士を続けられるのか知りたく」



「...なるほど」

 彼は静かに僕の話を聞ききり、それから悩ましい声で言う。


「私が言い訳がましく言った言葉が、そこまであなたを追い込んでいたとは...」



「い、いえっ!そこは正直、関係ないんですっ」

「問題なのは...」

 僕はそこで口ごもり、白いタイルにうつむく。



「...」

 これもまた新しいみたいで、テカテカと上の光を反射していた。聞き上手な彼の表情と、僕の情けないのが良く写る。




「...僕は、ヒールを無理やり連れているんです」

 それから僕は、ヒールには言えなかった悩みを吐き出した──



「ヒールの方は...ホントは戦士になりたいわけじゃないんです」

「でも僕が強引に頼み込んで、ヒールは仕方なく僕に付き合ってくれているんです」

「僕は大事な親友を、戦士の道に道連れに...」


 今っ更になって、僕は自分がした事のとんでもなさを自覚したのだ。

 卒業後の進路を決めるって、一生に関わる事なのに...



「僕が自分の勝手な都合で...ヒールの夢を壊したんです」


 そう意識してから、ヒールを見た時に...僕はどうしようもない重圧に押された。

 僕に付き添うと決めてくれた君の、とんでもない優しさに潰れた。


 魔族を殺してしまうのがダメだとか、それよりも...何よりこれがダメだった。



 ダメなんだよ...こんなことしちゃ。


(.........)



「ふ〜む」

 独りよがりに話し続けた僕を、彼は静かに受け入れる。



 彼の目線が、白い天井を見つめる。

「...私が思うに」

「ヒールさんは君の、その頼みを受け入れたんでしょう?」



「はい...」


「それなら、彼はもう覚悟しているはずです」

「今更やめると言う方が、むしろ無責任とさえ言えるかも...」



「そうですか...」

 確かに、簡単に取り返せるような話ではない。



 僕のために自分を曲げたヒールを、その決意を無為に帰すような。

 さらにそもそも他を受けていないから、大学を目指すなら浪人である。



「...まあもう1度、彼と話し合ってみるべきですね」

「あとご家族と」



「...はい」

 家族がいないとかいうのは、余計な事だから黙っておく。




 ...僕はどうしてこんな事に、今になってようやく気がついた。


 ヒールが僕に優しいのは、今に始まったことではなく...いつの間にやら僕はその有り難みを、真の意味では忘れていたようだ。



 ──お願い、一緒に戦士になろうよっ──


 そう不安げに誘った僕ではあるが...なんとはなく、ヒールは断らないと期待していた。それがいつものことであるかのように。



 君だって、やりたい事があったはずなのに。



(......)


「...フッ」

 彼はそう、何もない天井をまた見上げて笑う。



「?」

 僕がそれを不思議に見つめると、彼は気づいてこちらに向き直る。



「...私としては、君たちが羨ましい限りです」



「うらやましい...?」

 僕が不思議で聞き返すと、彼はわずかに顔をそらす。



「...」

「今日の最初にあった、トレスティアの試合を見ましたか?」



「見ましたっ」


「その彼女を見て、どう思いました?」

 そのような、また不思議な質問が飛んでくる。



「どうって...」

 あの最初の、サヤカが出ていた試合の事...



 それを思い出そうとすれば必ず、飛び散るサヤカの頭が蘇る。大変ショッキングな場面であった。

 その際に、彼女に感じたことはというと...


「...」

 ずっと彼女の表情は、一切揺れ動くことが無かった。サヤカを殺す瞬間でさえも。



 冷徹...

  

   ...のような表現では、この人を怒らせてしまうだろうか?



「...ぬ、ぬ..ぬ」

 僕は言葉選びに悩み、ぬぬぬと唸る。



「...彼女、ずっと真顔でしたよね」

 それを見かねてか、彼が代わりの言葉をかけてくれる。



「そう...でした」


「まるで感情が無いかのような」

「...しかし、決してそんな事はないんです。彼女は感情を隠しているだけだ」

 ほんの気持ち、彼の語調が強まるのを感じた。



「そうなんですか」


「ええ、彼女は元はあんな感じでは...」

「...いや、()()はそうだったか」

 何か自分の中で、合点がいったかのような事を言う。



「...?」

「トレスティアさんが、どうかしたんですか?」


「...」

 僕がそう尋ねたとき、彼の顔には悲壮のようなものが漂って見えた。



「...少し、彼女の話をしても良いですか?」


「!」

「はいっ聞きたいです」



「ありがとうございます」

 そう言い微笑む彼の目に、なぜだか波が写って見えた。


「...ずいぶん昔のことですが───」



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 私とトレスティアが出会ったのは、中学生の頃でした。

 当時私が通っていた、ノーム南中学校。彼女はそこへの転校生でした。


 転校生って、2パターンありますよね。


 転校してすぐ。好奇で皆が構ってくる内に、うまくクラスに溶け込める子...

 そしてその内を活かせずに、クラスに馴染めずじまいの子...



