波乱の幕開け
──誰かが人生を、波に例えた。
揺れ動く波のように、浮いては沈む。不運があれば、幸運もまた、訪れる。
その繰り返しこそが、人生であると。
言いたいことは伝わるし、もっともなことだと思われる。
けれど...それは少し、不適切な例えだとも思うんだ──
優しく、薄く差すような、朝の光を身に浴びた。今朝の吐息は、まだ白かった。
...花開くには、まだ早い。
「はあ...」
隣で歩くリントが、静かなため息をつく。
「ん、緊張してる?」
俺は煽るように、口角を上げて尋ねる。
「...いやっ、遊んでただけ!」
「今日も息が白いな〜って!」
「っは!やるよな〜それ...」
う〜ん、俺は緊張してるんだけどな?
年は明け...ついに始まった、入隊試験。
一次試験においては、単純な学力と体力のテスト。これに関しては...順当に戦士科のカリキュラムをやり通せれば、まあ行けるだろう。
この一次試験の時点で、合格か不合格かは、もう決まっている。
そして今日は、二次試験の日だ。
...え?
合否が決まったのに、なぜ二次試験があるかって?
...それがこの国、ノームの恐ろしいとこさ。
ここからが、本番なんだよ...!
「ああ...」
コツン、コツンと、俺たちは凍てついた歩道を歩み...
...ついに、目的の場所へとたどり着く。
「この中か〜」
リントは巨大な会場を、はるかに見上げて立ち止まる。
「あそこっぽいね、入口っ」
俺は他の受験者たちが続々と入っていく、大きな扉を見つける。
そこに見えるのは、何も俺たちの同年代だけじゃない。
最低限が、高校卒業後の年齢ってだけで、それ以上の...大人らしい人も多く見える。
受験とは、受験者同士の戦いと言うが...今日に限っては、そうでもない。
タン...
タン...
「ふうっ」
俺たちは試験場へと入り、事前に指定された席へと座る。俺とリントは、連番だった。
ダイキやサヤカたちも、この広い会場のどこかにいるのだろう。
「天井、空いてるんだね〜」
リントはなおも、開けた空を見上げている。
ま〜この時期に、下を見るのは縁起悪いしな。
「見ろよ、リント」
「ん?」
「あの舞台...すっげ〜荒れてるぜ」
俺たちが試験を行う舞台は、ずいぶんと乱雑なご様子だった。
「ほんとだ〜」
「実戦を意識してるのかなっ」
「いやあ、管理がダルいだけでしょ〜」
...実戦の意識か。
舞台は単なる平坦でなく、所々にヒビがある。
軽い傾斜も生えており、また岩がゴロンと、遮蔽のように置かれていた。
この試験会場は、かつてのコロッセウムをそのまま転用したものらしい。
まあ結局、やることの本質は変わらない...どころか、もっと残酷になったわけだが。
「あっヒール!」
「あそことか、あそこ...の花が、アレじゃない?」
そう言ってリントは、観覧席や舞台の外に見える、強い紫の花を指す。
「あ〜あれで、俺たちイカレちまうわけねっ」
「ちょっと、言い方〜」
あの気色悪い花の名前は、夢見花。そいつから噴出される煙を吸うと、夢を見るんだ。
ただし、ただの夢ではない。煙を同時に吸った者たちは、皆が1つの夢を共有するのだ。
夢と言えば聞こえがいいが...要するに集団幻覚だ。
また、夢と言うには余りにも、五感も意識もハッキリするし...痛みまでもが、繊細に...
...そう。これから始まるのは...
「...やっぱ、緊張するねっ」
「へっ...俺もっ」
俺たちは向かい合い、これからつくことになる傷を、あらかじめ舐めあうようにほほえみ合った。
「ビビるよな...」
「...本物の戦士との、殺し合いなんて...!」
──波の性質といえば、もう1つ。
互いに逆行する、2つの波。それらがぶつかり合ったとき...波は重なり、大きく揺らぐ。
『波の衝突』...しかしそれは、ほんの一瞬のこと。
2つはすぐに分かれ、元の波形を取り戻し...何事もなかったかのように過ぎ去っていく。
人生とは、そんなものだろうか?
人生における衝突って...もっとねちっこく、後を引くものだと、思うんだ──
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