思春期
...おかしい。
どうにも最近、心が落ち着かないんだ。
単純に、リントの夢を変えられぬまま、だらだらと夏休みも終わってしまいそう...だからか?
いやそんな、夏に焦り出す受験生じゃあるまいし...
いや、受験生だったわ。
じゃあ、普通にそういうことなのか?
イヤ別に...いい調子のハズだし...
リントとサヤカは、ここんとこ良い雰囲気だし(主観)、このまま結婚すれば...
...なんだろうな。こんなことを考えていると、嫌に胸が疼くんだ。
一応、病院にでも行ってみるべきか──
──人に、他人の将来を決める権利はあるのだろうか。
シラキが空に投げかけた、そんな疑問が...ふと頭の中をよぎる。
答えは、NOだ。そりゃ当たり前。他人は自分の操り人形などではないのだから。
リントがなりたいと目指すものは、本来幼馴染として素直に応援するべきなのだろう...
そうと分かってはいても、やはりリントの夢は素直に応援できない。
リントが戦士になること。それがどんな結果を招くのか、俺には計り知れない。
リントは世界を救う英雄になるかもしれない。
だが、あるいは...
...ダメだ。
なんなんだ...コレは?
出所の知れない怒りが、何処からか湧いてくる──
「──なあ、リント」
「?」
リントは、純粋な瞳で、俺を見つめる。
「やっぱさ、戦士やめなよ」
「...えぇ!?」
リントは呆気にとられ、廊下に滑らせる足を止めた。
「どうしたのさ、今になって......」
「やっぱり危ないよ。俺もやめるから、お前もやめよう」
「いやいやいや...意味分かんないよ、急に...」
「だって危ねえじゃん。死ぬかもしれないんだぜ?」
「それは、ずっと前から分かってたことでしょ...?」
「そ、それを承知で...ここまできたんじゃないか」
「ッ急に怖くなったんだよ!しょうがないだろ!?」
「今にもチビりそうだ!!一体どうすりゃいい!?」
...???
自分でも、何を言っているのか分からない...
自分が何処へ向かっていくのかも...
「う、うん...」
「ちょっといきなりすぎて、ビックリしたけど...」
面食らったリントは、面持ちを正す。
「なんか、前も言ったような気がするけど...」
「怖いなら、ヒールはやめていいんだよ...?」
「...!」
「そりゃあ怖いのは当たり前だし、僕だってそうだよ?」
「じゃあ...!」
「それでも、奪われた故郷を取り返すのが、僕の使命だと思うんだ!」
「きっとできる、やれるって...!」
「...そうか」
ここいらで引き下がるのが、いつもの俺だ。
だが...なんだ?今日の俺は、いつもと違うみてえだ......
「でもさ、リント」
「ん?」
──行くところまで、行けちまう気がする。
「お前、才能ないよ」
「...なっ!」
「わかるだろ?お前、この歳になってまだ魔法も使えないんだぜ?」
「それで戦士になるって、馬鹿みたいじゃない?」
ビックリした。
俺がリントに言ったことも無いような言葉が、気味が悪いほど自然に出てきたのだ。
「うう...分かってる...けど、そんな僕でも何か、役に立つことがあるんじゃないかって...」
「ええ!?ないない!」
既に俺は、俺自身の口を止められなくなっていた。
そして俺はとうとう、俺が言ってはならないことを口にしてしまった──
「──だってお前、『無能』じゃん」
「...ッ!!」
「な、なんでヒールまで...そんなこと......」
わからん...俺はどうしちまったんだ──
「──お前みたいな無能が!戦士になったって!」
「なんでもないようなトコで無駄死にするだけだ!」
「バカみたいに理想ばっか高くしやがって!!」
「お前は大人しく、俺と上層で暮らすのが身の丈に合ってる!!」
「それとも何だ!?無理やり『島』に放り込まれたいか!?」
「......!」
信じられないほど流暢に、罵倒のセリフが出てきて...ついに息を切らしてしまった。
何だよ、これ...?俺らしく、ない...
リントは......?
「...あっ」
「うっ...うぅ......」
「リント...」
「どうして...?」
「いや...それが、俺も...」
俺も...わけわかんねえんだよ......
タッタッタッ
「...!」
リントは勢いよく踵を返すと、廊下を駆け、そのまま階段を駆け下りていった。
しかし...俺にはその背中を追いかける権利が、まるでないように思えた。
「バカか...俺は......」
俺はトボトボと、放課後の廊下を歩き出した。
──その日の夜、俺はリントの家まで、一度訪ねに行ったが...
そこにリントはいなかった。
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