 彼女は後者の方でした。

 もっとも彼女は初めから、馴染もうともしていなかったのですが。


 彼女は周囲に壁を作るように...いつも1人で机に深く座り、宿題や読書に取り組んでいました。


 その様子はよく覚えています...思えば当時の彼女の肌髪は、今ほど白くはなかった気がします。



 ええ...はい、そうですよ。

『いつも』を知っているのはそう、私が彼女を気になっていたからです。



 常に1人たる彼女には、気高さ孤高が見られましたが...それとは別に、寂しさも確かに見えたのです。



「ねえ」

 私は彼女に尋ねました。



 どうしていつも1人なのか、と。

 ...これは良い質問ではないですね。


 しかしそうした事で分かりました。



「私には別に友達がいるから」

「いらないんだよ、こんなところでは...」



 どうやら彼女は、親の都合での転校で...元の友達と離れ離れになったのが嫌みたいで。

 その名残惜しさが悪さして、ずっとこんな調子な訳でした。



「どうせ皆、私を異物か何かと思っているよ」

「...別にそれでい〜し」

 けれどもそんな生活に、やはり寂しさは募っていた様子。



 失った過去に引きずられ、本来の自分を出せずにいる。それが私には、とても勿体無いことに感じました。



 そんな彼女の事を勝手に思い...私はクラスの子たちに呼びかけて、積極的に彼女と関わりに行きました。

 やはりこちらの方から押し入らなければ、どうしようもないと思ったのです。



 結果として、それは上手くいきました。


 彼女の事情を知った私たちの、あまりにも強引なアプローチによって...少しずつ、彼女は心を開いて行った。


 ...別に私たちは、彼女を異物だなんて思ってなくて...ただ彼女が、一方的に壁を作っていただけなのです。


 そんな強固な壁も、やがて崩れた。

 彼女はとうとう、柔らかい表情を取り戻したんです。



 それから私たちは、特別に仲良くなりました。


 一緒に映画を観に行ったり...ああそうですね、『カン・ガルー』。当時人気の映画でした。もちろんそこにも行きましたよ。



 また私たちは、よく近場の海辺に行きました。


 靴越しに伝わる、さらさらとした砂浜の心地に...自由を感じる海の匂い。打ち上がる知らない魚たち、ちょっと食べたくなる緑の海藻...

 あと浜のどこかには、宝が眠っているとも信じていましたね...


 海の持つ、多彩な要素が、そのどれも...2人の子供心に的中でした。



 そんな海辺で、何か面白いものを見つけた時...彼女は私の手をひき、言うのです。

「行こっ」


 そういうときの、えくぼがね...ピクピク動いてるんですよ。彼女は本来、もっと小さく笑うタイプですから。


 自然に生まれた笑顔でない...私を喜ばせるために見せる、その不器用な笑顔が好きでした。




 そんな私たちを、ある日災害が襲いました。

 学校帰りの寄り道に、浜辺で少し安らいでいたときです。


 私とトレスティアや、その場にいた他の人たちも、皆が同時に死を確信しました...


 大きな波が、凄まじい速度で向かってきたのです。

 原因は、海底火山の噴火だそうです。



 ...彼女の方が、海辺に近かった。けれども彼女は波を見て、ひたすら立ち尽くしていた。



「ティア...!」

 恐怖で体が動かないのだろうと、そう思って私は、彼女に向かって走りました。



 ...近づくと、彼女はおかしなことを呟いていた。


「...できる」

「気がする...多分」



「...?」

 私は少し戸惑いましたが、


「...ティア!」

 アレから逃げられるとも思ってはいませんでしたが、少しでもここから離れようと、彼女の手を掴もうとしたんです。




 ──掴んだ手は、弾かれました。


 何か不可思議な力で...私の手が彼女から離れたのです。


「...!?」

 驚く私と、町の方に走る人達を尻目に...彼女はゆっくりと波打ち際まで歩きました。巨大な波は、もうすぐそこまで来ていました。



 私より先に、彼女が波に呑まれるのが見えた。


 すると、あの背の高い波は...見えない壁にぶつかったかのように、反転して遠くへ去っていきました。


 すべてです。

 彼女の周りだけでなく、浜一列の波すべてが。


 私は目の前で起きた事に圧倒されたが...彼女には、一切の怪我は見られなかった。



 彼女はするりと私に振り返り、

「できた」

 とだけ言って、左の指を2本立て見せてきました...



 彼女の魔法、『反射』の発現です。



 かくして彼女は、町を救った英雄となりました。彼女の人気は止めどなく、常の人だかりによって(物理的に)近寄り難い存在となりました。



 そんな訳なので、戦士の勧誘も来たのです。

「危ないよ、さすがに...」

 私はそう言って、彼女を引き止めようとしたけれど、



「でも、こんな魔法を持ったからには...」

「それが私の使命だと思う」


 力あるものの、義務であると...彼女はそれを引き受けました。私はただ、それに付いていくしかなかった。


 幸いなことに、私の魔法も役立つモノでしたから...



