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糸を切った少女

 脇目も振らず走り出し、僕は1人で帰路を進んでいた......


 ...

 ......


「あ、リント!」


「...!」

「サヤカ...」


 サヤカは僕を見つけると、素早く駆け寄ってきた。


「今、帰るとこ?」


「うん」


「そっ!じゃ〜いっしょに帰ろ〜」


「...うん!」

 サヤカは僕の返事を聞くより早く、先を歩き始めた─



「ねねっ、なんかあったの?」

 ─と思いきや、キュッと止まって、こちらを覗き込んでくる。



「なんか、って...?」


「だって〜さっきリントを見つけたときさ、なんかもうスッゴい顔してたよ!?」


「えぇっ...ホントお!?」

 どうやら傍目で見ても分かるくらい、僕の心情は露出していたみたい。



「そ~」

「なんか、よっぽどイヤなことないと、あん〜な事なんないでしょっ?」


「..それが──」


 ──僕はサヤカに、事のあらましを白状した。



「う〜ん」

 サヤカは僕の話を聞き終えると、何やら考え込んだ。



「─親心ねっ!」


「...親心!?」

 予想だにしない言葉が飛び出し、思わず山びこしてしまった。



「きっとヒールは、リントがもう大切で大切でしょ〜がないから!」

「それで酷いこと言って、戦士から遠ざけようとしてるのよ」


「そ、そうなのかな...?」

 確かに、僕もヒールのことは大切な親友だと思ってるけれど...



「そう!私にはよ〜く分かるからねっ」


「そう、なんだ...!」

「うん、ちょっと元気が出てきたよ」


「ヘヘッ、それはそれは...」



 確かに、ヒールのアレは、いささか急すぎたような気がする...!

 そして僕も、会話を途中で投げ出して逃げてしまった。


 もっとちゃんと話せば、分かりあうことも出来ただろうに...



「...まあ、リントは気にせず、今まで通り戦士を目指しなよ」


「うん!ありがとう!」


「お互い戦士になって、歴史にチビっと名を残してやろうっ♪」


「それはいいね!」

「...あっ」


「ん?」


「ごめん、いきなり話変えるけど...サヤカはどうして、戦士になりたいって...思ったの?」


「...あ〜」



 サヤカはもちろん、戦士の素養もあるが、学業の成績もすこぶる良い。


 あえて戦士を目指す必要は無いように思えるけど......


「私はね〜、何より『非日常』が好きなのっ!」


「...あー!始業式あたりで作った自己紹介カードでも、そんなこと書いてあったね」


「ワォ、覚えてるんだ」


「うん...『好きなもの 非日常』って、なんかインパクトがあってねー」



「そうっ...で、私はもう上層の色んなものを味わい尽くしたつもりだけど...」

「そんな私が、まだ非日常を味わえるところは?...って言ったら、それは中層でしょう!?」


「な、なるほどね...」

 つまり、単なる好奇心だけで、戦士への道を選んだってことか。

 す、すごいなあ...!!



「そう!中層にはまだ、資料でしか読んだこと無いようなロケーションが盛り沢山なの!」

「も〜楽しみでしょうがないっ」


「そっかー!」

「なんだかそう言われると、僕までワクワクしてきたよ」


「ヘヘッ」


 サヤカはものっすごくワクワクした顔で話すから...本当にそうなんだろう。




「──あと、親への反発」


「...うぇっ?」

 サヤカは顔を背けたと思ったら、いきなりそう言った。



「私の親はね〜、ウチの家業を継げってうるっさいの!!」

「しかも、私の大嫌いな超〜下らない家業ねっ」


「そ、そうなんだ...なんの家業なの?」

 あの好き嫌いしないサヤカに、大っ嫌いと言わせる家業...逆に気になる。



「ええっ!?ああ...ゴメン、それは言えない...」


「...そっか〜↓」


「...とにかく、そ〜んなやかましい親からの逃走でもあるわけっ!」


「あぁ...まあ確かに、中層までは追いかけてこれないだろうねっ」


「ッハハ!でしょう!?」



 言えない家業...?

 まあそんなの、世の中たくさんあるか。

 言いたくないのなら、そんなことは忘れて...


 僕たちはその後、とりとめもない話をし続けた。


 ――

 ―


「ん、それじゃね〜」


「うん、じゃあねっ」

 サヤカは大きな屋敷の前で立ち止まり、そして手を振って玄関まで歩いて行った。

 ずいぶんと裕福な家庭のようだ。



 実際、一体、なんの家業なんだろう。


 またそんなことを考えていると...玄関の方から、黒い服で揃えた大人たちが、僕の方に向かってきた。


「リントさん」


「よければ家までお送り致しますが...」


「ええっ!?別に...大丈夫ですよ─」


「あら、たまには気の利いたことするじゃない」

 扉の方から、サヤカがこちらを見やって言う。



「いいじゃんリント、送ってもらいなよ」


「...だそうです」


「どちらにしますか?」


「ええっと...じゃあ、お願いします」


「了解しました」

 僕がそう答えると、彼らはその返事をわかっていたかのように、手はず良く車を運んできた。




「では、こちらに」


「は、はいっ!」

 僕はその見るからな高級車に、恐る恐る乗り込んだ。



「...わっ、すごいフカフカ!」

 感触の良い革の座椅子からは予想だにしないほど、ずっぷりとお尻が沈み込んだ。



 僕がそうした感動を味わっている間に、エンジンがかかり、車は動きだした。

 また音がいい。腹に響く心地よい重低音が、ウットリと眠気を誘う。



 ...なんだかヒールとは、ケンカ別れみたいになっちゃったけど...

 明日になったら、また話してみよう!

 きっと分かり合えるはずさ!


 だって僕たちは、親友だから!!




 ギュッ


「...?」

 僕の隣りに座っていた男が、何やら硬いもので僕の両手を縛った。



「...んむっ!?」

 僕が困惑しているうちに、今度は同じもので、目と口を縛り付けた...!



「んんっ!クッ...」

 男は僕を強引に座席の下に沈めて、そのまま両足も縛り付ける。



「んん...む...」

 一体何を素材としたのか。魔力を込めても、一向に拘束を解けない。



 そうして暴れる僕をよそに、車は無機質に進み続ける。



「ん...!んんん...!!」


 助けて...!


 ヒール......!!

気に入っていただけたら幸いです。

よろしければ、評価、感想などいただけるとすっごく嬉しいです!!!

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