Santa's physics 発展編
簡単のため、魔族のセリフを『 』で表記しています。
「──魔力が貯まった...!」
「ホントッ!?」
サヤカが早口で聞き返す。
「ああ...」
「俺なら、アイツとの距離を引き離せる...!」
正確には、アイツを島に閉じ込める。
そうしてしまえば、あとはやりたい放題さ!
「ヒールが戻る分の魔力も...あるよね!?」
助手席のリントも、荷台の俺に向かって問いかける。
「ああ...いくぞ!!」
「やっちまえッ!!」
パッ
俺はまず、魔族の目の前にテレポートする。
『...!!?』
奴の瞳孔がかっ開く。
驚くのも当然だ。
いきなり裸のガキが眼前に現れたんだから...
だが...これで決まりだッ!!
俺は蜘蛛のようなその産毛の生えた背中に触れ...
再びテレポートを...
「.........」
「......あれ?」
『・・・・・?』
ブオンッ...
ゴ
シャ
アアンッ!!!
「ヒールッ!!?」
「オイオイ......!」
「...ヒール、てめぇ!」
「──フッツーに振り落とされてんじゃねぇかあああ!!!!!」
ゴオオオオオッッ!!!
な...んで......
転移が...通用しない......?
ビ
ビ
ビビンッ...
ド...ヒュンッ!
マズイ、行っちまう...早く...立ち上がらないと...
地面に強く、頭を打ち付けて...血が、出てるのか...?
揺らぐ...まどろむ...意識の中...
少し...ほんの一瞬...俺は...気を失った...ような気がした──
―
――
「エーと、ねぇ...」
「...完全に、余談なんですけどね...?」
...サンタ先生......?
「いや〜、何というか...」
これは...走馬灯...なの、か?
...いつの授業だろう......
「その〜ね、自分から禁止!とか言っといてなんですけど〜」
「ちょっと一瞬だけね、魔素関連の話させてね」
.........
「イヤ本当、ホントに余談なんだけどね!?」
「ちょっとマ〜あの...」
「...ッ!!」
ガタッ!!
「長えんだよッ!!前置きがァッ!!!」
「──ハッ!!」
ここで俺は、正気を取り戻した。
なんだよ今の...何の役にも立たねえ...!
「...!」
そうだ...みんなは......!?
「......あ」
ジリ...
ジリ...!
前方には、横転した車。
辺りには火の手が広がっている。
『...そいつを渡せ...!』
ギッ...
蜘蛛型の魔族が、リントに迫る...
「来るなッッ!!」
「それ以上近づいたら...こいつを殺すッ!!」
ビキイッ!!
「ぐあぁ!!」
『!!』
背中を車に預けているサヤカが、腕をリントの首に回し、念力で締め上げている...!
「ぐぅ..クソッ...!!」
ダイキは糸によって、体を道路に押さえつけられている。
「なん...だよ、コレ......」
この絶望的な状況が、現実のものとは思えない。
思いたくない......!
「...リン...ト...!」
どうすれば...どうすれば......いい?
ギッ...
「バカ!来んなッ!!」
ビキイィッ!
「ん...く...!!」
...思いつけ...何か...!
......思い出せ──
――
―
「アノーね、皆さん知ってると思いますけど...」
「魔素ってさ、あらゆる物質をすり抜けたり...魔力になって、魔法を発現させたり...」
「物理じゃ全く説明がつかないよ〜っていったじゃない?」
...さっきの授業の...続き...
「ただね、これ、知ってる人は知ってると思うんだけど...」
「魔素同士はね、ぶつかって反発したりするの〜!」
「あと魔力同士がぶつかって...大きな波が生まれたりね...」
...何を...言いたいんだ...?
この...緊急事態に...ッ!
「まあ...何が言いたいかって言うと...」
「魔素だけ...とか、魔力だけ...で考えた場合に、こいつらも部分的に物理的な振る舞いをみせることが、あるワケ〜!!」
...!?
「そう、まあ...皆さんが大学に行くなら...?」
「マーマー、皆さんがなるのは戦士ですよね?分かってますけど...」
.........
「大学では、魔道物理でやることになると思います」
「...イヤ正直、コイツらに物理とか名乗って欲しく無いですけどねッッ!!?」
――
―
...は?
......なに...?
『大人しくリントを渡せ...貴様らに危害は加えん...!』
「──信用できるかよッ!!!」
何が...物理だって...?
「─ッ大体!!」
「大体...なんで、こんな無能がッ!!そんなに欲しいっていうの!!?」
『貴様らには...関係ない...!』
「はぁ〜!?」
「意味わかんねぇから!!」
魔素...
魔力...
物理...
「─こんっな無能が!一体なんの為になるっていうの!!?」
ギリリ......!!
「かはっ...」
......!!!
『─魔族のためだッ!!』
『その魔族の子を!最も利用できるのが我々だっ!!』
「...は?」
「......魔族?」
見えた......!!
ギッ...
ギッ!
「─来るなっつってんだろがぁ!!!」
ビキィィ!!!
「が...っ!!」
「──リントッ!!!」
「...!!?」
俺は立ち上がって、大声で叫ぶ。
「─そいつの背中に!!」
「魔力ゼンブぶつけろッ!!!」
『!!?』
「...分かった!」
ダダダダッ!!
リントはすぐさまサヤカの腕を解き、全速力で走り出す。
『─チィッ!!』
魔族は孔を開き、迎撃の準備をする──
ボオオオオッ!!!
『......!!?』
突如吹き出した炎が、魔族の視界を遮る。
...ダイキだ!!
「リント!今だッ!!」
「...うん!!」
タンッ...!
リントは硬い路面を蹴り、奴の背中に飛びかかる。
『...待てっ!!』
魔族は慌てて後退りをするが...
もう遅い。
リントは右手に、全ての魔力を込め─
「─ハアッ!!」
ド
ガ
アンッ!!!
...と、奴の背中に、魔力全開のパンチをお見舞いした。
──バツンッ
すると、魔族は突如として脱力し......
ドサッ......と、糸の切れた人形のように倒れた。
「............」
「オイ...リント、お前...」
「やった...のか?」
ダイキが小さな声で尋ねる。
「...多分......」
先まで空を飛び回っていた巨体は、もはやピクリとも動かない。
「.........」
「...ハッ!!」
「...うおおお!!やったなッ!!!!!」
「──すっごいッ!!!」
「私たちでやったんだ!!!」
ダイキとサヤカは、2人して大喜びする。
「でも、なんでいきなりアイツ...」
サヤカは、先の不自然なやられ方に疑問を持つ。
「さあ......?」
「でも、さっき...何か、糸のようなものを切った感触が─」
............
「──!!!」
「ヒールッ!!」
...俺は薄らむ意識の中、最後にリントが駆け寄ってくる姿を目にする。
奴の背中から...薄い魔力の糸が、空に向かって伸びていたんだ。
そう伝えてやる気力も、何も無い...
......何に...せよ...
.........俺たちの...勝ちだっ...!
.........
......
...
気に入っていただけたら幸いです。
励みになりますので、評価、感想など、いっぱいほしいです!!




