表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/39

思春期

 ...おかしい。

 どうにも最近、心が落ち着かないんだ。


 単純に、リントの夢を変えられぬまま、だらだらと夏休みも終わってしまいそう...だからか?

 いやそんな、夏に焦り出す受験生じゃあるまいし...


 いや、受験生だったわ。


 じゃあ、普通にそういうことなのか?

 イヤ別に...いい調子のハズだし...


 リントとサヤカは、ここんとこ良い雰囲気だし(主観)、このまま結婚すれば...


...なんだろうな。こんなことを考えていると、嫌に胸が疼くんだ。


一応、病院にでも行ってみるべきか──


 ──人に、他人(ひと)の将来を決める権利はあるのだろうか。


 シラキが空に投げかけた、そんな疑問が...ふと頭の中をよぎる。

 答えは、NOだ。そりゃ当たり前。他人は自分の操り人形などではないのだから。

 リントがなりたいと目指すものは、本来幼馴染として素直に応援するべきなのだろう...


 そうと分かってはいても、やはりリントの夢は素直に応援できない。



 リントが戦士になること。それがどんな結果を招くのか、俺には計り知れない。


 リントは世界を救う英雄になるかもしれない。

 だが、あるいは...


 ...ダメだ。


 なんなんだ...コレは?


 出所の知れない怒りが、何処からか湧いてくる──



「──なあ、リント」


「?」

 リントは、純粋な瞳で、俺を見つめる。



「やっぱさ、戦士やめなよ」


「...えぇ!?」

 リントは呆気にとられ、廊下に滑らせる足を止めた。



「どうしたのさ、今になって......」


「やっぱり危ないよ。俺もやめるから、お前もやめよう」


「いやいやいや...意味分かんないよ、急に...」


「だって危ねえじゃん。死ぬかもしれないんだぜ?」


「それは、ずっと前から分かってたことでしょ...?」

「そ、それを承知で...ここまできたんじゃないか」


「ッ急に怖くなったんだよ!しょうがないだろ!?」

「今にもチビりそうだ!!一体どうすりゃいい!?」



 ...???


 自分でも、何を言っているのか分からない...

 自分が何処へ向かっていくのかも...


「う、うん...」

「ちょっといきなりすぎて、ビックリしたけど...」 

 面食らったリントは、面持ちを正す。



「なんか、前も言ったような気がするけど...」

「怖いなら、ヒールはやめていいんだよ...?」


「...!」


「そりゃあ怖いのは当たり前だし、僕だってそうだよ?」


「じゃあ...!」


「それでも、奪われた故郷を取り返すのが、僕の使命だと思うんだ!」

「きっとできる、やれるって...!」


「...そうか」



 ここいらで引き下がるのが、いつもの俺だ。

 だが...なんだ?今日の俺は、いつもと違うみてえだ......


「でもさ、リント」


「ん?」



 ──行くところまで、行けちまう気がする。



「お前、才能ないよ」


「...なっ!」


「わかるだろ?お前、この歳になってまだ魔法も使えないんだぜ?」

「それで戦士になるって、馬鹿みたいじゃない?」



 ビックリした。

 俺がリントに言ったことも無いような言葉が、気味が悪いほど自然に出てきたのだ。



「うう...分かってる...けど、そんな僕でも何か、役に立つことがあるんじゃないかって...」


「ええ!?ないない!」

 既に俺は、俺自身の口を止められなくなっていた。



 そして俺はとうとう、俺が言ってはならないことを口にしてしまった──


「──だってお前、『無能』じゃん」



「...ッ!!」

「な、なんでヒールまで...そんなこと......」



 わからん...俺はどうしちまったんだ──



「──お前みたいな無能が!戦士になったって!」

「なんでもないようなトコで無駄死にするだけだ!」

「バカみたいに理想ばっか高くしやがって!!」

「お前は大人しく、()上層(ここ)で暮らすのが身の丈に合ってる!!」

「それとも何だ!?無理やり『島』に放り込まれたいか!?」

「......!」



 信じられないほど流暢に、罵倒のセリフが出てきて...ついに息を切らしてしまった。


 何だよ、これ...?俺らしく、ない...


 リントは......?

「...あっ」


「うっ...うぅ......」


「リント...」


「どうして...?」


「いや...それが、俺も...」



 俺も...わけわかんねえんだよ......


 タッタッタッ


「...!」


 リントは勢いよく踵を返すと、廊下を駆け、そのまま階段を駆け下りていった。

 しかし...俺にはその背中を追いかける権利が、まるでないように思えた。


「バカか...俺は......」

 俺はトボトボと、放課後の廊下を歩き出した。



 ──その日の夜、俺はリントの家まで、一度訪ねに行ったが...


 そこにリントはいなかった。

気に入っていただけたら幸いです。

よろしければ、評価、感想などいっぱいもらえたら嬉しいです!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