魔王の圧迫面接:その2
「その者は誰じゃ」
利家君、よろしく頼みます。
イージーパス、よろ。
「はっ、この者が某に「ここにいては義元を取り逃がす」と教え、あの現場に案内し、共同して首級を上げ申した」
ひぇええ。
それ、キラーパスじゃん。
悪い意味での!
俺がすべて悪いことになる。
利家~、何こっち見て「これでいいだろ」的なお気楽な顔してんだよ。
勝手働きの罪を、一身に背負っちまった!
やっぱり、こいつと一緒にいるのは危険かも?
「申せ!」
あ~あ。
元のしかめっ面に戻ったよ。
もっと悪い。
大魔王の顔だ。
申せ、という事は、何を言えばいいのか?
圧迫面接どころか、神経衰弱で信長が示したカードと同じ奴を、一発で当てよとかいう無茶な質問。
これは普通の無難な自己紹介では通らないな。
一応、考えてきたものはあるが、もっとインパクト持たせねば。
「はっ。某、美濃明智の住人。
美濃土岐氏の末流。
明智光綱が一子。
明智十兵衛光秀でござる。
(じさまを父としている詐欺師。嘘つき過ぎて後には引けない奴です)
先の長良川の戦いにて、斎藤道三さまの陣に参じた父。
道三さまと枕を並べて討ち死に。
幼き某は途方に暮れるも、各地を放浪しつつ『縫い針』などの行商を行い、大名家の情報を集めておりました。
その際、これから武威を張るであろう大名家として、一番の有力候補が織田家と見ました。
故に、仕官の機を伺っておりました」
一気に言ったけど、ここまでは普通だね。
この後に来るであろう質問を誘導したことが重要。
「なぜじゃ!」
きた~♪
この「何故」は分かる~
「はっ。信長さまに置かれては、今までの大名支配の仕組みを変えようとされていると拝察。
例えば、今までの農本主義を改め、重商主義に。
これにて銭収入を確保。
軍制を常備軍の設立。
武具を最新式のものへと置き換え、これを貸与。
特にこれから主流となる種子島を大量に装備されておりまする」
これで重商主義とか農本主義とはなんじゃ、と来るに違いない!
「貴様は何処の間者だ!」
えええええ?
そう来るんかいっ!
仕方ない。こうなりゃ破れかぶれ。開き直りの術。
「滅相もございませぬ。
それがし。織田家の内政、軍制、その他諸々。
どのように改革すれば、信長さまのお眼鏡にかなうか、存じておりまする。
この知識と手腕。
ここで拾われるか。
捨てられるか。
これからの織田家にとり、どちらがよろしいかご判断を」
ここまではなんとか筋は通った。
あとは最後の締めだ。
俺は片膝を突き、深々と頭を下げ、わざと背中が見えるようにした。
「それはなんじゃ!?」
かかった!
背中に鉄砲担いでここに入れるよう、強引に押し通したのが最大の勝因だ!
「はっ。
それがしの愛用する、種子島。
鉄砲と呼んでおります。
多分、普通の種子島の10倍は役に立つかと」
「見せて見よ」
小姓にライフル銃を渡す。
よく見ろよ。
銃床つき。
照星・照門つき。
軽量化。
青銅製カルカ。
絡繰りを改良、引き金は軽く。
ガードと安全装置までつけてある。
信長よ。
これを使ってみたくはないか。
「撃って見せよ!」
興味津々の顔で、こちらを見返す。
よし。
ここがフィニッシュだ。
城門の上に鍋が下げられた。
距離、約40間(80m)。
この近さなら軽いな。
だが普通なら30間も離れれば相当な熟達者か、まぐれでもない限り当たらない。
火薬を詰め、火口を吹き、発射準備。
いつもの尻を突いた狙撃姿勢でなくても行ける。
立射。
ぐぁん!
城内に響き渡る、銃声。
俺の就職祝いの轟音だ。
「な、鍋の中央に大穴!
その後ろの柱に深々と弾が!」
鍋の様子を伺っていた、足軽が叫んだ。
最後の決めは、何事もなかったような顔で振り向き、膝をつく。
「なにとぞ、仕官の儀。賢明なるご下知を」
地面に額がくっつきそうになるくらい頭を下げ、神妙な姿で信長の声を待った。
「禄200貫文(400石)で仕えよ。
仕事は……この鉄砲と言うたか。
これを量産せよ。
厳命じゃ」
……
ん?
このライフル銃、冬木スペシャル。
1年に1丁しか生産できないが……量産?
これ。
今言ったらマズイ?
……ときは今 汗がしたたる 六月かな
次回は、遂に光秀。
仕事始めです。
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(ちなみに次の回、さらに次の回からどんどん腹筋崩壊させていきます!)
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11/25現在、日間総合ランキング55~71位にいます。
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