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純白のバラ

「...本物の戦士との、殺し合いなんて...!」

 改めて言葉にしてみると、恐ろしいったらありゃしない。



 ...他の人たちは、どうなのだろう、と思った。

 そうして見渡すと、観覧席は等間隔に人で埋まっている。どうやら受験生は出揃ったようだ。

 その表情は様々で...不安に満ちる者、覚悟を決めた者、あえてニヤけて見せる者...


 そんな中でも、際立つ顔ぶれがある。

 俺から見て、右手奥の空間。そこに座す連中は、至って平常心なようで...むしろくつろいだ様子ですらあった。


 間違いない...彼らが戦士だ。これから死合をする相手。


 誰しもが、頭の中では華麗に立ち回り、悪党だって倒してみたものだろう。

 けど彼らはそもそも、悪党じゃないし...そして俺らのそんな妄想を、マジにやりやがった人たちだ。


 そんな偉大な方々が、イタイ妄想なんかしちゃってる俺たちに現実を教えてくれるそうな。まったく、理想と現実の違いってやつを、痛いほど理解らされんだろなっ!


 ...よし、良い感じにムカついてきたぞ。我ながら可愛らしい抵抗であるが、怒りで緊張をかき消すのだ。

 彼らは、なんにも悪くないのだが...今日だけは『外敵』と見なさせてもらう──


「ねえ、ヒール...」


「──殺すっ!」


「ええっ!?」

 おっかなびっくり。リントがお目目をまあるくさせる。



「あ、ごめん...何?」


「え、ええっと...」

「そろそろ...始まるよね」

 そう囁くリントの目線は、舞台脇...闘技者らの入場口に注がれていた。



「...そうだなっ」

「しかし、大丈夫かね...サヤカ」


「うん...」


 幸か、不幸か...サヤカの受験番号は、1番。最初の闘技者だ。


 いや... 既に判明した対戦相手を考えれば、間違いなく不幸と言える。



 キイイイイン...!


「「!!」」

 聞き慣れた、放送機器の異音。

 ...来る。


『受験生は、席に座ってください』

 四方のスピーカーから、無機質な声が会場に響く。



 ざわつく観覧席は、一瞬にして静けさを得た。

 衆目は、自然と舞台に寄せられる。円形に縁取られた舞台の上に、冬空の光線が降りそそぐ。


『舞台に上がってください』


 機械的な案内の少し後...対向した2つの入場口の奥で、何かが蠢き出した。


 やがてその陰から、2つの影が姿を現す...


 ザッ...!


「!」

 1人は、サヤカ。妙な責任を感じる一番手であろうに、彼女は悠然と舞台に進む。



 また手のひらで、軽く口を抑えては...アイツ、ニヤけてやがるな。

 まあ確かに、あいつの大好きな非日常とやらではあるが...分かってるはずだろ?お前の対戦相手は──




「──ひゅうっ」

 まったく。こんな経験、一生もんだろうなあ...!



 私はなんとか、昂る心を抑えようと試みる。

 ...しっかし、すっっごい。みーんなこっち見てんね。期待してんのか?


 いや、心配してんのか。ま〜そうだろうな。何せ、私の相手は...


 カッ...!


 ...来たよ。

 誇示するような硬い足音を鳴らし、彼女が舞台に上がる。私を含め、ここにある全ての目が、その一点に向けられる。


 ...白、だった。

 髪も、肌も、服装も。


 荒んだ石の舞台には、あまりにも不釣り合いな清廉が。

 純白の薔薇に、淡白な装飾を施したような姿で...そう、薔薇のように美しく、だが棘のある鋭い目つきで、私を見据えていた。


 こっっっわ〜。私のこと、マジで殺す気じゃねえか。


【トレスティア・ローズ】...ノームを代表する、異論なき最強の戦士。

 対戦表を見たときゃ、びっくりしたよ。まさか私が、その怪物とやることになるとはね〜。 


 ...でもさ。


『夢に入ります』

 プシュー!


「!」

 音声とほぼ同時に、試験場全体に白い煙が巻き立つ。

 しばしの後、それはすぐに晴れる。


 もう、私ら全員、夢の中ってわけね。ちょっとドキドキしてきた...

 ...ふと地面に写る、見覚えのない影が気になり、上を見上げてみると...


 空中に固定された立方体から、モニターが飛び出していた。あんなの、さっきまでなかった...やっぱ夢ね。その画面には、2つの揺れ動く波が映っている。


 ...なるほど、私らの脳波かな?勝敗は場外負けか、片方の死亡で決まるから、それで判断しようってわけだ。


 ゆらゆらと、画面のそれは不規則な波形を描く。私の体のことなのに、私には全く制御できない。むしろ、どうにかしようとするほどに、よりランダム性を増すような...


 嫌だね〜、何か...自分を丸裸にされてるようで。



『準備は、よろしいですか』


「...」

 私は静かに頷く。奴さんも目線で完了を示す。



 ...でもさ。

 あんた、有名すぎるから...私、知ってるんだよ?


『それでは』



 あんたの魔法、【あらゆる攻撃を反射する】...!


 ...そう、知ってるよ。向こうは私を知らないから、情報アドバンテージはこちらにある!



 ...で、じゃあどうすりゃいいの?

 いや...はあ?だって無敵じゃん...どうすん──


『はじめ』


 ──始まっちまったよ!クソッ!


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