 しかし、ねえ。


 彼女は少し、上の世界に行き過ぎました。

 地位のようなものが上がっていくほどに、どうやらこの世の悪い部分も見えてしまうようで。


 それは戦士の役目か?となるような、黒い依頼まで強制されるようになったのです。


 しかし彼女自身が、黒く染まることはありませんでした。そうしたものまで、すべて跳ね除けてしまうように...



 ...けれども。


 魔族の返り血を浴びる度...仲間の傷を見る度に...少しずつ、何かが彼女の心に溜まってゆくようだった。


「...私には、傷がないんだな」


「流石です」


「...」

「私だけが...」



「...」


 綺麗事の有り得ない戦場で、彼女だけが純白であり続けた。それは我々からすれば、希望の象徴のようなものであったが。


 しかし、少し...少しずつ。

 彼女の顔からは、少しずつ...表情が失われていきました。


 また再び...彼女は周囲に壁を作るようになったんです...



 そうして...彼女の柔らかかった口角が、水平線に重なって見える頃...とうとう彼女は、ノームの代表とまでなりました。



 私にはもう、とても手なんて届かない。

 いや恐らくは、あの日手を弾かれたときから、ずっと───



 ―――――――――――――――


「...ああ、そうです」

「私があなたにした事は、ひどい八つ当たりだったんです」

「彼女のそばにいながらも、何もできなかった私の不甲斐なさが...」



「....」


「実際は私なんていなくても...彼女はどうとでもなってしまうのにね...」


「そんなこと...!」

「...ないですよ」

 僕は気の落ちた表情で彼を慰めようとする。



「フフ...ありがとう」

 彼は哀しそうに微笑んだ。



(....)


「リントさん」


「はいっ」


「...私がどういう精神で戦士をしているか、でしたよね」


「は、はい」


「私はね」

「彼女を救うために戦っているんですよ」



「え」


「おかしいと思うでしょう」

「自分から私が必要ないと言っておいて、矛盾しているじゃないか...と」



「いや...」


「それでも私はね、この戦争を終わらせて...いつか彼女の笑顔が戻ると信じてね...」

「酷い話が、魔族の事情も考えちゃいませんし...お国の為に、の精神もありません」



「...」


「ただ彼女のためなら、私はこの環境でも続けられるんです」


「そうなんですか...」


「ええ」

「...リントさん」



「はいっ」


「あなたが夢を追うのなら...誰かとの衝突は避けられません」

「これは何も、戦争に限った話じゃないでしょう?」



「はい...」


「あなたがそれで相手に、道を譲るならいいですが」

「...あなたにも、譲れないものがあるはずです」



「!」


「他の誰を、何を犠牲にしても...それだけは貫き通すのです」

 そう言って、彼はまた天井を見上げる。



「...おそらくは、ヒールさんにとっての『それ』が、『あなた』なのではないでしょうか」


「え...?」


「フフフ...」

 彼はキョトンとする僕を見て笑い、また優しい声で告げる───




 ───私は、願っていますよ。君たちの友情が、今と変わらぬままであり続けることを───




(.....)

(...やっぱこれ俺、バレてんの?)

(1個上の階から、盗み聞きしてんの...)

(いやしかし、なぜバレる...?)




  ザー...

   ザザーンッ...


 ヒールの孤島に打ち寄せる波を、僕ら2人で静かに眺めていた。

 いつもより、格段に大人しい波だった。


 水平線に入りかける夕日が、海をオレンジジュースさながらに変えていた。


「ねえ、ヒール」

 隣のヒールに向いて、僕は呼びかける。



「なに?」


「ヒールはさ、もし戦争が終わったら...何がしたいとか、ある?」


「...なるほどね」

「うーむ...」

 ヒールは少し考え込むそぶりを見せたが、


「俺は...島で一生ゴロゴロしてたいな」

 ...だなんてことを、真面目な顔で言い放った。



「なにそれ〜」 


「ええ?悪いか!?」


「ん〜ん」

「すごく良いと思う!」



「あら、そうw」


「うんっ...」

「だからさ...一刻も早く、この戦争を終わらせよう」



「...そうだなっ」


「...ヒール」


「なに?」

 僕とヒールの目と目が合う。




「ありがとね」

「一緒に付いてきてくれて」



「...ッハ!」

「何さ!今更!!」



「えへっ...」



 ありがとう、ヒール。

 僕の方の覚悟は、ようやく君に追い付いた気がするよ。


 2人で必ず、故郷に帰るんだ───




『リント・ジャンパー』

『ヒール・オーラント』


 共に合格





気に入ってもらえたら幸いです。よければ高評価、感想、いいね、ブックマークなど、いっぱいもらえると嬉しいです!

 ...無事にヒールたちの受験が終わったところで、私も受験が近いので執筆を止めます。上手くいけば、来年の春頃に再開できるでしょう。

 ただ最後に少し、オマケとエピローグが続きます。それで一旦の区切りとします。

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