148話 最低な気分
玉枝は一久に言う。
「お邪魔してもよろしいですか。」「玉枝さん、当然ですよ。今更、遠慮しないでください。」
玉枝は、九郎とあやめのデートを最後まで邪魔したくなかった。九郎が玉枝に言う。
「玉枝さんらしくないですよ。」「九郎ちゃんは、あやめちゃんと話していなさい。」
あやめが九郎と腕を組む。そして、彼はあやめに引きずられるように家の中に入る。
あやめは、自分の部屋に九郎を連れていく。彼女は九郎に少し怒ったような感じで言う。
「九郎、今日は2人のデートでしょ。どうして、玉枝さんに話しかけるの。」「いけなかったかな。」
「少しもやっとするわね。今日は九郎に私だけを見ていて欲しかったわ。」「今日は君のことだけを考えていたよ。」
「嘘つき、お昼に玉枝さんのこと話したでしょ。」「あれは思い出しただけだよ。」
「私は九郎だけだよ。」
あやめは九郎に抱き着く。九郎はあやめを抱きしめる。しかし、彼女にかける言葉が無い。
今、あやめ一筋だとは言えない。あやめが請求するように言う。
「どうして何も言ってくれないの。」
あやめは九郎にキスをする。彼は欲情に負けて彼女を押し倒す。あやめは九郎に抱かれながら言う。
「私、玉枝さんに負けないよ。」
九郎は、大好きな2人を裏切ったような、最低の気分になる。彼は彼女の部屋を出て、どん底の気分を味わっている。
居間に行くと九郎を見た一久が心配そうに言う。
「九郎君、顔色が悪いよ。大丈夫。」「大丈夫です。疲れが出たかな。」
あやめも居間に来る。彼女は目の周りが赤い。一久から陽気な気配が消える。しかし、彼は何も言わない。
夕食が始まるが社本家にしては珍しく静かな夕食となる。一久は黙って玉枝の酌で酒を飲む。
彼はある程度飲むと自分の部屋に行ってしまう。
九郎も食事を済ませると玉枝と帰る。彼はアパートに帰宅すると風呂に入る。玉枝も体にバスタオルを巻いて入って来る。
彼女は九郎の体を丁寧に洗いながら言う。
「九郎ちゃん、あやめちゃんの部屋で何かあったの。」「あやめを抱いた。けど、玉枝さんのことを考えていたんだ。」
「何言っているの。私、怨霊なのよ。」「分かっているけど、2人とも同じ位好きなんだ。」
「あやめちゃんを選びなさい。」「そんなことできないよ。こんな気落ちであやめを抱いたんだ。最低だろ。」
玉枝にはこうなる予感はあった。しかし、九郎にはあやめがいるから大丈夫だと信じ込んでいた。




