表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
79/105

79.敵?


「サリエル……。それで、お前……いつまでそのままでいるつもりだ」


「ぐぎぎぎ……抜けない」


 抑揚のない声で、サリエルは言う。

 窓から上半身だけ入った体勢のまま、今までずっとパタパタとしていた。


「腰が、通らないんだろ? こう、骨盤を斜めにするとかはどうだ?」


「斜め? たしかに……」


 もぞもぞとサリエルは動く。わずかに回転をさせるように腰を捻った。

 少しだけ、こちらに入ってこれた気がしないでもない。


「二次元的な感じだけじゃなくて、三次元的にもだ。ルートの二より、ルートの三になる感じで」


「こう?」


 サリエルはくねくねと動いていた。

 今度こそ、そのまま前に進んでこれている。


「あぁ、その調子――」


「ぐぎゃ……」


 窓から侵入したサリエルは、あっけなく床に落ち、顔面から地面にぶつかっていた。

 逆さになって直立している。着ていた服は、ワンピースタイプのもので、重力に従い裾からひっくり返って丸見えだった。サリエルの下着は白い生地で、布面積が少なく、ガブリエルくらいに攻めたものだった。


「うわ……惨めね……」


 サマエルの、サリエルの姿を見て発せられた容赦のない一言だった。

 

 数秒のち、サリエルは立ち上がると、服を整えて、すんとした表情で、こちらに歩み寄ってくる。

 まるで何事もなかったような顔だが、鼻がわずかに赤い。


「サマエル。あなたがこの人を愛するというのなら、『円環型リアクター』を手にすることに、サリィは反対しない」


「……っ」


「ただ、愛すること。情欲を向けることでもなく、恋することでもなく、愛すること。それが、資格。だったら、その鍵をサリィがとってきてもいい」


 サリエルの言っていることは、俺には理解できなかった。

 いや、違う。俺の頭の中には、理解を拒む制限のような何かがある。そんな感覚だった。


「私、愛してるわ……っ。ねっ」


 サマエルは、上目遣いにこちらを見た。

 さっきは体の関係だけだと言っていたが、それを簡単に覆していた。それほどまでにサマエルは『円環型リアクター』を欲している。


「あ、あぁ」


「ふふん」


 機嫌よく、サマエルは俺の腕に抱きついてくる。

 彼女は、『円環型リアクター』を手に入れるためならば、どんな手段も厭わないのだろう。


 じっとサリエルはサマエルの顔を見つめる。見つめて、動かずしばらくが経つ。

 ゆっくりと、サリエルは口を開いた。


「そう……なら、サリィはサマエルを認める」


「じゃ、じゃあ!!」


 期待をするような目でサマエルはサリエルを見つめる。

 それを受けて、サリエルはおもむろに服を脱ぎだす。なんの前触れもなかった。


「いや、サリエル……なにしてる……」


「疲れた。今日は寝る」


 台の上に、サリエルは服を放り投げる。

 大胆な下着も脱いで、そのままに全裸になる。


「あ、私のベッド!?」


「ぽふ……」


 サリエルは、サマエルのベッドの上に倒れ込んだ。本当に、寝てしまうつもりのように見える。


「サリエル……お前……」


「サリィ、今日頑張った。ラミエルも、ウリエルも、チェイスして倒したし、一番乗りした。偉い、褒めて?」


「あ、あぁ、すごいな……」


 ラミエルたちが遅かったのは、サリエルのせいだとわかる。

 なんというか、足の引っ張り合いだとか、そういう言葉が頭に浮かんだ。

 

「えへへ……。そう、抱きたければ抱いてもいい。サリィのときはすぐ終わっても構わない」


「いや、遠慮しておく……」


「そう。そういう下着を着てきたから、そういうことしてもいいのに」


「いや、下着、さっき脱いだだろ」


「そうだった……」


 独特な会話のリズムだ。相変わらず、サリエルは表情の変化に欠けている。

 そのままに、ベッドにうつ伏せになって、枕に顔をうずめながら、脱力していた。


「私のベッド……」


 サマエルは悲しげに呟いている。


 それにしても、さっきまで、俺とサマエルが男女の情事に耽っていたベッドの上だ。よくサリエルは、そんなところに居座れるなと俺は思う。


「サリエル……そこは……」


「ぐう……ぐう……」


「…………」


 寝息を立てて眠っていた。


「……。……行くわよ」


「どこにだ?」


「ラミエルの部屋。あそこなら、今は空いているわ」


 俺の部屋にはレネがいる。空いている部屋といったら、たしかにそこくらいか。

 突然あらわれたサリエルと一緒に寝ることは、心理的に難しいだろう。


「そうだな……」


 ラミエルには悪いとも思う。だが、サマエルの性格から、思いついたことをやめたりはしない。


「どうしたの? 行かないの?」


 もう、ドアを開けた向こうにサマエルはいた。

 俺は、ベッドの上でぐっすりと眠るサリエルを見つめていた。どうしてか、胸がざわつく。嫌な予感がする。


「あぁ、今いく」


 サマエルを追って、俺は音を立てないように、そっと部屋のドアを閉めた。


 いいねの合計が100を超えました。みなさん本当にありがとうございます。

 これからも頑張って更新していきます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on 一気読みするなら ハーメルンの縦書きPDF がおすすめです。ハーメルンでもR15ですが、小説家になろうより制限が少しゆる目なので、描写に若干の差異がありますが、ご容赦ください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